ストップ詐欺被害!
でもやっぱり私は騙される。
それが詐欺。
警視庁の発表によると、「振り込め詐欺」などに代表される特殊詐欺は、平成29年度において、都内だけでもその被害額が約80億円です。
今年に入ってから6月までの時点ですでに2千件以上の詐欺事件が発生し、被害額は45億円を突破。
詐欺事件が絡んだ電話も昨年の倍のペースで増えており、この国は今や詐欺大国と言っていいかもしれません。
詐欺の手口は常に変化していますから、被害に遭わないためには、警察がウェブサイト等で公開している情報を定期的にチェックするのも良いでしょう。
〈originally posted on August 7,2018〉
1 詐欺師であることがバレても尊敬され続ける男
ウィリアム・R・ハマンという男性は、心臓専門医として15年のキャリアを持ち、研究熱心で、なおかつ様々なセミナーで講義を行うなどして後進を育てることにも積極的でした。
トップクラスの医師として多くの人から信頼されていたハマンは、驚くことに、旅客機のパイロットの資格も持っていたのです。
というか……。
実は、パイロットの資格しか持っていませんでした。
つまり、医師でも何でもなく、「15年のキャリア」も全くのウソ。
実際に手術をしたことはただの一度もありません。
1980年代、彼は大学の医学部に進学するのですが、わずか数年で中退。
ところが、やっぱり医学の道を諦めきれないハマンは、経歴を偽って医学雑誌に論文を投稿し続け、医学会議にも参加。
さらに、本物の医師にレクチャーを行ってもいました。
普段はユナイテッド航空のパイロットとして仕事をする傍ら、彼は空いた時間に医師として活動するという二重生活を送り、あるときには、コンピューターを使った手術シミュレーション・ソフトウェアを開発するため、280万ドルもの助成金を得るほどの地位を確立していました。
医師の資格の無い人間がそんなことを続けていれば、遅かれ早かれ正体がバレそうなものですが、彼はこんな生活を20年も継続し、しかも何のお咎めも無かったのです。
何より凄いのは、ハマンがとんだペテン師だと発覚した後も、それを分かった上で、彼に教えを請いたいと望む医師が後を絶たなかったこと。
それくらい、ハマンは指導の仕方が上手かったそうです。
彼の能力なら、医師の資格を取るのはさほど困難ではなかったと思うのですが、何故そうしなかったのかは本人にしか分かりません。
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2 一流作家の霊を呼び出して本を書く人々
として成功を収めるためには、まずは自分の作品を多くの人に読んでもらう必要があります。
その手段として、自費出版という方法もありますが、やはり出版社に原稿を持ち込んで自分の才能を認めてもらうのがより確実でしょう。
もちろん、処女作が出版社にすんなり受け入れられるとは限りませんが、一度や二度断られたくらいで諦めるわけにはいきません。
あの『ハリーポッター』でさえ、最初はどの出版社からも断られていたのですから。
しかし、今から約100年前、なかなか作家デビューできない人たちは、かなり奇妙な手段を使うことがありました。
既に亡くなった有名な作家の霊を呼び出し、その霊が語った(と本人が主張する)物語を書き起こしていたのです。
今の時代に、出版社を訪ねていきなり、
などと言い始めたら、明らかにヤバイ奴と思われるのは確実ですが、当時はこの方法が上手くいくこともあったのです。
実際にこのやり方で本を出版した人物に、エミリー・グラント・ハッチングスという作家がいます。
彼女は、『トム・ソーヤーの冒険』などで知られるマーク・トウェインの霊を助っ人にして『ジャップ・ヘロン』というタイトルの本を一冊書き上げました。
〈マーク・トウェイン〉
当時、どれくらいの人たちが彼女の話を信じたのかは定かでないですが、ニューヨーク・タイムズ誌はこの本を酷評しています。
その後、マーク・トウェインの知的財産権を保有する者から、エミリーは訴訟を起こされ、本の販売差止めを請求されるはめに。
しかし、今でもこの本はアマゾンなどで販売されており、著者名は「マーク・トウェイン」となっています。
3 テロ事件を利用して稼ぐ者たち
詐欺という行為が許しがたい犯罪なのは言うまでもないですが、多数の犠牲者を出した悲惨な事件を詐欺に利用するのは、人として最低の行いと言えるでしょう。
