小学校低学年の子に、「地球はどんな形をしているか」と尋ねれば、全員が「まるいかたち」とか「ボールみたいになってる」などと答えるはず。
これはもうどんな子供であっても同じでしょう。
「おい、キミ大丈夫か?」と言いたくなるくらい鼻水をダラダラ垂らしながら口をぽっかーんと開けっ放しでいる子供であっても地球が丸いことは知っています。
しかし、近年急激に増えてきているのが、地球は平面であると信じて疑わない人たち。
「フラット・アーサー」と呼ばれる彼らは、普段から鼻水を垂らしているような大人でもなければ、怪しいカルト教団というわけでもありません。
どちらかと言えば、バリバリ理数系の人が多いのです。
〈originally posted on November 2,2019〉
1 地球が平面である根拠
では、そんな常識のある大人がなぜ、地球は丸いという「常識」を否定するのか。
その理由の一つは、聖書。
聖書には、地球は移動しないという記述が複数あり、さらに、旧約聖書中の一書である『ダニエル書』には、
「地球の中心から生える巨木の先端は天を衝き、地の果てをもその視界に収める」
という一文があります。
地球が球体なら「地の果て」が見えるはずはないので、上記の内容は地球が平面であることを示唆しているというわけです。
また、フラット・アーサーの理論では、地球は北極圏を中心にした円盤状になっており、外周は南極の氷で囲まれています。
すなわち、海抜約45メートルの「アイス・ウォール」が、海水が宇宙空間に流れ出るのを防いでいるのです。
では、誰かがそのアイス・ウォールを乗り越えたらどうなるのか。
実は、それを全力で阻止しているのが、なんとアメリカのNASAなのだとか。
つまり、NASAがアイス・ウォールを常時監視しているのです。
しかし、そうなると一つ大きな疑問が生じます。
NASAと言えばスペースシャトルであり、これまでにも宇宙から見た地球の映像は何度となくテレビ等で放送されています。
そういった映像に映る地球の姿は、明らかに丸い。
地球が球体であることを自ら証明しているNASAが、なぜアイス・ウォールなどというものを監視しているのか。
フラット・アーサーたちに言わせると、これはNASAの陰謀なのだそうです。
換言すれば、宇宙飛行などは全部ウソということ。
美しい地球の映像は、おそらくCG職人たちが徹夜で作成したニセ映像です。
そうなると問題は、NASAがそんなことをして何のメリットがあるのかという点。
これについては、単純に金銭的な利益のためであるとか、技術力の高さを世界に誇示するためであるなどといった説があります。
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2 重力の説明
地球が平面だとすると、重力はどう説明するのか。
リンゴの木にラガーマンがタックルすれば、リンゴが地面に落ちます。
これは、リンゴに重力が働いているからではないのか。
そして重力は、地球が巨大な球体だからこそ発生しているのではないのか。
この点につき、フラット・アーサーは、平面の地球が秒速9.8メートルの速度で上昇していると考えます。
例えて言うなら、人類は永久に止まることの無いエレベーターに乗っているようなもの。
巨大な球体の中心から強い引力が発生しているわけではないのです。
3 パックマン理論
フラット・アーサーたちの主張にツッコミどころが多いのは改めて言うまでもないですが、特に弱いポイントがあります。
我々は、飛行機で地球一周ができることを知っています。
しかし、地球が仮に平面だとするなら、飛び続ける飛行機は、いずれ地球の端っこから外へ飛び出してしまうはず。
これは一体どう説明すればよいのか。
この問題を解決するために登場したのが、「パックマン理論」です。
パックマンというゲームを見たことのある人ならお分かりでしょうが、このゲームでは、プレイヤーが操作する黄色い謎の生命体が、画面の左右どちらかの端まで行くと、反対側の端から現れます。
この理論を地球に当てはめて考えると、平面状の地球の端と端は時空がつながっており、例えば、飛行機で東へと飛び続けると、ワープして西から出てくるのです。
4 オーストラリアなど無い
パックマン理論の奇天烈さに面食らった人もいるでしょうが、驚くのはまだ早いかもしれません。
フラット・アーサーの中には、「オーストラリアは存在しない」という人もいるのです。
それを裏付ける説明もいくつかあります。
18世紀にイギリスからオーストラリアへと移住させられた人々は、実は上陸する前に船から落とされて全員溺死したという説もあれば、オーストラリア自体がCGであるというトンデモ説も。
では、実際にオーストラリアに旅行に行った人たちについてはどう説明するのかというと、旅客機のパイロットたちも陰謀に関わっており、実際は南アメリカに着陸していたのだというわけです。
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5 有名人にも地球は平面だと信じる人がいる
地球が平面だと言っている人たちに共通しているのは、彼らは皆信念を持ってこの立場を堅持しているということ。
勉強不足というわけでも無ければ、奇を衒っているわけでも無いのです。
さらに、有名人の中にもこの説を唱える人はいます。
例えば、イングランドの元プロボクサーで、世界王者にもなったカール・フローチは、つい最近、ある取材で「地球が平面なのは100%確実だ」と語っています。
また、我々のほとんどが地球は球体であると思いこんでいるのは、NASAの公開した、全てCGで作られた写真の数々が原因であるとも主張。
彼は、リチャード・ブランソン(イギリスの実業家で大富豪)のような人物が、自分を宇宙へと連れて行ってくれない限り、つまり、己の肉眼で地球が丸いということを確認しない限りは、地球は平面であるという考えを変えるつもりは無いとか。
おそらく、フラット・アーサーは今後ますます増えていくでしょう。
そのうち、「地球は丸い」と人前で断言するのに少し勇気が要るような時代が来るかも知れません。