自分の脳みそが何物かに食われ続ける。
こんなこと、普通の人なら想像もしたくないでしょう。
というか、普通はそんなことありえません。
しかし、それを実際に体験してしまった男性が、中国の広州市にいます。
〈originally posted on November 11,2019〉
1 脳を食っていた物の正体
今から15年前、当時21歳だったウォンという男性は、カタツムリを油で揚げたもの(エスカルゴではないが、中国ではポピュラーな料理)をよく食べるようになりました。
彼の職場の上司がこの料理に目が無く、その影響を受けてウォンさんも毎日の夕食に食べていたのです。
それから約1年後、彼は頻繁に嘔吐を繰り返すようになり、それに伴って全身の筋力が弱体化。
それに加え、手足にしびれを感じる日々が続きました。
症状は酷くなる一方で、彼はついに仕事を辞めざるをえない状況に。
様々な医師に診てもらった結果、とりあえずウォンさんの症状は、悪性の腫瘍が原因であると診断され、治療を受けました。
ところが、その後も彼の症状は改善せず、時々意識を失うまでに悪化。
それからの10年間、彼とその家族は、根本的な治療のためにあらゆる手段を尽くしました。
そして昨年、彼を苦しめている「犯人」の特定に遂に成功したのです。
それは、彼の脳に寄生したサナダムシでした。
体長は約12センチ。
医師たちは、手術によってサナダムシを取り除くのは危険が大きすぎるとして、手術によらない治療を提案。
彼自身もその提案に従っていたものの、今年の9月に症状がさらに悪化したため、リスクを承知で手術を決意しました。
2時間以上に及ぶオペの末、サナダムシは無事に摘出されたのです。
彼の症状は、具体的には「マンソン孤虫症」の一種ではないかと考えられています。
原因はおそらく、調理が不十分なカタツムリなどを彼が食べた可能性があること。
それにしても、15年間も宿主の脳を食い続けていたサナダムシの生命力には驚かされます。
2 脳細胞を食うアメーバ
カタツムリを食べるようなことを習慣にしていなくても、脳を食われる危険は日常に転がっています。
例えば、米国ワシントン州シアトルに住んでいた69歳の女性の例をご紹介しましょう。
2018年、その女性は、体の異変を訴えて病院に運ばれたのですが、医師が彼女の脳を検査したところ、アメーバによって脳細胞が食われていたのです。
問題は、なぜ彼女の脳にそんな危険なアメーバが侵入したのかという点。
これについては、彼女が水道水を使って「鼻うがい」をしていたのが原因ではないかと見られています。
その女性は、鼻うがいのために、専用のプラスチック製器具を普段から愛用していたのですが、鼻うがい用の洗浄液ではなく、普通の水道水を使用していました。
この習慣が一年以上続いた結果、彼女の脳にアメーバが感染した可能性があるのです。
このような危険なアメーバは、通常は堆積した土砂の中でバクテリアを餌にして繁殖します。
暖かくて湿度の高い環境で繁殖力が上がるので、夏場の湖や川の中にこのアメーバが見られることが比較的多いのだとか。
アメリカではテキサス州やフロリダ州など、南部で特にこのアメーバの被害者が発生しています。
今年の9月には、テキサス州フォートワースに住む10歳の女の子が、川で遊んでいる最中に鼻から水を吸ってしまい、そのときに「ネグレリア・ファウレリ」というアメーバが脳に侵入。
人間の脳は暖かくて湿っているので、アメーバが繁殖するには最適ですが、アメーバの餌となるバクテリアが存在しません。
そこで、アメーバは脳細胞を餌にして生きながらえるのです。
単細胞生物であるアメーバが、時には人間を死に至らしめることがあるのは、何とも恐ろしい話です。