今回は、悲しいほどにツイてない犯罪者たちのちょっと切ない話です。
犯罪を遂行する上で必要なものと言えば、綿密に練られた犯行計画や有用なスキルを持った仲間、信頼できる道具、そして「運」でしょう。
完全犯罪を目論み、そのために十分な準備をしていても、運に見放されたらその時点で終わりです。
予想もしない形で犯行がバレて、いとも簡単に逮捕され、裁判で有罪に。
もちろん、一般市民からすれば、むしろその方が良いわけですが……。
〈originally posted on February 25,2018〉
1 空き巣に入ったら元プロレスラーの家だった
2014年7月某日、米国アリゾナ州フェニックスの住宅街で、二人組の男が一件の家に侵入し、金目の物を大きな袋に詰め込み始めました。
そして、盗品で満杯になった袋を抱えて家を出ると、遠くの方から一人のオジサンがこちらに走って来るのが視界に入ります。
実はそのオジサン、彼らが空き巣に入った家の所有者であるブライアン・ダニエルソンでした。
彼は、奥さんと外出先から帰ってきたところ、見知らぬ男二人が自分の家から「怪しい荷物」を運び出そうとしている現場を目撃したのです。
窃盗犯二人は、家の持ち主に犯行がバレたと分かった瞬間、袋を投げ捨てて逃走を試みます。
彼らはブライアンよりもずっと若く、しかもブライアンとの距離は十分に離れていたので、この中年男から逃げ切るなど容易いと考えたことでしょう。
ところが、ブライアンは鬼の形相で怒号を吐きつつ猛烈な速度で犯人たちとの距離を縮め、二人のうち一人を捕まえます。
後ろから羽交い締めにされた22歳のシーザー・ソーサは、ブライアンの体格がやたらとデカく、並の腕力でないことに気づきました。
それもそのはず、ブライアンは、「ダニエル・ブライアン」というリング名を使ってWWE(世界レスリングエンターテイメント)で活躍した経験を持つ元レスラーだったのです。
ソーサの相方は何とか逃げ切りましたが、ソーサの方は、警察が来るまでの間、ブライアンの極太の腕でガッチリ首を締められていました。
意識が飛びそうな状態の中、ソーサはひたすら謝り続けていたとか。
その後、犯人は警察に引き渡され、盗まれた物もほぼ全てブライアンの元に返ってきました。
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2 上空から全てを見られていた男
という言葉がありますけれども、本当にどんな悪事も天が見逃さないのであれば、警察は苦労しないでしょう。
残念ながら、現実には罪を犯しても逮捕されることなく平然と暮らしている者がいます。
しかし、時には人間が、空から「神の目」よろしく犯罪者を発見することもあるのです。
2012年、米国フロリダ州で、自家用飛行機を操縦していたデイヴィッド・ゼントナーは、偶然自宅付近の上空を通過したとき、自分の家のそばにいる怪しい人物が目に留まりました。
どうやらその男は、ゼントナーの家に侵入しようとして周りをうろついている様子。
そして、侵入手段が見つからないと悟ると、そのまま手ぶらで帰るわけにはいかないと考えたのか、車庫に停めてあったゼントナーのトレーラーを自分の車で牽引し始めたのです。
もちろん、その一部始終をトレーラーの所有者が上空から見ていることなど犯人は知りません。
ゼントナーは、機体を旋回させながら犯人から目を離さないようにして警察に通報します。
その後、警察によって犯人のゲアリー・ハインズ(59)という男が重窃盗罪により逮捕されました。
ゼントナーが後に語ったところによれば、犯人は何度か彼の飛行機の方を見ていたとか。
しかし、まさか所有者本人によって警察に通報されているとは思わなかったのでしょう。
3 盗まれた車を勤務先で発見
朝になり、いつものように車で出勤しようとしたら、その車が無い。
考えられる可能性はただ一つ。
誰かに盗まれた……。
これから仕事に向かう人にとって、これ以上の悪夢はそうそう無いでしょう。
遅刻するのがほぼ確実というだけでなく、犯人が捕まらず、車が戻ってこないことも考えられます。
