観たい映画や遊びたいゲームがあったらまず注意すべきこと。
それは、ネタバレです。
小説や映画、ゲームなどで、世間で大きな話題となっているものがあれば、誰でもチェックしたくなるものでしょう。
その作品に「衝撃のラスト」が用意されていれば尚更です。
ただ、その場合に気をつけなければならないのが、「ネタバレ」情報に接しないようにすること。
何気なく映画の予告編を見ていたら、もろにネタバレ要素が含まれていた、などというのはよくあります。
そしてネタバレに関して、ある意味そのネタバレ以上に意外なエピソードを持った作品もあるのです。
〈originally posted on September 2,2018〉
1 『セブン』
になぞらえて次々と人が殺されるという、イカレタ犯罪者による連続殺人事件を扱った1995年の作品。
この手の映画で観客が最も気になる部分は、やはり真犯人は誰かというところでしょう。
犯人が明らかになるその瞬間に、新鮮な驚きが味わえることを観客は期待します。
しかし、時には映画のキャスティングを見ただけで、勘の良い人なら先の展開が読めてしまうことがあります。
例えば、その作品に超大物俳優がキャスティングされているのに、映画の後半になってもなかなか登場しない場合、その人が犯人役なのではないかと推測する観客もいるでしょう。
仮にそれが正解だとすると、すでに登場している容疑者はすべてシロということになり、ネタバレ感が否めません。
この『セブン』における「超大物俳優」は、ケビン・スペイシーでした。
彼は、自分がキャスティングされていることを前もって観客が知ると、彼が犯人であることに映画の途中で気づく人が続出すると考え、あらゆる広告から自分の名前を削除するように自ら提案したのです。
公開当時の看板やポスターにはケビン・スペイシーの名前は無く、映画のオープニングでも彼の名前は出てきません。
この配慮により、映画を見ている観客は、真犯人であるスペイシーが何の前触れも無く現れて衝撃を受けることとなったのです。
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2 『ボーダーランズ2』
〈神ゲーです〉
このゲームの1作目で、主人公の一人として登場するローランドというキャラクターは、いかにも正義感が強そうなタフガイです。
そのローランドは、『ボーダーランズ2』においてはプレイアブルキャラではなくなり、レジスタンスのメンバーとしてストーリー上重要な役目を担います。
しかし、多少の銃弾を浴びてもビクともしないような見た目とは裏腹に、ゲームの終盤で彼は実にあっけなく殺されます。
多くのプレイヤーにとっては驚きの展開となるわけですが、実は、ローランドが死ぬことはかなり早い段階で暗示されているのです。
物語の中盤で、独房に入れられたローランドをプレイヤーが助け出すミッションがあります。
その独房の扉を開けると同時に大量の敵が襲ってくるので、おそらくほとんどのプレイヤーは、敵の相手をするのに忙しくて独房の中の様子などは気にしてられないでしょう。
しかし、ローランドを助け出すとき、彼の背後の壁をよく見ると、うっすらと文字が書いてあるのです。
独房内が暗くて読みにくいのですが、この場面をスクリーンショットに収め、輝度を上げるとそこにはハッキリと、
YOU DIE
(お前は死ぬ)
という血文字があります。
3 『ファイトクラブ』
〈オフィシャル・トレーラー〉
不眠症
に悩む主人公(エドワード・ノートン)が、ひょんなことからタイラーという男(ブラッド・ピット)と出会い、ただ互いに殴り合うためだけに存在する「ファイトクラブ」の中で、閉鎖的だった人生に活路を見出すという話。
この映画は、最後の最後で衝撃の真実が明かされます。
それは、タイラーなどという人物は最初から存在していなかったということ。
いわば、タイラーは主人公の別人格なのです。
余談ですが、主人公が不眠症を患っていると、こういうどんでん返しが待っているパターンが多いような気がします。
それはさておき、この意外な結末は、映画の前半で意図的にネタバレされています。
ただし、よほど注意深く見ていないと、普通は絶対に気づきません。
