こんなもん放送できるか!
若い世代を中心にテレビ離れが進んでいるというのは、かなり前から言われ続けています。
YouTubeやNetflixなどの強力なライバルと闘うためには、テレビ局はより独創的なアイデアで番組作りをする必要がありそうです。
とは言っても、やり過ぎは禁物。
あまりに奇抜な内容だと、色々と問題が生じる危険性もありますから。
〈originally posted on January 26,2018〉
1 罵倒されまくってからの整形手術
アメリカで2002年から約5年間放送されていた『エクストリーム・メイクオーバー』という番組は、一般応募者の中から選ばれた人が、整形手術やエクササイズなどによって外見的に大変身を遂げるというのがその内容です。
本人の恋人や家族には変身の進捗状況は一切知らせず、変身が完了してからようやくお披露目。
別人に生まれ変わった本人がスタジオに登場すると、観客席から驚きの声が上がります。
もうお気づきでしょうが、こういう番組の企画自体は珍しくなく、日本でもたまに放送されています。
しかし、この番組が普通でなかったのは、倫理的に許しがたい演出を強行していたことにあります。
番組が変身させる対象としてデリース・ウィリアムスという一般人女性が選ばれたとき、番組プロデューサーは、彼女の家族にカメラの前でデリースの外見を徹底的に罵るよう強要しました。
プロデューサーとしては、是が非でも変身せねばならない状況にデリースが置かれていることを強調したかったのでしょう。
しかし、デリースは整形手術を土壇場でキャンセル。
この予定外の展開は、さらなる悲劇を生みました。
番組の演出のためとはいえ自分の姉に罵言を吐きまくったことで、デリースの妹は、良心の呵責に耐えきれずに自らの人生を終わらせたのです。
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2 ゴーストタウンに40人の子供を放置
『はじめてのおつかい』といえば、人生初のおつかいミッションをこなすチビッコたちをカメラマンがストーカーのように追跡する感動の人気シリーズ。
子供だけに何かを任せるというのは予想外のハプニングが付き物ですから、視聴率が高いのも頷けます。
では、いっそのこと何もかも子供たちに任せてしまったらどうか。
それを実際にやってしまったのが、2007年にアメリカで約3ヶ月間放送された『キッド・ネイション』です。
8歳から15歳までの子供を40人集め、ニューメキシコ州の砂漠にあるゴーストタウンに彼らを送り込み、そこで自分たち独自のコミュニティを形成させるというのが番組の内容。
彼らの生活を大人が監視することはほとんど無く、子供たちは何をどうしようと自由です。
この時点で嫌な予感しかしないですが、やはり次から次へとトラブルが発生しました。
ラベルの張られていない謎のボトルが放置されているのを見つけた子供が、それをエナジードリンクか何かだと勘違いして飲んでしまったのですが、中身は何と漂白剤でした。
しかも、漂白剤をゴクッといってしまったのは全部で4人。
そして、調理の最中に火傷を負う子供も出てきて、このままではシャレにならない空気が漂い始めます。
その後、番組が打ち切りになったのは当然かもしれません。
3 参加者を最大限こき使うヤラセ番組
どんな企画の番組にせよ、一回の放送分を完成させるには、多くのスタッフの労力が必要です。
しかし、その大変な作業の大半を一般参加者に丸投げしてしまう凄い番組があります。
1999年からアメリカで放送されている長寿番組『ハウス・ハンターズ』です。
新居を探しているカップルや家族が、不動産屋とともに3つの物件を見て回り、最終的に転居先に選んだ家に実際に引っ越します。
その2ヶ月後、番組スタッフが住み心地などの感想を聞く、というのが大体の流れ。
面白いかどうかは別として、内容的に大きな問題は無さそうに思えますが、実は問題大アリです。
というのもこの番組、全てが「ヤラセ」なのです。
今の説明のどの辺りからがヤラセなのかというと、「新居を探している……」からが既にウソです。
実際は、新居を探す必要など全く無い人が、自分が今住んでいる家に、あたかも引っ越して来たかのように装うだけ。
何より恐ろしいのは、選択候補となる他の2つの物件は、参加者が自分で探さねばならないところ。
