「一昨日の夕飯に何を食べましたか?」
いきなりこんな質問をされたら、ドキッとします。
万年一人暮らしの筆者は食生活がお粗末なので、晩ごはんに何を食べたかなんて食べ終わった瞬間に忘れています。
街なかを歩いていてすれ違う人の顔を覚えていないのと同じ感覚です。
一昨日の夕飯なんて覚えていなくても何の支障もありませんが、大事な情報はそういうわけにはいきません。
しかし、大事だと分かっていながら、忘れてしまう。
その原因の一つは年齢です。
加齢による記憶力の減退はある程度は避けられません。
さらに、加齢だけでなく、意外なモノが我々の記憶力を悪くしている可能性もあるのです。
1 寒いと記憶力が鈍る(?)

日本において受験シーズンといえば、年末年始でしょう。
高校受験や大学受験を控えた学生たちが、寒い中、塾や予備校に通って最後の追い込みに励む時期です。
しかし、寒い時期というのは、記憶にとっては厳しい面があるかもしれません。
イギリスのブラッドフォード大学で行われた研究によると、日照時間の短い冬は、「短期記憶」のパフォーマンスが低下する可能性があるとのこと。
例えば、冬眠をする哺乳動物は、冬にはなるべくエネルギーを消耗しないように、可能な限り体の機能をシャットダウンします。
物を記憶するプロセスは、大量のエネルギーを消費するので、シャットダウンの優先順位も高いのです。
一言でいえば、寒い時期は暗記などにエネルギーを消耗している場合ではない、ということでしょう。
これが、寒い時期に短期記憶の能力が低下する理屈です。
ただし、上記の研究はラットに対して行われたものなので、その結果がそのまま人間にも当てはまるとは限りません。
2 「ながら食い」

ビデオを観ながらポテチをバリバリ。
雑誌を読みながらクッキーをモシャモシャ。
こういう時間を「至福のひととき」と考えている人は注意が必要かもしれません。
アメリカの製薬会社で神経科学コンサルタントを務めるラモン・ベラスケス博士によれば、食べることに意識を向けずに食べ物を次々と口に運ぶ「ながら食い」は、我々の記憶力にとって意外なほど大きな悪影響があるのだとか。
その原因の一つは、食べるという行為に意識が集中していないため、「ながら食い」のお供である高カロリー低栄養価のジャンクフードを必要以上に摂取してしまうことです。
人間の脳は、体重の2%しか占めていないにも関わらず、消費するエネルギーは体全体の20%とされています。
このため、どういう栄養素を取り込むかは、脳や記憶力にとって極めて重要。
毎日のように「ながら食い」をすることは、脳というエンジンに粗悪なガソリンを注ぐようなものなのです。
3 日常的な夜勤生活

カナダにあるヨーク大学で行われた研究によると、若いうちから日常的に夜勤生活を続けることは、年を取ってから記憶能力が損なわれる確率が、最大で79%も上がるのだそうです。
その原因として見られているのが、体内時計に逆らった生活。
朝に起床し、日中働いて、夜に眠りにつくというのが人間にとって最も自然なリズムであるというのは、どれだけ時代が変わっても、同じであるということです。
そのリズムから外れた生活を長く続けることは、認知機能への悪影響があるだけでなく、心臓疾患のリスクを高めるという報告もあります。
夜勤生活が記憶力や健康に悪影響があるといっても、現在そういう生活をしている人は、簡単には生活リズムを変えられないのが難しいところです。
4 超ハードな筋トレ生活

体を動かすのが健康に良いというのは常識です。
運動不足にならないよう、定期的にジム通いをしている人も多いと思います。
無理のない範囲で適度な運動をすることは何の問題も無いのですが、しかし、気合を入れすぎて筋トレしまくることには、意外なデメリットがあるのです。
アメリカのダートマス大学で行われた研究によれば、普段からハードなトレーニングを行う人は、適度なトレーニングを行う人に比べ、「エピソード記憶(自分が経験した出来事の記憶)」を思い出す能力が弱いということが分かりました。
その一方で、「空間記憶」の能力は高い傾向にあり、どこに何があるか、といった情報を記憶するのが得意なのです。
ちなみに、「連想記憶(顔を見て名前を思い出す際などの記憶)」については、両者に大きな違いは見られません。
誤解のないよう補足しておきますと、基本的には、ハードだろうが適度だろうが、全く運動をしないよりは、運動をする方が良いとされています。
よって、エピソード記憶に関しても、運動をしない人よりは、ハードなトレーニングを行う人の方がパフォーマンスが良いのです。
5 欲求を抑えつつ試験勉強

受験生が試験勉強をする際の「大敵」といえば、やはりスマホではないでしょうか。
近くにスマホがあると、ついつい手にとっていじってしまう。
気がつけばインスタグラムやTikTokを見ていて、あっという間に時間が過ぎてしまう。
「やべぇ、ぜんっぜん勉強してねぇ……」
こういう勉強のやり方は、時間を無駄にしているだけでなく、暗記の効率も下げているかもしれません。
アメリカのデューク大学で行われた研究によると、欲求を抑えながら記憶したことは、思い出しにくくなるのだとか。
例えば、お菓子を食べたいとか、スマホを触りたいとか、そういった欲求を必死で堪えつつ何かを暗記しても、正確に思い出せる確率が下がるというわけです。
その理由については、あくまで推測ですが、欲求を抑えることが、記憶に関連する脳の部位の活動も抑えてしまっている可能性が指摘されています。
やりたいことを我慢しながらの暗記作業は非効率かもしれません。
ではどうすればよいのか。
私見になりますが、スマホであれば、そもそも自分の目に触れない場所に置いておくべきでしょう。
スマホの存在を意識できないような状態で勉強すれば、集中力も上がって一石二鳥です。
6 空気の汚れた場所で生活

