「何だこのゲーム。超クソゲーじゃねーか」
「・・・・・許せん。訴えてやる」
自分の買ったゲームがあまりにつまらなくて、コントローラーを床に叩きつけたくなった人はいるかもしれませんが、そのメーカーを訴えようとした人はまずいないでしょう。
しかし、それ以外の理由でなら、実際にゲーム会社を訴えた人はいます。
ゲームそれ自体に重大な欠陥があるというわけでもないのに、ゲーム会社というのは時に訴えられてしまうのです。
〈originally posted on August 25,2017〉
1 ドンキーコング
現在、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにおいて、「SUPER NINTENDO WORLD」なる巨大エリアが人気を博しています。
マリオカートを体験できるアトラクションなど、ゲーム好きにはたまらないアトラクションがてんこ盛り。
任天堂といえば、もちろんマリオだけでなく、ドンキーコングやゼルダ、カービーといった作品も有名です。
そして、ドンキーコングと言えば、かつてユニバーサルスタジオは任天堂を訴えたことがあります。
宮本茂氏が考案したドンキーコングというキャラクターとそれがピーチ姫をさらうという設定が、ユニバーサルが著作権を持つ映画『キングコング』をパクっているというのが訴訟の理由。
確かに、『キングコング』の中では、ヒロインのアンをコングが引っつかんでエンパイア・ステート・ビルに登る有名なシーンがあり、これは初代『ドンキーコング』の設定とかなり似ています。
この点だけを見れば任天堂は分が悪いですが、しかしユニバーサル側には決定的な落ち度がありました。
実は、最初に『キングコング』という映画を制作したのはRKOという会社で、1976年にユニバーサルがそれをリメイクしたとき、RKOとの間で著作権を巡って訴訟になったのです。
その時、ユニバーサルは、『キングコング』は公有財産(パブリック・ドメイン)であるから、著作権侵害にはあたらないと主張していました。
任天堂がこの事実を見逃すはずはありません。
ユニバーサルは、過去に自分たちが防衛策として主張したのと全く同じことを、被告人である任天堂から主張されてしまったのです。
結果は、ユニバーサルの敗訴。
「最強法務部」を持つと言われる任天堂の歴史は、ここから始まったのかもしれません。
【スポンサーリンク】
2 モータル・コンバット
1997年、米国コネティカット州で、ノア・ウィルソンという13歳の少年が、親友にキッチンナイフで胸部を刺されて亡くなりました。
ノアの母親は、この悲劇を生んだ原因はその親友ではなく、彼が遊んでいたビデオゲームであると信じるようになります。
そのゲームの名は『モータル・コンバット』。
かなり個性的なキャラクターが登場する格闘ゲームで、ありえないほど残虐なやり方で敵にトドメを刺すのが特徴です。
事件を起こした少年は、このゲームに異常なほどハマっていました。
特に気に入っていたのが、サイラックスというロボット忍者のキャラクター。
サイラックスに自分を重ね合わせた少年が、ゲームと現実との区別がつかなくなった末に犯行に及んだとノアの母親は考え、ゲームを制作したミッドウェイ・ゲームズを訴えました。
しかし、裁判所はゲーム会社側の権利を重視し、母親の敗訴となっています。
3 フォールアウト4
〈名作です。やったこと無いけど〉
『フォールアウト』シリーズは、核戦争後の地球を舞台にしたRPGで、1作目が発売されてから20年経った今も根強い人気を誇っています。
プレイヤーの行動の自由度が非常に高く、どのようにゲームを進めていくかはその人次第。
戦闘を極力避けていくことも出来ますし、逆にバトルに明け暮れる日々を過ごすことも可能。
このような点から、かなり中毒性の高いゲームとなっています。
ロシアのクラスノヤルスクに住む28歳の男性も、このゲームの最新作である『フォールアウト4』にハマり過ぎて、完全にそれが生活の一部になっていました。
3週間ぶっ通しでゲームをやり続た結果、健康を害し、結婚生活は破綻し、友人を失い、トドメに職を失ったのです。
誰がどう見ても自分の過ちなのですが、その男性は、ゲームを制作したベセスダ・ソフトワークスを訴えました。
ここまで中毒性が高いゲームであれば、それを警告文として表示しておくべきだったと彼は主張し、損害賠償として7000ドルを要求。
