自分の怒りを予防・制御するための「アンガーマネジメント」はもともとアメリカで誕生したものですが、近年は日本でも関心を抱く人が加速度的に増加しています。
これには、あおり運転の事件が後をたたないことも一因となっているのかも知れません。
もちろん、運転中以外にも、思わず怒りを爆発させたくなる瞬間は、普段の生活の中でよくあります。
怒りの感情とどう付き合うかは、その重要性がますます高くなってきており、選択を誤ると取り返しのつかない事態になりかねません。
〈originally posted on October 31,2019〉
1 高齢になるほど怒りは危険
年を取ると、体力の衰えから、若いころは難なくできたことが出来なくなり、行動範囲も狭くなりがちです。
それによってイライラが募り、ちょっとしたきっかけで怒りを爆発させてしまうこともあるでしょう。
その一方で高齢者は、配偶者や家族、親しい友人などに先立たれて辛い経験をする機会が増えます。
強い怒りと深い悲しみ。
健康にとって害悪が大きいのはどちらなのか。
カナダのコンコルディア大学の研究によると、高齢になってからの怒りの感情は、悲しさで落ち込むよりも、健康に対して悪影響があります。
深い悲しみを味わっただけで慢性的な病にかかることはないですが、怒りの感情の場合はそれがあり得るのだとか。
同大学のカーステン・ロッシュ博士によれば、80歳以上の人が、日常的に怒りを感じる生活を送っていると、健康上の悪影響が見られるそうです。
ただし、高齢者であっても80歳未満であれば、怒りの感情は様々な活動へのモチベーションにつながることも多いので、必ずしも悪いものではないとのこと。
80歳というのは一応の目安ですが、色々なことをするのが体力的に困難になってくる年齢と捉えた方が良いようです。
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2 女性は怒りを溜め込まないほうが良い
アメリカにあるピッツバーグ大学での研究によれば、人は怒りを溜め込むと、頸動脈の血小板が増加することにより血栓が出来やすくなり、このことは、最悪の場合に脳卒中などにつながります。
同大学のカレン・ジャクボウスキー教授の話では、怒りを発散しないことによるストレスが、脳の扁桃体を活発化させ、それが「アテローム性動脈硬化」を引き起こし、心臓や脳への血流が制限されてしまうのです。
そしてこのリスクにさらされる割合は、統計的に男性よりも女性の方が高いのだとか。
さらに、女性の方が上記の動脈硬化から回復しにくいそうです。
怒りを抱え込み過ぎると健康に悪いであろうことは、多くの人が経験的に知っています。
しかし、女性の場合は健康に深刻なダメージを与えかねないので、なるべく(常識的な方法で)怒りを適度に発散するべきでしょう。
3 怒っている人間に「落ち着け!」と言うのが逆効果である理由
怒り爆発モードに入って手がつけられなくなった相手に対し、我々はよく「まあ、落ち着けよ!」と言うことがあります。
しかし、「落ち着け」と言われて落ち着く者など見たことが無いという人がほとんどでしょう。
これにはちゃんと理由があります。
イギリス人の心理学者であるアマンダ・タドラウス博士によると、怒っている人に「落ち着け」と言うのは、その相手の怒りを、大したことが無いものと見なすに等しい行為なのだそうです。
例えるなら、小さな子どもが癇癪を起こしてギャーギャー騒いでいるのと同じように扱うことになるわけです。
怒っている側からすれば、自分が真剣に訴えている主張を軽くあしらわれていると受け取るので、怒りがさらに強まります。
すなわち、「落ち着け!」は火に油を注ぐようなもの。
特に、幼少期に親からこのような台詞を何度も言われた経験のある人ほど、怒りの感情は激化します。
では、怒り狂う相手に対し、周りはどう対処すべきか。
最も簡単なのは、その相手が主張する「内容」に対してこちらもしっかり意見すること。
単に「落ち着け」で切り捨てるのではなく、相手の真剣な怒りに対してこちらも真剣に向き合わねばならないのです。
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4 怒りっぽい人間は、本人が思うほど賢くない
ポーランドにあるワルシャワ大学で、520人の学生を対象に行われた実験により、怒りっぽい人間についての興味深い特徴が明らかになりました。
普段からよく怒りを顕にする人は、自分の知性を過大評価する傾向が強いそうです。
つまり、怒りっぽい人は、本人が思っているほどには賢くありません。
ただし、怒りっぽいから自分を賢いと思うのか、あるいは逆に、自分を賢いと思うから怒りっぽくなるのか、についてははっきりとは分かっていないそうです。