映画の撮影中に出演者やスタッフを襲った事故の数々をご紹介します。
現在の映画では、ド派手なアクション・シーンなどはほとんど全てCGが使われます。
しかし、昔の映画撮影では何でもかんでもCGという訳にはいかず、スタントマンを起用して危険な撮影を決行したり、場合によっては役者本人が体を張ることも珍しくありませんでした。
そんな撮影の中には、いくつかの不幸な偶然が重なることで、惨劇が生まれた例もあるのです。
〈originally posted on May 4,2016〉
1 『ミッドナイト・ライダー』
実在するシンガーの自叙伝を元にした、ランダル・ミラー監督の未完成映画。
2014年2月20日、あるシーンを撮影する際、陸橋を渡る線路上でカメラのテストが行われました。
しかし、このとき作業に当っていたスタッフは、プロデューサーからある重要なことを聞かされていなかったのです。
それは、この線路は廃線ではなく、実際に使用されているということ。
撮影準備をしている真っ最中に時速93kmで迫って来る列車にスタッフが気づいた時には、橋から無事に脱出するのは既に不可能でした。
列車はそのまま突進を続け、カメラ・アシスタントのサラ・ジョーンズが亡くなり、他のスタッフ7名が負傷。
この事故で、ミラー監督には過失致死罪により実刑が課せられました。
2 『征服者』
当時人気の絶頂にあった俳優ジョン・ウェインをジンギス・カン役にした1956年の作品。
この映画の撮影は、ネバダ核実験場(現ネバダ国家安全保障施設)から220kmほどしか離れていない場所で行われました。
当時は放射能汚染の与える影響が深刻に捉えられていなかったのです。
その結果、91人の撮影スタッフが後にガンを発症し、そのうち48人が帰らぬ人に。
被曝者の中には主役のジョン・ウェインや監督のディック・パウエルも含まれていました。
ちなみに、この映画は興行的に大失敗に終わり、現在では映画史上最も酷い映画という位置づけがなされています。
3 『トワイライトゾーン』
科学で説明のつかない不思議な体験を扱った人気TVシリーズを映画化した1983年のアメリカ作品。
この作品の中で、ヴィック・モロー演じるキャラクターがベトナム戦争の時代にタイムスリップし、そこで二人の子供をアメリカ軍兵士の襲撃から救うシーンがあったのです。
戦場のリアリティを追及するために多くの爆薬が使用され、上空にはヘリコプターが飛んでいました。
そして、カメラが回っている本番中にヘリコプターが制御不能となり、セットのど真ん中に墜落。
これによりヴィック・モローと二人の子供が犠牲に。
この危険なシーンの撮影前、モローは次のように語っていたとされています。
4 『トロイ』
世界史の教科書にも必ず登場するトロイア戦争を題材にした2004年のアメリカ作品。
莫大な予算を投じて作られたこの映画は様々なトラブルに見舞われました。
まず、主人公のアキレスを演じたブラッド・ピットが撮影中の事故で、皮肉なことに左足のアキレス腱を切ってしまいます。
続いて、出演者の一人が足を骨折し、翌日に手術を受けたものの合併症に苦しめられました。
さらに、1ヶ月の間に2回もハリケーンに襲われ、しかも2回目のものは映画のクランクアップ直前。
これだけのことがあったにも関わらず、映画は何とか完成にこぎつけ、結果的には大ヒットとなりました。
5 『ノアの方舟』
突如発生した大洪水に人々が飲まれていく中、神の啓示に従って予め方舟を作っていたノアとその家族だけが、動物たちと共に窮地を逃れるという『旧約聖書』の話に基づく1928年の作品。
この映画のクライマックスである大洪水のシーンを撮影する際、監督のマイケル・カーティスは、ミニチュアの模型を使うという一般的な手法ではなく、エキストラたちに洪水さながらの水を実際にぶちまける計画を立てました。
撮影当日、カメラが回り始めると、およそ15000トンもの水が役者、スタントマン、エキストラに向けて放たれます。
予想を超える水の勢いで現場は地獄絵図と化し、3人が犠牲に。
この時のエキストラには特別な訓練は何も施されていなかったために多くの負傷者を出し、中には足を切断せざるを得なくなった者もいました。
それらの怪我人を搬送するのに合計35台もの救急車を要したそうです。
この悲惨な事故がきっかけとなり、映画業界で初めて撮影に関する安全基準が規定されました。