それにしても、全てを失ってしまったにしては、7000ドルというのはかなり控えめな請求額ですね……。
4 キルゾーン・シャドーフォール
〈傑作です。やったこと無いけど〉
2013年にソニー・コンピュータ・エンターテインメントから発売された『キルゾーン・シャドーフォール』は、1080pの解像度で動作するというのが一つのウリでした。
少しでも美麗な画面でゲームを楽しみたい人にとっては、解像度は重要な要素でしょう。
ところが、このゲームはシングルプレイヤーとマルチプレイヤーのそれぞれのモードで描画方法が若干異なっていました。
具体的には、マルチプレイヤーの方では「時間相関再射影」という技術が使われていたのです。
この用語が何を意味するのか僕には正直サッパリですが、おそらくシングルプレイヤーの方では「元から完全な1080p」で描画され、マルチプレイヤーの方では「ちょいと下駄を履かせた1080p」で描画されているのだと思われます。
ザックリ言ってどちらも抜群に画面が綺麗なわけですから、普通のユーザーならそれほど気にならないでしょう。
しかし、この僅かな違いに我慢がならない人がいたのです。
ダグラス・ラドアという男性は、ゲームのパッケージには「1080p」と表記してあるのにこれはどういうことだ、詐欺ではないかと憤慨してソニーを訴えました。
賠償金の請求額は驚きの500万ドル。
そして裁判は、原告の請求棄却という、何の驚きも無い結果に終わりました。
5 リネージュ
『リネージュ』は、韓国のエヌ・シー・ソフトが開発し、日本でも人気のあるオンラインRPGです。
あるとき、64歳の韓国人女性が、このゲーム内でゲットした超激レアの剣を強化しようとしました。
しかし、残念ながら強化は失敗。
それと同時に剣は消滅。
この手のオンラインゲームをやったことが無い人にとっては、武器の強化に失敗しただけでその武器自体が消滅するのは理解に苦しむかもしれません。
実はそこには運営側が儲けるための仕組みがあるわけですが…。
それはさておき、彼女はこの失敗を単に運が悪かっただけと割り切ることが出来ませんでした。
何故なら、その剣はリアルマネーで28000ドルもの価値があったからです。
そこで彼女は、ゲームの開発元であるエヌ・シー・ソフトに剣を復活させるように要求。
彼女の話によると、その超激レア武器を強化してしまったのは単なる操作ミスによるもので、本当は全く別の武器を強化するつもりだったとか。
だから元に戻してくれ、と。
当然のごとく、エヌ・シー側はこの要求を拒否。
これを受けて彼女は訴訟に踏み切ったのですが、結果は敗訴となりました。
ちなみに、エヌ・シー・ソフトは、先ほどの『フォールアウト4』裁判と同様に、このゲームが止められなくなったハワイ在住の男性からも訴えられたことがあります。
その男性は毎日11時間をこのゲームに費やし、総プレイ時間は2万時間を超えていたとか…。
【スポンサーリンク】
6 グランド・セフト・オート
2003年、米国アラバマ州で、デヴィン・ムーアという少年が自動車の窃盗容疑で勾留されている最中、彼は警察官から銃を奪って発砲し、これにより2人の警官を含めた3人が亡くなりました。
その後、警察署のパトカーを奪って彼は逃走しますが、すぐに逮捕されます。
捕まったとき、彼は平然とこう言い放ったそうです。
ムーアは、『グランド・セフト・オート(GTA)』シリーズにハマっていました。
自動車を盗んで警官を撃つといった彼の犯行は、正にこのゲームの主人公を地で行くようなもの。
また、自分が犯してきた犯罪行為について、彼はそのイロハを全て『GTA』から学んだとか。
ムーアは後の裁判で死刑を宣告されましたが、この事件の余波はさらなる訴訟を生むことになります。
世に溢れるビデオゲームを目の敵にする弁護士に、ジャック・トンプソンという人物がいました。
彼は、凶悪犯罪の原因となっているのは暴力性の高いビデオゲームであると信じていたのです。
そして、ムーアに殺された被害者の遺族に対しソニーへの訴訟を提案し、その弁護を担当することに。
悪影響があるのを認識していながら未成年者に『GTA』を販売し続けたソニーにも責任の一端があるというのがその主張。
しかし、この訴訟はソニーの勝訴に終わりました。
さらに、トンプソンは複数のゲーム会社に対してこの手の訴訟を起こしまくっていたため、後に法曹界から追放されたのです。