犯罪を扱ったハリウッド映画によく見られるウソの数々をご紹介します。
主人公が凶悪な犯罪者を追い詰め、ピストルやマシンガンでドンパチやった後、最後に(何故か)建物が丸ごと大爆発。
こんなド派手は映画はハリウッドならでは。
邦画ではまずありえないですね。
ところが、そういった映画の中には現実とはかけ離れたウソが含まれていることも珍しくないのです。
今回はそんな、映画に隠されたウソを暴いていきます。
なお、この記事にはそういったウソを含む映画を非難するような意図は全くありません。
むしろ、多少のウソがあっても映像的に面白い方が映画としては正解でしょう。
〈originally posted on June 18,2016〉
1 知能の高い連続殺人犯
『羊たちの沈黙』に登場する猟奇的殺人鬼ハンニバル・レクターに代表されるように、映画の中における連続殺人犯は頭脳明晰で狡猾なイメージがあります。
危険人物であることは周りから決して悟られず、自分の立てた計画を忠実に実行して確実に標的を仕留める。
しかし、実際の彼らは決して頭のキレる人間ではないようです。
2600人を超える連続殺人犯に対して行われた研究によると、彼らの知能指数の平均は約95でした。
実年齢相応の知能を持っている場合の数値が100ですから、あまり賢いとは言えません。
実際、彼らの中には自分と簡単に結びつくような証拠を事件現場に放置したり、あるいは自ら警察に送りつけたりしてアッサリ逮捕された者が少なくないのです。
ただ、連続殺人事件は通常の殺人事件に比べると、捜査が難しい面があるのも事実。
しかしこれは、犯人の頭脳が捜査機関を出し抜くからではなく、被害者の人間関係から容疑者を割り出しにくいのが原因なのです。
2 サイレンサーで暗殺
スパイがターゲットを銃で暗殺するときに必ずといっていいほど使うのが「サイレンサー」です。
銃身に取り付けるだけで発射時の音が「プシュッ」という感じでほぼ無音になります。
……というのはあくまで映画の中での話。
実際のサイレンサーは決して「無音」にしてくれるわけではありません。
例えば、発射時に140~160デシベルの音が出る銃にサイレンサーを取り付けると、それが120~130デシベルにまで下がります。
すなわち、20~30デシベルだけ音を小さくするに過ぎません。
それでも無いよりマシではないか、と思われるかもしれませんが。
この動画のように、サイレンサーを付けてもハッキリとした発射音が出ます。
周りに気づかれることなく引き金を引くのはまず無理でしょう。
そうなると、サイレンサーは一体何のために存在するのかという疑問が生じます。
実はサイレンサーは、映画でよくあるような静まり返った室内ではなく、ある程度騒がしい屋外でこそ威力を発揮するのです。
そういった状況では、数十デシベル音が小さくなっただけでも、周りの騒音のせいでどこから銃を撃ったのかが特定しにくくなるわけです。
3 超天才ハッカー
厳重なセキュリティを突破して企業や政府のサーバーに保管されたデータベースにアクセスし、機密情報を取り出す。
映画に出てくるハッカーたちは、天才的な頭脳と卓越したプログラミング技術で凄いことをやってのけているように描かれます。
彼らは皆、中学生くらいから毎日のようにパソコンにかじりついて腕を磨いているイメージさえありますが……。
しかし、これも現実のハッカーの在り方とはかなり違います。
ハッカーになるための敷居は意外なほど低く、インターネットやパソコンに関する知識が何も無いド素人でも、プロに教わることでわずか数週間あればハッキングの基礎を習得でき、半年もあれば一人前のハッカーとしてデビューできるのです。
その理由の一つは、ハッカーが使う攻撃手段が50種類程度しかなく、それらをマスターすれば企業のウェブサイトなどの脆弱性は簡単に発見できるようになるから。
よって、複雑な理論を山ほど学習する必要などは無いのです。
もちろん、ハッカーになるのがそう難しくないとは言っても、ハッカーの道を選んだ人の全てが犯罪に手を出すわけではありません。
彼らの多くは企業から依頼を受け、そのウェブサイトに含まれるセキュリティ上の問題点を見つけ出して報告することで報酬を得ているのです。
4 銀行強盗で大金ゲット
銀行の前に一台のバンが停まったかと思うと、いきなり銃を持った覆面の男たちが店内に流れ込み、巨大な金庫から札束の山をバッグに詰め、わずか数十秒で作業を終わらせて逃走。
しかし、実際の銀行強盗でこのように札束をバッグに詰めることはまず無いのです。
現金が保管されている金庫は、開けるのに非常に複雑な過程を要することでセキュリティが維持されています。
つまり、警察が来る前に金庫を開けられる可能性はほぼゼロ。
その証拠に、2010年にアメリカで行われた調査によると、銀行強盗事件の被害額は一件あたりの平均が7500ドル(約78万円)でした。
これは、金庫からではなく、行員を脅して奪った金と考えられます。
5 防弾チョッキで安心
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の冒頭で、エメット・ブラウン博士(ドク)がテロリストからしこたま銃弾を浴びて倒れるシーンがあります。
しかし、過去にタイムスリップしたマーティから受け取った手紙によって自分の運命を知っていたドクは、予め防弾チョッキで身を守っていたおかげで一命を取りとめます。
ところが、これを現実の世界に引き直して考えると、残念ながらドクはいずれにしても即死していた可能性が高いのです。
通常の防弾チョッキはピストルの弾丸に対しては効果がありますが、テロリストが使うようなアサルトライフルなどに対してはほとんど無力。
至近距離で撃たれた場合はなおさらです。
もちろん、そういった銃器にも対抗できる頑丈な防弾チョッキもありますが、もはやそれはチョッキというよりは「アーマー」という感じで、重さが約15kgもあるという代物。
銃犯罪の多いアメリカにおいてさえ、アサルトライフルのような戦闘用の武器が使用されるのは銃犯罪全体の1%にも満たないので、そのようなアーマーに身を包む警察官は一部にとどまるようです。
6 とにかく何でも大爆発
アクション映画のクライマックスといえばやはり爆発炎上シーン。
主人公が犯人と一騎打ちになるような場面では何かにつけて爆発が起こります。
映画の中では特に車が爆発して吹っ飛ぶことが多いですが、本当にそんな簡単に爆発するのでしょうか。
2007年に専門家によって行われた実験によると、火のついたタバコをガソリンに数回落としても引火することは無かったそうです。
また、車のガソリンタンクに銃弾が当たって爆発するシーンもよくありますが、実際には弾丸がガソリンタンクを通過するだけでは爆発は起きないのだとか。
もちろん、複数の条件が重なれば爆発する可能性もあるのでしょうが、少なくとも普通のピストルの弾が当たったくらいでドカンと宙を舞うことは無いでしょう。
ちなみに、敵からの銃弾の雨を主人公が車のドアを盾にして一時しのぎするシーンをたまに見ますが、あれは現実にはありえません。
通常の車のドアであれば、いとも簡単に銃弾が通過するからです。