国内外に数多くのファンを持ち、ビデオゲーム史に多大な影響を与えてきた任天堂。
マリオやリンク、ドンキーコングにフォックスなど、今でも世界中で愛されるキャラクターをここまで次々と生み出した企業はそう多くはありません。
今月からは、USJの「スーパー・ニンテンドー・ワールド」も正式オープンします。
任天堂は正に、ゲーム界のディズニーと言えるでしょう。
僕自身、任天堂は、最も好きなゲームメーカーの一つです。
ただ、どうにも好きになれない部分もあります。
それは、任天堂が時々見せる、妙なコダワリ。
そしてそのコダワリは、誰も望んでいないことがほとんどなのです。
〈originally posted on March 10,2021〉
1 カートリッジへのコダワリ(Nintendo64)

ファミリーコンピュータ、それに続くスーパーファミコンによってゲーム機市場の王座に君臨していた任天堂が、1996年に発売した、64ビットCPU搭載のゲーム機が、このNintendo64。
この頃は、セガサターンとプレイステーションの登場により、ゲームソフトの供給メディアはCDが主流となっていたのに、任天堂はカートリッジにこだわりました。
CDの時代に何故カートリッジなのか。
当時、任天堂の名物広報として、よく雑誌の取材に答えていた本郷氏は、CDには無いカートリッジのメリットについて、ロード時間の短さや、子供が手荒に扱っても問題が生じにくい点などを挙げていました。
これらに加え、違法コピーされにくいことも含まれるでしょう。
確かに、これらはメリットと言えばメリットです。
しかしながら、デメリットの方が明らかに深刻。
まず、CDに比べると、ROMカートリッジは、製造コストが格段に高い。
当然、それは価格にも反映されることとなり、ローンチタイトルの一つである『スーパーマリオ64』は、販売開始時のメーカー希望小売価格が9800円もしました。
これは、プレステやサターンのソフトのほぼ2倍。
サードパーティにとっても、Nintendo64向けのゲーム開発は、コストの面でリスクが大きかったのです。
また、ゲームの容量もCDに比べると断然不利で、美麗なムービーなどを入れる余裕はありません。
当時の任天堂社長だった山内氏は、
「ムービーはゲームの楽しさにとって本質的ではない」
という趣旨のコメントをしていましたが、結局、ROMカートリッジの容量が仇となり、ずっと任天堂ハードで発売されていた人気RPG『ファイナルファンタジー』の最新作は、プレイステーションで発売されることになったのです。
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2 特殊な操作方法へのコダワリ(スカイウォードソード)

今からちょうど10年前に発売された、『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』は、「ファミ通」のレビューで満点のスコアを獲得したほどの名作。
しかし、モーションコントローラーを使って、テレビの前で腕をぶんぶん振り回さなければプレイできないという仕様は、一部のプレイヤーからは不評でした。
子供、或いは、童心を忘れていない大人であれば特に問題無いかも知れませんが、童心なんてとっくの昔に置いてきた大人にとっては、かなり厄介な操作方法。
にも関わらず、普通のコントローラーでも操作出来るようにはしないのが、任天堂のコダワリです。
こういった特殊な操作は、WiiUで発売された『スターフォックス ゼロ』でも採用されていました。
テレビの画面と、ゲームパッドの画面の両方を見ながら敵を狙撃する操作は、慣れるまでがそれなりに大変。
慣れてしまえばゲームへの没入感が増すのですが、やはりこのゲームも、普通の操作で遊びたかったという人は少なくないでしょう。
3 実況動画へのコダワリ(クリエイターズ・プログラム)