番組側は何もしてくれません。
不動産業者に協力してもらえれば何とかなりそうですが、そう上手くはいかない場合もあります。
ある参加者は、仕方なく友人に頼んで撮影の間だけ家から出ていってもらい、無理矢理「空き家」状態にしたとか。
参加者にここまでさせる番組も珍しいでしょう。
そして意外なことに、プロデューサーは、番組がヤラセであることを事実上認めています。
4 彼女のいない男たちを絶望させる「美女」
2004年2月にイギリスで放送された『ミリアムに首ったけ』という特番は、「テレビ史上最も残酷な企画」と批判された伝説の番組です。
21歳の美人メキシコ人モデルであるミリアムとデートする権利を得るため、6人の独身男性が様々な試練で競い合うというのがその内容。
見事にミリアムから勝者に選ばれた参加者は、賞金をゲットした上で、ミリアムと二人だけのラブラブ旅行が待っています。
彼女のいない男にとっては正に夢のような企画。
ところが、勝者となったトム・ルークという男性は、「ある事実」を知って悪夢を見るハメになりました。
勘の良い方ならもうお分かりかもしれませんが、実はミリアムはもともと「男性」として生まれたモデルなのです。
豊胸手術のおかげもあってスタイルは抜群だったものの、大事な部分の手術はまだでした。
ミリアムとの甘い時間を期待していたルークにとって、これはかなりショックでしょう。
彼はその後、賞金も旅行も放棄し、他の参加者5名とともに番組プロデューサーを相手取って提訴。
放送局側が和解金を支払うことで決着が付きましたが、番組自体はオンエアーされています。
5 必ず振り出しに戻るダイエット
2004年から2016年までアメリカで放送されていた『ザ・ビッゲスト・ルーザー』という番組は、現在でもドイツやスペイン、ロシアなどで独自のバージョンがオンエアーされています。
内容は、一言で表せばダイエット番組です。
大量の脂肪を抱えてしまい、体型的に「負け組」となった参加者たちが、鬼トレーナーに罵倒されながらジムで地獄のようなトレーニングに耐え、ひたすら減量に励みます。
そして、スケジュール最終日までに最も体重を落とした者には賞金(と、スリムな体)が与えられるのです。
番組の方向性自体は間違っていませんし、狂ってもいません。
しかしこの番組には、ある残酷な現実があります。
それは、見違えるほどに痩せた参加者たちのほぼ100%が、放送終了後にリバウンドして元の体型に戻ってしまうということ。
その原因は、常軌を逸した過酷なトレーニング。
涙を流しながら、時には嘔吐するまで激しく肉体を酷使する特訓を乗り越えてきた参加者たちは、元の日常生活に戻った途端、えも言われぬ開放感に浸ります。
どれだけ食べても、家で何時間ゴロゴロしても、誰にも何も言われないのです。
この状況で、食べるなという方が無理な話でしょう。
さらに悲しいことに、トレーニング期間中、彼らは仕事を休んで丸一日ダイエットだけに専念するのですが、その間の時間と労力の大半が無駄になるのです。
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6 来た!見た!結婚した!(そして離婚)
2016年からアメリカで放送されている『マリード・アット・ファースト・サイト』は、一目見て結婚を決めるという、一目惚れならぬ「一目婚」を実現する番組です。
まず、心理学者や社会学者などの専門家のアドバイスを参考にして、独身の一般応募者の中から最適なカップルの組み合わせが3組作られます。
そうして選ばれた6人の男女は、番組収録の当日に教会に集められ、そこで初めて自分の相手となる人を目にするのです。
3組のカップルは、この時まで互いに相手のことについて一切情報を持っていません。
そして、一目見た瞬間にその相手を生涯の伴侶として双方が認めれば、結婚成立。
そのまま結婚式に突入です。
無事に結ばれたカップルは、新婚旅行を終えた後、6週間共に生活します。
ここで改めてそのカップルは、結婚を継続するか、離婚するかの選択を迫られるのです。
執筆時点でこれまでに15組のカップルが参加しており、驚くことに、そのうち10組は初めて会った日に結婚しました。
ただし、現在も結婚状態が続いているのは3組だけで、残りはすべて離婚しています。