我々の安眠を妨げる厄介な存在である「悪夢」の正体に迫ります。
どうせ夢を見るなら、幸せな気分になれる夢を見たいものですが、なかなかそう上手い具合にはいかないもの。
誰かに追われていたり、殺されそうになったり…。
高所から落下していたり、どこかに閉じ込められたり…。
こういった悪夢を見る原因は何なのか。それらの夢に何か意味はあるのか。
「悪夢」に関する恐るべき真実をご紹介します。
〈originally posted on October 22,2015〉
1 悪夢の原因
悪夢を見ている最中、我々は恐怖を感じていることが多いですが、一方で悪夢を見る原因は「恐怖心」よりも、罪悪感、悲しみ、困惑、不安などであると考えられています。
さらに、本来夢は、肯定的な内容よりも否定的な内容になる傾向があるそうです。
その理由は、困難な状況に陥った場面を夢の中でシミュレーションすることで、実際にそのような事態が発生した時の対処法を身につけておくというプロセスが、進化の過程で脳に備わったからではないかと見られています。
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2 悪夢と幻覚症状
通常の悪夢は、目覚めてしまえばそれが単なる夢だったと気付きます。
しかし、中には夢の内容を完全に現実のものと感じてしまうケースもあります。
それが、「入眠時の幻覚症状」です。
この症状では、眠りに落ちる直前の、いわゆる「まどろみ」の状態の時に次のような幻覚が現れます。
- 人の声が聞こえる。
- 何かが触れている感覚がある。
- 部屋に見知らぬ人がいるのに気付く。
- 動物や昆虫が部屋の中を動いているのが見える。
これらは厳密に言えば「夢」の一部なのですが、普通の夢との大きな違いは、本人に夢であるという意識が無いため、現実の生活に与える影響が大きいという点です。
この影響は、決して悪いものばかりではなく、アーティストや作家、科学者などの中にはこういった「幻覚」が、現実の仕事に役立ったと語っている人もいるのです。
そういった人の中には、サルバドール・ダリ、アイザック・ニュートン、ニコラ・テスラ、ベートーヴェンなどがいます。
さらに、「UFOに連れ去られたことがある」という体験談も、実際にはこの「幻覚」が一因だったというケースが少なくないようです。
3 悪夢と「ナイト・テラー」
悪夢と似て非なるものに「ナイト・テラー(またはスリープ・テラー)」と呼ばれる症状があります。
これは、悪夢を見ている最中に、目を見開いて起き上がり、大声で叫び出したりする症状です。
場合によっては、夢の内容に従って、何者かと格闘するようにパンチや蹴りを繰り出したり、何かから逃げているかのように走り続けたりするそうです。
結果的に、自分や周りの人に怪我を負わせることもあります。
1943年にジョーン・カイジャーという女性が、ナイト・テラーの症状が出ている最中、謎の「人影」を追い払おうとして、父親と6歳の弟を射殺してしまうという事件がありました。
4 悪夢と脳障害
先ほどの「ナイト・テラー」程ではなくても、悪夢を見ている時に声を上げたり、何かを蹴るような動きをしている人は、初期の「脳障害」を患っている可能性があるそうです。
睡眠中に激しく体を動かしている場合、暴力性の強い夢を見ていることが多いですが、そのような夢を繰り返し見ることが脳障害の兆候なのだとか。
暴力的な夢を頻繁に見る27人の被験者を対象に行われたある研究では、彼らのほとんどに認知症やパーキンソン病の傾向が見られたそうです。
普段から悪夢ばかりを見るということは、脳に深刻な障害が発生しつつある警告であるとも言えそうです。
5 悪夢と予知夢
夢に見た内容が現実に起こるという「予知夢」と悪夢が融合することほど恐ろしいものは無いでしょう。
仮に、自分が死ぬような悪夢を見た場合、現実に命の危険に晒されてしまうわけですから。
そして、実際にこのような事例はあるのです。
エイブラハム・リンカーンは、ある夢の中で、自分がホワイトハウスに入って行くと、死体を警備員が取り囲んでおり、その一人から、
「これは、暗殺された大統領の死体だ」
と告げられたことがあるそうです。
そして、この夢を見た数日後、リンカーンは現実に銃で射殺されるのです。
2001年に発生した「9・11テロ事件」では、生き残った犠牲者の中にテロ攻撃を受ける夢を見たという人もいます。
また、「タイタニック号」の沈没の時には、19人の乗客が、タイタニック号が沈む夢を見ていたと言われています。
その乗客の一人であるアルフレッド・ミドルトンは、船が巨大な波に飲み込まれ、多くの人が水中でもがき苦しむ悪夢を何度も見たそうです。
6 悪夢とインスピレーション
悪夢から何らかのインスピレーションを得るという例は決して珍しくはないようです。
ミシンの生みの親として知られるアメリカの発明家、エリアス・ハウは、槍を持った人食い人種に追いかけられる悪夢を見るうちに、その槍をヒントにミシンで使う「針」の仕組みを思いついたそうです。
また、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』や、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』も、それぞれ悪夢の内容がヒントになって創作されたものと言われています。
これらはインスピレーションが良い方向に作用した例ですが、中には悪い方向に作用することもあるそうです。
7 悪夢とゲーマー
最近の研究によれば、ゲーマーは悪夢を自分でコントロールしやすい性質があるそうです。
特に、3次元のリアルな空間に身を置いて行動するようなタイプのゲームを長時間プレイしている人ほど、悪夢を見ている時でも、脳はその状況を楽しいものと感じる傾向があるのです。
また、ゲーマーは、暴力性の強い夢を見ることが比較的少ないのだとか。
しかしながら、夢の内容が一旦暴力的な要素を帯びると、そこから先はゲーマーでない人の場合よりもかなり暴力性の強い内容へと変化していくそうです。
8 悪夢は何を表すのか
では最後に、様々なタイプの悪夢が、具体的にどういった精神状態の反映であるのかをご紹介します。
自然災害
重要なイベントや人間関係に対する不安感や恐怖を抱いている。
死者を見る
亡くなった人に対する気持ちの整理が付いていない。あるいは、自分の病気に対する強い不安感がある。
大事な約束・予定を忘れる
実生活での失敗を恐れている。周りからの評価が気になる。
裸になっている
自分に対して過小評価をしている。自分に自信が持てない。
怪我をしている
人生における自分の存在の弱さを感じている。
歯が抜け落ちる
自分の外見に対する他人の評価が怖い。
大切な人が去って行く
人間関係で悩みを抱えていて、自分にとって重要な人との関係が上手く行っていない。
閉じ込められる
仕事や人間関係において、逃れたいのに逃れられない閉塞感を感じている。
高所から落下する
金銭面や人間関係などが、自分の思い通りにならないという悩みを抱えている。
誰かに追いかけられて攻撃される
自分より目上の立場の人(会社の上司、学校の先生、両親など)に対する恐怖心を抱いている。
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