「結婚なんて、良いのは最初の1~2年だけ」
「3年目からは地獄よ」
「ダンナが家にいるだけで憂鬱になる」
「亭主元気で留守がいい」
「ダンナと老後までずっと一緒なんて悪夢」
「人生最大の失敗は間違いなく結婚」
こういったセリフ、耳にしたことのある人は少なくないはず。
そしてこれらのセリフを吐くのは、結婚を全否定するタイプの人間だ。
結婚というものに対して絶望し、落胆し、後悔し、嫌悪している人間。
結婚の話題になると全身から負のオーラが滲み出て、周りの者を瘴気で包みこんで結婚から全力で遠ざけようとする。
ほとんど妖怪である。
こういう人たちが、真剣に結婚を考えている若い女性にエンカウントすると1%の例外も無く必ず言い放つセリフがある。
「結婚なんて止めときなさい」
というアレである(ちなみに、新婚カップルにエンカウントすると「楽しいのは今だけよ」と言うのが定番だ)。
僕はこの「結婚やめとけ」というセリフが馬鹿々々しく思えて仕方がない。
例えて言うなら、ド底辺の大学に四浪までして入学したものの留年しまくりで除籍処分された奴が、超進学校に通いながら一流大学を目指す秀才受験生に、
「大学なんて行っても意味ないぜ。止めとけ」
とアドバイスするようなものだ。
「お前が言うなよ」と誰もがツッコミたくなるだろう。
「結婚やめとけ族」もこれと同じである。
自分が結婚に失敗し、地獄を味わったから「結婚=忌むべきもの」という大前提を作り上げ、人生の後輩たちに対して、何としても結婚という危険を回避せよ、という自己満足全開のアドバイスを繰り返す。
こういう人たちは、自分が結婚をしくじったから世の中の人間も全員結婚をしくじるはずだと思っているのだろうか。
自分が結婚に失敗したのは、結婚相手が史上最低のクズだということに気付けなかった自分に落ち度があるのではなく、結婚というシステムそのものに欠陥があるからだと考えているのだろうか。
仮に、結婚が欠陥だらけのシステムであるとするなら、誰もが結婚に失敗し絶望するはずであり、まさに「結婚は人生の墓場」ということになる。
しかし現実は必ずしもそうではない。
100点満点の満足度とまではいかずとも、山あり谷ありながらも結婚してやっぱり良かった、と肯定的に捉えるカップルも相当数いるのである。
となると、「結婚やめとけ」というアドバイスは、その大前提を失うことになる。
それはもうアドバイスではなく、単なるボヤキである。
「単なる」と書いたが、このボヤキはかなりたちが悪い。
結婚に失敗したというだけで、あたかも自分は人生の酸いも甘いも苦いも辛いも旨いも不味いも全てを経験し尽くした「人生の達人」であるかのような迫力で、人生経験の浅い若者に、結婚がまるで地獄の釜の上で綱渡りするかのような暴挙であると臆面もなく説き伏せる。
おまけに、少子化に歯止めがかからない危機的状況が続く今の日本で「結婚やめとけ」と喚き立てるのだから、この人たちは意味不明の先輩風をビュービュー吹かせながら我が国の少子化を加速させているのだ。
こう考えると「結婚やめとけ族」がどれほど迷惑な存在か容易に理解できることだと思う。
こういうタイプの人間は、自分が失敗した原因は自分にあるとは絶対に考えない。
自分が失敗したのは「コイツが悪い」あるいは「アイツが悪い」と考える。
それでも納得いかなければ「社会が悪い」と考える。
どこまで行っても自分は決して悪くないのだ。
悪いのは他人であり、社会なのである。
皮肉でも何でもなく、こういう考え方ができる人間が僕は羨ましい。
「結婚やめとけ族」は、確かに迷惑な存在なのだが、しかし生き方としてはめちゃくちゃ羨ましい。
自分もそんな考え方ができれば、もうちょっとラクに生きられるような気がするのだが……。