2013年、米国ワシントン州ケニウィックに住むバージニア・メイデンという女性が、正にこの悪夢を経験しました。
しかし、バージニアは、車が無いにも関わらず、なんとか根性で勤務先のマクドナルドに時間通り出勤。
車のことが頭をよぎる度に憂鬱になりながらも仕事を続けていると、ドライブスルーに並んだ車の列の中に、見覚えのある車が。
それは、今朝盗まれたばかりの自分の車(トヨタのSUV)でした。
彼女は早速警察に通報し、その後、到着した警察官によって、その車を運転していたキャサリン・ヨーク(22)という女が逮捕されます。
車の中を調べたところ、この女は、有名な百貨店から服も何着か盗んでいたことが発覚。
その後、女は逮捕され、ハンバーガーではなく、刑務所のメシを食う生活が始まりました。
4 特殊部隊が昼食をとっているマクドナルドで強盗
類型的に見て、アメリカで最も強盗事件発生率が高い場所は、路上(街の通りやハイウェイ)となっており、全体の40%以上を占めています。
一方、日本ではコンビニでの強盗事件が多く、全体の50%近くを占めていますが、逆にアメリカでは5%に過ぎません。
また、先程も出てきたファストフード店などは、常に大勢の客で賑わっているイメージが強いので、強盗に狙われる機会は少なそうですが、時には不運な男が犯行を試みることもあります。
2016年の夏、フランス東部のブザンソンという街で、二人の男が銃を携えてマクドナルドの店内に姿を現しました。
すると、一人の男が威嚇射撃を行って店員と客を黙らせ、その隙にもう一人の男がレジから現金をかき集めます。
彼らの計画では、そのまま金を持って店から出れば、犯行は成功したも同然だったはず。
しかし、このとき店内にいた約40人の客のうち、11人が特殊部隊の隊員であることを犯人は知る由も無かったのです。
実はその隊員たちは、非番の日にたまたまマクドナルドでハンバーガーを食べに来ていただけでした。
そこへたまたま強盗犯が登場し、特殊部隊の目の前で犯行に及んだというわけ。
隊員たちは銃を所持していましたが、強盗犯が店員を脅して金を盗んでいる間も一切何も行動しませんでした。
これは、店内で犯人と撃ち合いにでもなれば、他の客に危害が及ぶ恐れがあるため。
そして、強盗犯が店を出ようとした瞬間、ここぞとばかりに隊員たちが一斉に飛び掛かります。
ただの客だと思っていたら、11人の男たちが見事なチームワークで取り押さえようとしてきたわけですから、強盗犯の驚きは相当大きかったでしょう。
犯人の内、一人はすぐに抵抗を諦めたものの、もう一人は銃で応戦しようとしたため、隊員から腹部に銃弾を一発食らいました。
その後、強盗犯は治療のために一旦病院へと搬送され、逮捕されています。
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5 グーグルマップで犯人逮捕
2009年、オランダ北部のフローニンゲンという町で、14歳の少年が自転車に乗っていたところ、いきなり二人の男に引きずり降ろされ、230ドル分の現金と携帯電話を強奪されるという事件が起きました。
少年はすぐ警察に被害届を出しましたが、手掛かりらしい手掛かりといえば、犯人の二人は顔がソックリだったので、恐らくは双子であろうと思われることくらい。
その後も犯人に関する情報は全く得られず、泣き寝入りとなる可能性が濃厚になりつつありました。
ところが、事件から約6ヶ月後、被害者の少年が何気なくパソコンでグーグルマップのストリートビューを見ていたところ、衝撃的な画像が目に入ります。
自分が強盗犯に襲われた道で、自転車をこいでいる自分の姿と、その背後から今まさに目の前のチャリンコ少年を襲おうとしている二人の男が写っていたのです。
顔はボカしてあったものの、犯行時に撮られたものに違いないと確信した彼は、早速このことを警察に連絡。
警察は、元の写真の提供をグーグル側に求め、その結果犯人が特定されました。
これで事件はとりあえず解決したわけですが、それにしても、グーグルマップの潜在能力には驚かされます。