ビーチを歩いていると、空き瓶が落ちている。
中には1枚の紙切れが。
こういうのは滅多に無い状況ですが、だからこそ、そのボトルが気になるものです。
一体どこから流れ着いたのか。
紙切れには何が書かれているのか。
ひょっとすると、そのたった1本のボトルとの出会いが、自分の人生を変える可能性を持っているかもしれません。
〈originally posted on March 25,2019〉
1 突然の訪問者
イングランドのエセックスに住む5歳の双子の姉妹、ルーシー・リーディングスとエリー・リーディングスは、2015年8月、二人で書いたメッセージをボトルに入れて海に流しました。
するとその翌年、二人の家を見知らぬ女性が訪問したのです。
その女性こそ、双子のメッセージが入ったボトルを偶然拾った人物でした。
ルーシーとエリーが流したボトルは、約3800キロ離れたスペイン領カナリア諸島のテネリフェ島にたどり着き、一人の女性に拾われていました。
その女性は英語が読めなかったので、友人に訳してもらい、それによって双子に強い興味を持ち始めます。
単純に手紙を書くよりも、直接会って話したくなった彼女は、メッセージの中にあった住所を自ら訪ねました。
こういった行動力の高さは、スペイン人の国民性なのかもしれません。
ドーナツを手土産に現れたスペインからの訪問客に、双子の姉妹は大喜び。
これをきっかけにして、その女性とリーディングス家とは継続的に連絡を取り合うようになったそうです。
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2 孤独な男の切ない手紙と環境汚染
2017年、ウェールズ在住のヘレン・リアンノン・ジルは、ビーチを歩いているとき、ピンク色の紙が入った空き瓶を見つけました。
中の紙には、短い文章が印刷されてあり、最後には何かのURLが。
その文章を読んでみると、どうやらそれを書いた人物は、女性との出会いを求めている様子。
併記されていたURLは、ボトルの主が持つブログのアドレスでした。
ボトルを拾ってメッセージを読み、彼に興味が湧いた女性にアクセスしてもらおうという狙いがあったのです。
しかし、ボトルを拾った37歳のジルは、思わず怒りがこみ上げてきました。
自分がよく散歩に行く美しいビーチに、同じガラスのボトルが30個以上も流れ着いていたからです。
彼女は早速彼のブログにアクセスし、ビーチを汚す、この身勝手な行動を非難するメールを送りました。
このボトルを海に流したのは、クレイグ・サリヴァンという男性。
彼は、妻に先立たれた寂しさから、運命的な出会いを求め、この計画を思いついたのです。
彼が実際に海に流したボトルの数は、なんと2000個。
独り身になって寂しいからといっても、さすがにこれはやりすぎです。
3 工場作業員の悲痛な叫び?
ボトルにメッセージを忍ばせるのは、個人ばかりとは限りません。
2015年、アメリカの飲料メーカーである「ソビ」は、ボトルキャップの裏に様々なメッセージを印刷しました。
それらのメッセージのほとんどは、他愛もない冗談なのですが、その中に次のようなものがあったのです。
「ここから助け出してくれ ソビの工場にいる」
多くの人は単なる冗談だと思うでしょうが、しかし、中にはこれを「笑えない冗談」として捉え、強い不快感を覚える人もいました。
過労死が深刻な問題となっている日本においても、こういう悪ふざけは洒落にならないかもしれません。
消費者からの批判の声を受けて、ソビ社はこのメッセージの廃止を発表しています。
4 運命の人との結婚
異性との出会いを求めるメッセージは、必ずしも失敗に終わるとは限りません。
1956年、スウェーデンで航海士をしていたアーケ・ヴァイキングは或るとき、孤独感を紛らすために、メッセージを入れたボトルを海に捨てました。
まだ恋人がいなかった彼は、メッセージを読んだ女性がいたらぜひ連絡してほしいと書いておいたのです。
とは言うものの、ただの暇つぶしとしてやったことなので、真面目に期待はしていませんでした。
しかし、その2年後。
イタリアに住むポーリーンという名の女性から手紙が届いたのです。
それ以来、二人は文通を始め、互いに相手の人間性に惹かれていきました。
そして、遂にヴァイキングがシチリア島に行き、彼女の家を訪ねます。
その直後、彼らはあっさり結婚を決めました。
ヴァイキングは航海士の仕事を辞め、ポーリーンと新たな人生をスタート。
たった一本のボトルをきっかけに運命の人と出会うこととなった二人の話は、新聞でも大きく報じられました。
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5 最も美しい手紙
2016年、米国フロリダ州インディアランティックで、ビーチを散歩していたスティーヴ・メンション(57)という男性が、手紙の入った瓶を発見しました。
彼は何気なくフタを開け、中の手紙を読んでみることに。
読み終えたスティーヴは、にわかに切ない気分にさせられます。
文章の書き方から判断して、それは子供が書いたもの。
その内容は、次のようなものでした。
ダニエル、君が亡くなってしまったことが本当に悲しい。
もし君が生きていたら、僕らはフットボールとかサッカーとか、野球を楽しんでいたんだろうな。
マシューやオスカー、ブランドンも一緒に。
僕はいま5年生だ。
君は一番の親友だった。
大好きなオースティン・ムーン(注1)の曲を二人でよく聞いたな。
天国で君が楽しくやってるといいのだけど。
君の親友、ジョナサン・トーレス。
これを読んだスティーヴは、強く心を揺さぶられ、自分のフェイスブックでこの話を紹介。
その中で彼は、この手紙のことを、「それまで見た中で最も美しもの」であると表現しています。