歴史的に有名なものから、あまり知られていないものまで、考えれば考えるほど訳が分からなくなるパラドックスの数々をご紹介します。
一見正しいようでいて実は間違っている。
一見不可能であるかのようで、実は可能。
「パラドックス」と呼ばれるものには様々なパターンがあります。
そして、こういったパラドックスは、古来多くの人々の頭を混乱させてきました。
〈originally posted on October 18,2015〉
1 全能のパラドックス
最初は、非常に有名な古典的パラドックスから。
もし、不可能なことは何一つ無い「全能の神」が存在するとしたら、次の課題は実行可能でしょうか。
仮に、そのような石は創れないとしたら、その時点で全能ではなくなり、創れたとしたら、その石を「持ちあげられない」という事実により、やはり全能ではなくなってしまいます。
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2 ピノキオのパラドックス
ピノキオはウソをつくと鼻が伸びてしまいますが、彼が次のような発言をしたらどうなるでしょうか。
仮に鼻が伸びなければ、彼はウソを言ったのに鼻が伸びないことになります。
逆に鼻が伸びれば、彼は真実を言ったのに鼻が伸びたことになります。
3 床屋のパラドックス
ある町に、たった一件だけの床屋があるとします。
その店の主人(男性)には次のようなポリシーがあります。
ではここで問題。
彼自身のヒゲは一体誰が剃るのか。
彼は自分で自分のヒゲを剃ることは出来ません。何故なら、彼は自分でヒゲ剃りをしない人のヒゲしか剃らないからです。
一方で、彼は自分のヒゲを剃らない訳にもいきません。何故なら、彼は自分でヒゲ剃りをしない人全員のヒゲを剃るからです。
4 テセウスの船
今ここに、完成したばかりの船があるとします。
経年劣化とともに、船の様々なパーツを少しずつ新しい物と交換していき、古くなったパーツは倉庫に保管していきます。
やがて、船の全てのパーツが新しい物と入れ替わった時、その船は元の船と同一の船と言えるのでしょうか。
さらに、ずっと倉庫に溜めておいた古いパーツを使って全く同一の船を作ったら、元々の船は一体どちらになるのでしょうか。
5 双子のパラドックス
アインシュタインの「相対性理論」に基づいたパラドックス。
相対性理論によれば、あらゆる物体は「光の速さ」に近づくほど、その物体の中を流れる時間が遅くなります。
ではここで、地球で生まれた双子の一方が、光速の99.9%の速度で移動できるロケットに乗って宇宙へ飛び立ったとします。
5年間の宇宙旅行を経て地球に戻ったとき、もう一方の双子はどうなっているのでしょうか。
このロケットの中では、時間の進む速さが地球上の
4.5%
にまで下がります。
その結果、ロケットが地球に戻った時、地球では既に
110年
の時が過ぎているのです。
これが、一般に「双子のパラドックス」と呼ばれているものです。
6 ピートのパラドックス
生物を形作っている一つ一つの「細胞」は、潜在的にガン細胞へと変化する可能性を持っています。
ということは、細胞の数が多ければ多いほど、ガン細胞が生まれる確率も高くなると考えるのが自然です。
では、人間よりも遥かに巨大で細胞の数も多い「クジラ」は、人間よりガンになりやすいのでしょうか。
これが、オックスフォード大学教授のリチャード・ピートによって提唱されたパラドックスです。
そして、答えはNO。
実は動物の体の大きさと、ガンになる可能性との間には相関性は無いのだそうです。
実際、ある種のネズミはその小ささにも関わらず、人間よりもガンになる確率が高いのだとか。
7 C-バリュー・パラドックス
の中には、生命の設計図が詰まっています。
そうであれば、複雑な構造をした生物ほど、より複雑で膨大な量の情報が含まれた染色体を持つと思ってしまいそうですが…。
実はそうではないのです。
驚くことに、単細胞生物である「アメーバ」が持つ染色体の情報は、人間の約100倍もあるのだとか。
この奇妙な不一致は、「C-バリュー・パラドックス」と呼ばれています。
8 「二通の封筒」問題
ある人が二通の封筒を手に持ってあなたにこう言います。
そして、あなたがどちらか一方の封筒を受け取り、中身を取り出した時点で彼はこう言うのです。
さて、あなたは封筒を交換すべきか否か。
ここで、高校数学で学習する「期待値」を利用すると、次のような計算をすることで、交換する方が1.25倍有利だと考える人が圧倒的に多いのです。
しかし、この計算で、交換した方が得だと考えるのは間違い。
何故なら、もし封筒を交換することで、ゲットできるお金の期待値が増えるのであれば、交換を無限に繰り返せば、期待値も無限に上がっていくことになってしまうからです。
9 絞首刑のパラドックス
一人の死刑囚が、ある日次のように告げられました。
これを聞いたその死刑囚は、最終的に自分は死刑執行を免れるという結論に至ったのです。
彼はまずこう考えました。
執行日が金曜日である可能性は無い。
何故なら、木曜日まで執行が無ければ、執行日は金曜日だと判明するので、「不意打ち」にはならないから。よって、金曜日は外れる。
そして、執行日が木曜日である可能性も無い。何故なら、金曜日は既に執行日でないと確定しているので、水曜日まで執行が無ければ、執行日は木曜日だと判明し、やはり「不意打ち」ではなくなってしまうから。
同じ要領で、水曜日、火曜日、月曜日も執行日から除外され、結局自分は死刑執行を免れる。
彼の理論は一見すると正しいようにも思えますが、結果はどうなったのかというと…。
絞首刑は「水曜日」に執行されたのです。
自分は絞首刑にならないと確信している人物にとって、この死刑執行は「不意打ち」以外の何物でも無いというわけです。
10 アリとロープのパラドックス
ここに、無限に引き伸ばすことの出来る、長さ1mのゴム製ロープがあるとします。
そのロープの上に一匹のアリが乗っています。
このアリは、ロープの端からスタートして、秒速1cmで進んで行きます。
ではここで問題。
おそらく、多くの人が、「無理に決まってる」と思ってしまうでしょう。
しかしながら、「理論的には可能」なのです。
このパラドックスのポイントは、
「秒速1cm」 対 「秒速1km」
という比較で考えてはいけないという点にあります。
なぜなら、アリとロープは互いに独立した存在ではなく、アリはロープの上に「乗っている」からです。
スタートした瞬間、アリが踏破せねばならないロープの残りは100%です。
そしてスタートから1秒後、ロープは一気に伸びますが、アリも僅かにスタート地点から進んでいるので、アリが進まねばならないロープの残りは100%から僅かに減っているのです。
よって、アリはいつかは必ずロープの端まで辿り着きます。
・・・理論上は。
というのも、それにはこの銀河系が消滅してしまうくらい気の遠くなる時間を要するので、最低限の条件として、
アリが不老不死であること
が必要になってくるのです…。
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