出張から戻ってきた主人公が自宅に帰ろうとすると、自分のアパートが爆発・炎上している現場に遭遇し、呆然と立ち尽くします。
何とか我に返ると、すぐそばに公衆電話を見つけ、タイラーからもらった名刺に書いてある番号にかけてみます。
応答は無し。
電話を切ると、その数秒後に公衆電話のベルが。
アメリカでは、「*69」を押すと、最後の着信番号に電話をかけるサービス(コール・リターン)があります。
ここで観客は、タイラーは自宅からコール・リターンをしたのだと思うわけです。
ところが、主人公とタイラーが電話で会話をしているシーンをよく見ると、電話機に貼られたステッカーに、
「外部からの着信不可」
と書いてあります。
すなわち、その公衆電話に誰かから電話が入り、ベルが鳴ることなど絶対に無いのです。
これに気づけば、主人公が電話で会話しているように見えるのは、単なる一人芝居であり、タイラーは存在していないと判明するわけです。
4 『デッドスペース』
〈テレビCM〉
宇宙船の中に取り残された恋人のニコールを助けるため、敵を蹴散らしながら主人公のアイザック・クラークが船内を探索するというSFホラーアクション・ゲーム。
ゲームを進めていくと、途中で何度かクラークはニコールの姿を目にします。
ところが、彼が見たニコールは全て幻影であり、彼女は最初からすでに死んでいたことが物語の終盤で明らかに。
そして、この衝撃の展開は、ゲーム内の「ある部分」で巧妙にネタバレされているのです。
ある部分とは、各チャプターのタイトル。
それらを最初から順に並べると……。
New Arrivals
Intensive Care
Course Correction
Obliteration Imminent
Lethal Devotion
Environmental Hazard
Into the Void
Search and Rescue
Dead on Arrival
End of Days
Alternate Solutions
Dead Space
これのどこにネタバレが隠されているかお気づきでしょうか。
各タイトルの一文字目を縦に読むと謎が解けます。
NICOLE IS DEAD
(ニコールは死んでいる)
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5 『サイコ』
ロバート・ブロックの同名小説をアルフレッド・ヒッチコックが映画化した古典的名作。
ジャネット・リー演じるヒロインが、シャワーを浴びている最中に殺されるシーンはあまりにも有名です。
しかしながら、1960年に公開された当時は、映画の前半でヒロインが死ぬことだけでなく、その他の様々な衝撃的展開を事前に知る人はほとんどいなかったとされています。
その理由は、監督のヒッチコック自身が、ネタバレを恐れて徹底した対策を取ったから。
ヒッチコックは、原作を初めて読んだとき、その展開の奇抜さに度肝を抜かれたそうです。
そして、9千ドルで映画化の権利を手に入れると、映画の観客が事前に原作を読まないように、女性アシスタントに頼んで街中の本屋で『サイコ』の原作本を買えるだけ買わせたのです。
さらに、一般的に映画はその公開前にトレーラーが製作されるのが通常ですが、『サイコ』の場合、トレーラーには映画本編の映像は一切使われませんでした。
映画のセットの前をヒッチコックが歩きながら、淡々と解説を加えるだけの映像を作り、それを「トレーラー」にしたのです。
キャストや撮影スタッフには、映画の結末を絶対に誰にも口外しないという誓約書にサインをさせるほどの徹底ぶり。
さらに、当時の『サイコ』のポスターには、今では考えられない次のような警告文が、目立つ所に大きく書いてありました。
ここまでやれば十分だろうと思いたくなりますが、まだ終わりません。
トドメとして、ヒッチコックは各上映が終わるごとに劇場内で音声テープを流し、観客に対して、まだ映画を観ていない人にネタバレしないでほしいというメッセージを伝えたのです。
今の時代にこんなことをすれば、ネタバレをすぐにツイートしろという「フリ」としか受け止められないでしょうが、今から約60年前には、かなり効果があったようです。