じわりじわりと我々はアホになっていく運命なのです。
漫画やテレビ、ビデオゲーム。
子供の頃、こういったものにかまけていると頭が悪くなると親から言われたことのある人もいるのではないでしょうか。
親としては、家庭学習の習慣を身に付けさせるという狙いがあるのでしょう。
そして、子供に少しでも真面目に勉強させようとする親から目の敵にされるのは、漫画やテレビなどに限りません。
僕が小学3年のとき、毎日のように一緒に遊ぶ親友がいたのですが、ある日の下校時、彼から突然言われたことは今でも鮮明に記憶しています。
「あのさ、俺のお母さんが、お前とはもう遊ぶなって言ってた」
「お前と遊ぶと、頭が悪くなるからって……」
〈originally posted on April 11,2018〉
1 マルチタスク
皆さんの周りに、次のようなことを自慢げに言う人はいないでしょうか。
「俺ってさ、マルチタスクをこなすのが得意なんだよね。
3つか4つくらいの仕事だったら余裕で同時に出来るし、その方が効率的じゃん。
俺に言わせれば、一度に一つのことにしか集中できない人って、本気で仕事する気あんのって感じ」
こういうことを言っている人には申し訳ないですが、これはあまり説得力のある主張ではありません。
というのも、本来人間の脳はマルチタスクに向いておらず、基本的に一度に一つの仕事をこなすことしかできないからです。
では、マルチタスクが得意だと吹聴する人の脳内では何が起きているのか。
実は、処理すべき複数の作業の中から、意識を集中する対象を素早く切り替えているだけです。
本当に「同時に」作業をこなしているわけではありません。
これに対して予想される反論として、「ほぼ同時に」作業を進行させられるのであれば、それをマルチタスキングと呼んでも問題は無く、やはりその方が効率的だという主張が考えられます。
しかし残念ながら、これも真実は逆です。
アメリカのスタンフォード大学で行われた実験において、同時に複数の作業を並行して行うグループと、単一の作業だけを集中して行うグループとで、作業の結果にどのような違いが出るかを調べました。
すると、マルチタスクを行ったグループの方が、出来が悪かったのです。
マルチタスクの弊害はそれだけではありません。
イギリスのロンドン精神医学研究所の実験によれば、マルチタスクを行っている最中、その人の知能指数は、平均で約10ポイントも下がることが明らかになっています。
この数値は、タバコを吸ったり、睡眠時間を削ったりしたときに低下する割合と同じです。
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2 都会に住む
仮にあなたが、恋人と一緒に田舎に住んでいて、将来は二人で自然に囲まれながら結婚生活を送りたいと思っているとしましょう。
しかし、その恋人が突然上京したいと言い出し、あなたは内心それに反対している。
こんなとき、どうするべきか。
簡単に解決できる問題ではないですが、とりあえずその相手にこう言っておきましょう。
アメリカのミシガン大学で行われた研究によって、都会の人混みの中を歩くだけでも、人間の記憶力・注意力・学習能力などに悪影響をもたらすことが分かりました。
先ほど、人間の脳はマルチタスクには向かないという事実をご紹介しましたが、それが正に、人混みの中を歩くだけで脳力が低下する原因なのです。
都会の雑踏の中を歩いていると、視覚・聴覚・嗅覚に、膨大な量の情報がひっきりなしに飛び込んできます。
しかも、それらの情報を処理しつつ、人や車にぶつからないように注意を払って歩かねばなりません。
マルチタスクが苦手な脳にとっては、もはや拷問といってもいい状況です。
その結果、我々の脳は疲弊し、記憶力などが低下。
興味深いことに、このとき自制心も弱くなってしまうそうです。
大勢の客で賑わうショッピングモールなどを歩いていると、思わず衝動買いしたり、体に悪いと分かっていながらファストフードを食べてしまうことがあるのは、これが原因ではないかとも言われています。
一方、植物が生い茂った自然の中を歩くと、脳のパフォーマンスが上がります。
そして驚くべきことに、実際に都会や自然の中を歩かずとも、それらの写真を見ているだけで、ある程度同様の効果があるのだそうです。
都会に住んでいる人は、植物園で撮られた写真などをスマホの壁紙にしておくといいかも知れません。
3 長時間通勤
都会に住むとアホになるのなら、郊外に住めばよいということになります。
しかし、郊外は交通の便がそれほど良くないため、車での長時間通勤を余儀なくされる可能性が大。
そして悲しいことに、この長時間の運転も、人間をアホにさせる一因なのです。
イギリスのレスター大学が、50万人を対象に5年に渡って行ったリサーチの結果、毎日2時間以上を車での通勤に費やす人は、通勤にほとんど車を使わない人に比べ、知能指数のテストにおける点数が低くなることが判明しました。
その原因は、一言で言えば、刺激の無さです。
毎日毎日同じ道で、同じ時間帯に、同じような速度で車に乗っていると、運転自体が完全にパターン化し、刺激らしい刺激がありません。
そういう状態が毎日2時間も続くことで、知能指数が下がるのです。
また、毎日3時間以上テレビを観る人の脳にも、これと同じ影響があるとされています。
そして、テレビと言えば……。