かつて世界中のYouTuberを唖然とさせたのが、「ニンテンドー・クリエイターズ・プログラム」という奇天烈なシステム。
任天堂のゲームを使った実況動画をYouTubeに投稿したければ、このクリエイターズ・プログラムに加入せねばなりませんでした。
これは要するに、任天堂のゲームで実況したければ、その動画は任天堂が事前にチェックしますよ、というもの。
任天堂にしてみれば、自社のゲーム映像がどのような形で投稿されているのかを管理できるわけですから、その意味では安心でしょう。
しかし、実況者にとっては、収益の一部を任天堂に持って行かれるので、他社のゲームを実況するよりも明らかに損。
数多あるゲームメーカーの中で、こんな奇妙なことをやった企業は、他に無いでしょう。
4 立体視へのコダワリ(バーチャルボーイ)

1995年、任天堂は、ゲーム機の異端児とも呼ぶべき新商品を発売しました。
それが、バーチャルボーイ。
ゴーグルのような本体のディスプレイを覗き込むことで、ゲーム画面を立体視で捉えられるのが最大のウリ。
しかしながら、赤色だけで構成されたゲーム画面は大変不評で、数分間遊んだだけで目が疲れ、数十分も遊べば頭痛がしてくるとまで言われる始末。
とあるゲームショーで、スティーブン・スピルバーグ監督がこのバーチャルボーイで遊んだ際、
「カラー映像だったらもっと良かったのに」
とコメントしたのですが、それに対し、バーチャルボーイの生みの親である横井軍平氏は、
「あー、この人は普通の人だな……」
と、ちょっとガッカリしたとか。
残念なことに、ほとんどのプレイヤーはその「普通の人」だったため、バーチャルボーイは派手に失敗しました。
発売開始から1年と経たずして、新品の本体と多数のソフトをセットにし、数千円で投げ売りするショップも珍しくなかったとされています。
5 アニバーサリーへのコダワリ(スーパーマリオ35周年)

マリオ誕生から35周年を記念して、昨年から任天堂はいくつかのキャンペーンを行ってきました。
そして、それらのキャンペーンの終了が迫ってきています。
具体的には、「ゲーム&ウォッチ(スーパーマリオ仕様)」の製造、『SUPER MARIO BROS.35』のサービス、『スーパーマリオ3Dコレクション』のパッケージ版製造及びダウンロード版の販売が、それぞれ2021年3月31日で終了します。
特定の商品を期間限定で販売するというのはよくあることですから、それ自体は別に奇異な話ではありません。
しかし、多くの人を困惑させているのが、『スーパーマリオ3Dコレクション』のダウンロード販売までもが、3月いっぱいで終了してしまうという点。
これについて、Nintendo of Americaが出したコメントによると、あくまで「アニバーサリー」としての販売であることを重視しているからだとか。
35周年の記念として販売しているものを、いつまでも購入可能な状態にしていては、記念としての意味合いが薄れてしまう、ということなのでしょう。
もっとも、これがあくまで表向きの理由であるのは明らか。
本音としては、期間限定にすることで、消費者の購買意欲を煽りたいのだと思われます。
ただ、希少価値を利用したこういう販売戦略は、下手をすれば消費者の不満が増大する結果となり、逆効果になりますが……。
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番外編 任天堂の最大の判断ミスと言えば……

任天堂の長い歴史において、最も致命的な判断ミスとされているものが一つあります。
それは、任天堂ハードにとって最大のライバルであるプレイステーションを生むことになったきっかけが、他ならぬ任天堂自身であるということ。
もともと、任天堂は、スーパーファミコンの成功後、ソニーと共同で、CD-ROMを採用したゲーム機の開発を進めていました。
その名も、「Play Station」(今の「PlayStation」と違い2語)。
しかし、ゲーム業界でソニーに主導権を握られることを途中から懸念し始めた任天堂は、オランダのフィリップス社と提携することに路線を変更。
これにより顔に泥を塗られたソニーは、独自にゲーム機の開発を続行し、プレイステーションを発売しました。
ご存知のとおり、その後、プレステは世界中で驚異的にシェアを広げていき、ややオーバーキル気味に任天堂へのリベンジを果たしたのです。
一般的に、任天堂のこの判断は、サッカーでオウンゴールを数千回決めてしまうくらいに酷いものだったと評価されています。