空気が汚れた場所に住むことを積極的に好む人はまずいないでしょう。
そういうエリアに住んでいる人は、たいてい仕方なくそこで生活しているわけです。
汚染された空気が健康に悪いのは明らかですが、記憶にも関係があるようです。
イギリスのウォーリック大学で行われた研究によれば、空気が特に汚染された地域に住む人は、クリーンな地域に住む人に比べ、記憶力に関して脳年齢が10歳も老けているのだとか。
この場合の「汚染された」とは、具体的には二酸化窒素やPM10(黄砂などの粒子状物質)の濃度が高い状態を指します。
よって、単純に都会に住んでいるというだけでこの条件に当てはまるわけではありません。
ただ、住んでいる場所の空気が汚れていればいるほど、記憶力が悪化するリスクは高まると考えてよさそうです。
7 ぽっこりお腹

ぽっこりお腹の体型は、いかにも不健康なイメージがつきまといますが、それは記憶力にも関係しています。
イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームによると、肥満体型の人は、記憶力を含めた脳機能が減退していくのが早い傾向が見られます。
そして興味深いことに、これには男女差があるのです。
女性では65歳から下がり始めるのに対し、男性は55歳から。
つまり、同じ肥満体型の人でも、男性の方が女性より10年も早いのです。
ぽっこりお腹による弊害は、男性の方が深刻だといえるかもしれません。
一般的に、過度の肥満は心臓への負担を増大させ、それにより脳への血流が阻害されることで、認知機能の低下を招くと考えられています。
さらに、肥満と脳の関係は中年男性に限った話ではありません。
アメリカのイリノイ大学での研究によれば、9~10歳の子供で、肥満体型の子より、適正な体重の子の方が、記憶に関する脳の部位が大きいことが分かっています。
8 交通量の多い場所にある学校

スペインにあるバルセロナ国際保健研究所で行われた研究によると、交通量の多い場所にある小学校に通う子供は、認知機能の発達が遅い傾向が見られるそうです。
これはつまり、車の騒音が、子供の記憶力発達を阻害している可能性があるということ。
周りがうるさいと勉強に集中しづらくなるのは当然として、記憶力の発達にも影響があるのは厄介です。
不思議なことに、騒音の原因が、子供の声などの騒々しさである場合は、このような悪影響は見られないのだとか。
また、教室内が騒がしいという状況は、集中力を維持するのを困難にすることはあっても、記憶力には影響がないそうです。
ただし、これらの研究結果については、原因がまだはっきりしていない部分が多いとされています。
9 ダイエット系ドリンク

炭酸飲料は大好きだけれど、カロリーが気になる……。
そんな人のために存在するのが、ゼロカロリーのドリンク。
どれだけ飲んでもカロリーゼロ。
なのにしっかり甘い。
その秘密は、言わずと知れた人工甘味料です。
アメリカの南カルフォルニア大学で行われた研究では、人工甘味料を摂取したラットは、長期にわたって記憶力が悪化することが分かっています。
ここでいう人工甘味料とは、サッカリンやステビア、アセスルファムKなどを指しており、特に、アセスルファムKはダイエット系コーラに含まれています。
もちろん、上記の研究はあくまでラットが対象なので、これがそのまま人間にもあてはまるというわけではありません。
しかし、研究を行ったスコット・カノースキー教授の話では、若いうちから日常的に人工甘味料を摂取することは、後に長期的な影響をもたらす可能性があるとのこと。
人工甘味料が持つマイナス要素はこれだけでなく、甘みの感じ方を鈍くさせるとも言われています。
その結果、少々の甘みでは満足できず、糖分の摂取量が増えてしまうというわけ。
ダイエット・コーラを飲んだからといって、直ちに何らかの悪影響をもたらすことは無いでしょうが、何事もほどほどにしておくのが良さそうです。
10 出産を機に専業主婦へ

出産を機に仕事を辞めて、それ以降は家庭のことに専念している女性にとって心配なのは、一般的には収入やキャリアの問題でしょう。
しかし、アメリカのカリフォルニア大学での研究によれば、さらにもう一つ留意すべき点があります。
出産後、賃金をもらう仕事に一度も就くことがなかった女性は、そうでない女性に比べ、高齢になってから記憶力が減退する早さが50%も上がることが分かりました。
この結論は、育児のためにしばらく仕事を離れ、その後復帰した女性には当てはまりません。
あくまで、出産後、完全に仕事から遠ざかった女性が対象です。
また、「仕事」にはボランティア活動などは含まれておらず、賃金をもらう仕事に就いたか否かが問題となっています。
アルツハイマー型認知症の割合は女性の方が多いとされており、その原因には「女性ホルモンの減少」や「平均寿命の長さ」などが挙げられていますが、上記の結論に従えば、仕事から離れてしまうライフスタイルもその一因となる可能性がありそうです。
余談 暗記効率が最悪の受験生とは

交通量が半端なく、空気が汚れた地域に住んでおり、昼夜逆転の生活で、スマホを見ながらダイエットコーラを片手にスナック菓子を食べるのが何よりの楽しみで、ハードな筋トレを日課にしている受験生。
こういう受験生は、ひょっとすると、かなり暗記効率の悪い勉強をしているかもしれません。
もっとも、こんな滅茶苦茶な条件にぴったり当てはまる受験生がいるのかという気もしますが……。
それはさておき、我々の記憶力を悪くしていくモノは、日常生活にけっこう転がっています。
意外性が全く無いので今回の記事には含めませんでしたが、例えばタバコも記憶力に悪影響があります。
記憶力を悪化させるリスクをできるだけ回避することで、認知症のリスクも減らせるかもしれません。


















