スポーツの試合にせよ、ビデオゲームにせよ、どうしても勝たねばならないとき、何としても勝ちたいときの最後の手段が、チートです。
もちろん、バレたら全て終わり。
しかし、バレなければ容易く勝利を手にすることができる。
その意味で、チートは麻薬的な魅力があるのかも知れません。
今回は、そんなチートのお話です。
〈originally posted on October 11, 2022〉
1 超天才のブラックジャック必勝法
今から半世紀前、個人用のパソコンはまだ存在していませんでした。
当たり前ですが、ウィンドウズなど影も形も無い頃です。
そんな時代に、ある天才が、度肝を抜くようなコンピューターを開発していたのです。
その天才の名は、キース・タフト。
彼がコンピューターを開発した目的はただ一つ。
カジノのブラックジャックで勝利するため。
タフトはまず、靴底に電子基板を忍ばせておきました。
ブラックジャックをプレイする際、カードが配られる度に、足の指を使って手札の情報をその基板にインプット。
インプットされたデータは、配線を辿って、お腹回りに巻き付けた小型のコンピューター群に到達。
それらのコンピューターが即座に計算を行い、残りのカードについての情報をシグナルとしてメガネに送信。
最後に、メガネのフレームに埋め込まれたLEDライトが、シグナルに応じて点滅するという仕組み。
まさにグーグル・グラス。
その情報を参考にして、彼はゲームを有利に進めていたのです。
それにしても、こんな凄いデバイスを、1970年代に開発していたというのは驚きです(それもチート行為だけのために)。
しかし残念なことに、この方法をもってしても、彼は必ずブラックジャックで勝てるわけではなかったと言われています。
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2 本当は強い「残念な競走馬」
オーストラリアの競馬史において、1980年代に大きなスキャンダルを巻き起こした競走馬がいます。
「ファイン・コットン」という馬がそれです。
この馬、とにかくレースで勝てませんでした。
当然の成り行きとして、ファイン・コットンの馬主は、より強い競走馬を購入。
しかし馬主は、その新しい馬を、あくまで「ファイン・コットン」として走らせようと画策したのです。
本当は強い馬を弱い馬として出走させるということは、その事実を知る者たちだけが、大金を手にできる可能性が高いということ。
ところが、この計画には大きな問題がありました。
それは、その新しい馬が、ファイン・コットンのような栗毛ではなかったこと。
そこで馬主は、馬の体毛を栗毛にするべく、(人間用の)ヘアカラーを使って染色。
これで準備万端かと思いきや、またもやトラブルが。
出走直前になって、馬の脚の色が、ファイン・コットンのような白色ではないことに気づいたのです。
ヘアカラーなど用意する時間の無い彼らは、ペンキで馬の脚を白く塗り塗り。
これでバレないと思うところが凄すぎます。
いよいよレースが始まったのですが、本来なら大穴であるはずのファイン・コットンの人気が急激に上がったことで、胴元が不正の匂いを嗅ぎ取りました。
おまけに、レース中に馬の脚からペンキが滴り落ちるという異常事態。
ここまでくれば不正がバレて当然でしょう。
このチート計画に関わった者たちは、後に競馬界から追放されています。
3 国全体で受験禁止令
韓国と言えば、受験戦争がかなり熾烈な国として有名です。
その受験対象となる学校は、国内のものだけに限られません。
アメリカへ留学し、最高レベルの教育を受けようとする学生も大勢います。
そして、アメリカ留学において重要なテストが、「SAT」と呼ばれる適性試験。
アメリカの全ての大学が、海外からの留学希望者にこの試験を課すわけではありませんが、大学によっては必須となります。
2013年、韓国のとある予備校が、受講生にSATで高得点を取らせるべく、禁じ手を使ってしまいました。
不正に入手したSATの入試問題情報を、受講生に販売したのです。
価格は、日本円で約60万円。
我が子をアメリカの大学で学ばせることが出来るのならと、購入を決める親が多かったとか。
しかし、このチート行為が前代未聞の事態を招くことに。
不正に情報がリークされたことが発覚すると、韓国国内における全てのSAT実施が中止となったのです。
チートに関わっているか否かに関係なく、誰一人としてSATを受験出来なくなりました。
アメリカ留学のために必死に勉強していた人たちにとっては悪夢としか言いようがありません。
ただ、どうしても諦めきれない人の中には、外国へと渡ってSATを受験する者もいたそうです。
4 トランプで謎のドーピング
トランプのゲームの一種である「ブリッジ」というものをご存知でしょうか。
僕は知りません。
どうやら4人で行うゲームのようです。
2019年、そのブリッジの世界大会に関して、驚くべきニュースが流れました。