2017年5月22日に、イギリスのマンチェスターで、人気アーティストのアリアナ・グランデがコンサートを行っている最中、その会場付近で爆発が起こり、23人が死亡、100人以上の負傷者を出したのは記憶に新しいところです。
そして、詐欺を働く者というのは、このようなテロ事件でさえ、金を手に入れるための手段にします。
アメリカやイギリス、カナダでは、「ゴー・ファンド・ミー」というサイトがあり、そのサイト内でユーザーがクラウドファンディングのページを作成し、様々な目的のために寄付を募ることが出来るようになっています。
このテロ事件の直後、犠牲者の遺族を支援するために、「ゴー・ファンド・ミー」を利用して募金を訴えかけるページが次々と現れました。
しかし、それらのページを作成した者の多くは、集まった寄付金をそのまま着服していたのです。
同サイトの運営者は、このような詐欺ページを見つけるとすぐに削除するという対応をしていましたが、数が多すぎてその作業が追いつかないほどだったと言われています。
4 エセ法医学検査で26年間稼ぎまくった男
物的証拠や目撃証言に乏しい難事件では、科学捜査が特に重要になってきます。
犯行現場から発見されたわずかな証拠を科学的に分析し、そこから種々の情報を引き出す過程は、海外のドラマなどでもおなじみ。
1977年、イギリス人のジーン・モリソンという男は、そんな科学捜査の世界に魅力を感じ、自分の進むべき道はこれしか無いと確信します。
それからは、一流のプロを目指してひたすら勉強に励む毎日。
……ではありませんでした。
そんなまどろっこしいことなど全くやる気の無いモリソンは、大学の卒業証書を偽造し、推理小説から得られる知識を武器に、法医学検査を専門的に請け負う事務所を立ち上げました。
捜査の過程で得られた証拠について、警察が専門機関などに法医学検査を依頼する場合、実際に作業に当たる者の学歴・経歴が真正なものかどうかなど、普通はチェックしません。
要するに、事務所を作ってしまえば、その時点で既にやった者勝ちなのです。
その証拠に、この「エセ法医学検査事務所」で、モリソンは26年間も周りを騙し続けていました。
刑事事件だけでなく、民事事件に関する仕事をも手がけ、平均年収は日本円にして3600万以上あったとか。
自ら証言するために出廷した回数は約700回。
それだけ頻繁に裁判官や弁護士と顔を合わせていながら正体を見破られなかったのは、ある意味才能かもしれません。
それにしても、なぜ彼はバレることが無かったのか。
これについては、多くの関係者が、「謎」であると答えています。
というのも、モリソンは、特に手の込んだことをしていたわけではなく、ネット上に転がっているそれらしい専門文献を適当にコピー&ペーストしていただけなのです。
これだけの作業で簡単に法律のプロを騙せてしまうことにも驚きですが、何より恐ろしいのは、彼が関わった裁判において有罪判決を食らった人は、果たして本当に有罪なのか、ということなのです。
モリソンはその後、裁判で懲役5年が言い渡されています。
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5 存在しない国の土地を売った男
ネットで何でもすぐに調べられる今の時代ではまず不可能な、ケタ違いのスケールで詐欺を行っていた人物に、グレガー・マクレガーという男がいます。
スコットランド出身の兵士だった彼は、1820年頃から十数年にわたり、新天地への移住を望むイギリス人に対し、自分が「ポイエ」という国を治めていると信じ込ませ、その土地の権利を売っていたのです。
もちろん、ポイエなどという国は端から存在しません。
そこでマクレガーは、自分のウソに説得力を持たせるために、ポイエのガイドブックまで作成。
それが功を奏したのか、土地を購入した人の数は約250人にまで達しました。
架空の国であるとはつゆ知らず、海外での新生活を夢見ていた彼らが船で連れて行かれた先には、やはり国らしき土地はありません。
周囲を見渡して、辛うじて島と呼べそうなのは、ヒトが住めそうな感じがほとんどしない無人島のみ。
結局、彼らの半数以上が死亡しました。
しかし、マクレガーの詐欺行為はまだまだ終わりません。
今度はターゲットをフランス人に変え、ポイエ国憲法の草案まで自ら作成してさらに被害者を増やします。
ネットの無い時代といえど、ここまで大胆なウソを十年以上も押し通していればさすがにバレるわけで、1825年にマクレガーは逮捕されました。
ところが、翌年に釈放されるやいなや、存在しないポイエ国を利用して、彼は早速次のカモを探し始めたそうです。