ブリッジのトップ・プレイヤーだったゲイル・ヘルゲモという選手が、失格となったのです。
理由は、ドーピング。
体内のテストステロン値を上げる効果のある薬物を使用していました。
アスリートがドーピングをするのはまだ理解できますが、トランプで何故ドーピングなのか。
理由はよく分かりません。
しかし、たとえトランプであってもドーピングはドーピング。
ノルウェー出身のヘルゲモは、大会への出場資格を停止され、さらに、前年度で獲得したメダルも全て剥奪されることになりました。
5 重すぎる綱引き必勝法
小学校の運動会以外で綱引きをやったことのある人は、あまりいないかも知れません。
しかし、日本を含め、綱引きは世界中で本格的な競技としても行われています。
今から100年以上前の1908年、イギリスで綱引き選手権が行われたとき、リバプール出身のチームが、画期的(?)なチート手段を思いつきました。
それは、「重い靴」を履くこと。
重りを埋め込んだ靴を履けば、チーム全体の総重量も増えるわけですから、大きなアドバンテージになります。
しかし、靴があまりにも重すぎて、選手たちは足を地面から上げるだけでも一苦労。
恐らく、壊れかけのロボットのようなカクカクの歩き方になっていたのでしょう。
その不自然な歩き方から、彼らの不正はすぐにバレました。
ところが、綱引きのルールブックには「重い靴を履く」ことを禁じる項目が無かったため、彼らは出場停止を免れることに。
こんなチームが参加したらぶっちぎりで優勝しそうな感じですが、意外なことに、彼らは3位に終わっています。
6 チェスで最も本格的なチート
頭脳と頭脳の勝負であるチェス。
そんなチェスの世界も、チートと無縁ではありません。
2015年、インドで行われたチェスのトーナメントでは、19歳の男子学生が、かなり手の込んだチートを実行しました。
彼はまず、自分の両足首にスマホを装着。
耳には超小型のレシーバー。
パンツの中には予備のバッテリーまで用意してありました。
試合が始まると、彼は相手の駒の動きを、足で床をタップすることで信号として約200km離れた場所にいる友人のスマホに送信。
その友人がパソコン上で専用ソフトを使い、最善の次の一手を割り出します。
後は、それをプレイヤーのレシーバーに伝えるだけ。
床をタップしてから最善の一手を知るまで約2分。
そしてこの「2分」が仇となりました。
相手プレイヤーは、盤面がどんな状況であっても、その男子学生が次の一手まできっちり2分かかることに違和感を覚えたのです。
これがきっかけとなり、チート行為が明るみに出ました。
チェスの大会でチートを行う者は珍しくはないですが、これだけ気合の入ったチートはなかなか無いと思われます。
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7 最もおバカなスピードランナー
ビデオゲームの世界における「スピードランナー」という人たちをご存知でしょうか。
これは、主にアクションゲームにおいて、いかに早くクリアできるかを競う人たちのこと。
1秒でもクリアタイムを縮めるために、考えうるベストの戦略を練り、それを完璧な形で実行できるまで、彼らは何度も挑戦し続けるのです。
2017年12月17日、とあるメキシコ人のYouTuberが、
「スーパーマリオを5分以内にクリア」
という内容のタイトルで動画を投稿しました。
そのYouTuberとは、当時すでにチャンネル登録者数が500万人近くもあったタヴォ・ベタンコートという男。
再生回数は、あっという間に数百万回に。
動画の画面構成は、画面の左側にコントローラーを持ったタヴォ、右側にゲーム画面、左下にタイム表示となっています。
初代スーパーマリオを5分以内で全クリアするのは、トップランクのスピードランナーたちの間では珍しくないものの、凄いタイムであることに変わりはありません。
しかしながら、この動画は完全なるチートです。
それも、かなり度肝を抜くチート。
実はこのタヴォという男、他のスピードランナーの投稿した動画を勝手に使用し、その映像に合わせてコントローラーを操作していたのです。
要するに、自分では全くゲームをしていません。
〈左がタヴォ本人、右がパクリ動画〉
パクリだと簡単にバレないように、複数の人が投稿した映像をつなぎ合わせるというセコい真似もしていました。
しかしこの動画、よく見ると、おかしな点が山ほどあるのです。
スピードランは極度の集中力を必要とするはずなのですが、タヴォは、ピザを食べたりコーラを飲んだりしながらプレイ(のふり)をしていました。
さらに、スピードランに詳しい人が動画を検証したところ、動画の不自然な点が次々と明らかになり、チートであることが確定。
スピードランの世界において、タヴォは実に滑稽な男として名を刻むことになりました。
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