4 低俗な番組
何となく、低俗なテレビ番組ばかり見ていると脳に良くなさそうなイメージがありますが、科学的に見ても、それは概ね当たっているようです。
オーストラリア人の心理学者であるマーカス・アッペル博士が大学生を対象に行った実験によると、何をやっても誤った決断ばかりするおバカな男の物語を読んだ後の被験者は、それを読まなかった者よりも、テストの結果が悪かったのです。
これはつまり、他者の頭の悪い行動に接すると、自分もその影響を受けてしまうということ。
そしてこの理屈は、芸人やタレントが馬鹿なことを繰り返すバラエティ番組を見た場合にもそのまま当てはまります。
正確な決断が要求される大事な試験の前日は、たとえ息抜きとしてであっても、低俗な番組を見るのは控えたほうが良さそうです。
5 ジャンクフード
ジャンクフードの食べ過ぎが健康に悪いのは常識ですが、高カロリー低栄養価の食べ物の恐ろしさはそれにとどまりません。
イギリスのブリストル大学の研究チームが、14000人の子供を対象に調査したところ、3歳のときにポテトチップスやポップコーン、キャンディなどのジャンクフードをよく食べていた子供は、8歳になったときにおける知能指数が比較的低いことが明らかとなりました。
一方、3歳のときにビタミンやミネラルを豊富に含んだ健康的な食事を摂っていた子供は、そういった悪影響が無いだけでなく、より知能指数の高い子供へと成長することも分かったのです。
面白いことに、こういった違いを生む原因となるのは、あくまで「3歳のとき」の食事です。
4歳以降でどういう食事を摂るかは、知能指数には直接の影響は無いのだとか。
では、なぜ3歳のときの食事が重要なのかと言えば、人間の脳は生後3年以内に最も速いペースで成長するからです。
高い栄養価の食事を摂って、優秀な頭脳を形成できる最後の年齢が、「3歳」なのです。
6 子供の尻を叩く
子供を躾けるとき、頭を叩くと脳に悪影響がありそうだから、代わりに尻をひっぱたくという親は珍しくないでしょうが、残念ながら結果はあまり変わりません。
アメリカのニューハンプシャー大学の研究によると、尻を叩かれて躾けられた経験のある児童は、そういう経験の無い児童に比べ、知能指数が3~5ポイント低いそうです。
より幼い時期に叩かれた場合の方が、数値の下がり方も大きいのだとか。
さらに、子供がそういった体罰を受けてから4年経ってもこの影響は残っていました。
尻を叩かれただけで知能指数が下がる原因として指摘されているのは、ストレス。
幼い頃に体罰を受けると、子供は心的外傷後ストレス障害(PTSD)に匹敵するほどのストレスを感じ、それが知能にもネガティブに作用するのです。
また、ピッツバーグ大学の研究によれば、赤ん坊が泣き始めたとき、母親があやすことなく、自然に泣き止むまでその子を放っておくといったことを繰り返すと、脳に恒久的なダメージを与える可能性があるそうです。
7 ミーティング
我々の多くは、日常的にグループで何かを話し合うということが避けられません。
社会人はもとより、学生であっても何らかのテーマについてディスカッションをする機会は少なくないでしょう。
そしてそういうとき、自分の本来の能力が発揮できず、何とも言えないイライラした感じを覚えた経験のある人もいるはず。
あの「イライラ」の原因は、ひょっとすると自分がアホになっている証拠かもしれません。
アメリカのバージニア・テック・カリリオン研究所が行った実験の結果、小さなグループで討論を行うとき、参加者の多くはその能力を十分に発揮できなくなることが分かりました。
その原因の一つは、我々が集団で討論を行うとき、目の前の議題について考えるだけでなく、周りの人たちとのコミュニケーションにも注意を払わねばならないので、集中力が分散してしまうからです。
もう一つの原因は、議論を行う上での自信。
例えば、しばらく議論を進めた結果、他の人の発言内容が、自分よりも優れていると感じた場合、そのグループ内で自分が有益な発言をするための自信が低下し、本来の能力を出せなくなるのです。
そして、ミーティングなどで能力が低下してしまうのは、男性よりも女性でその傾向が強いという結果が出ています。
しかしながら、このことは、ミーティングでは男性の方が女性より活躍できるということを意味しません。
何故なら……。
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8 男は女性の前ではアホになる
身も蓋もないことを言いますと、大抵の男は、女性の前では独りのときよりアホになります。
この衝撃の事実を発見したのが、オランダにあるナイメーヘン・ラドバウド大学。
同大学で行われた実験において、男性の被験者は、実験の最中に女性の監督者に見られていると知っただけで、被験者自身がその女性の姿を見なくても、脳の認識能力が下がることが分かったのです。
さらに、男性被験者は、これから或る女性に会ってもらうと告げられただけで、実際にはその女性に会わなくても、同様に認識能力が低下しました。
ちなみに女性の場合は、男性に見られていると思っているか否かに関わらず、その能力に特に変化は無いのです。
今から女性に会うのだと考えただけでアホになってしまうこの厄介な現象の原因については、まだ正確には分かっていません。
ただ、被験者は全て年齢的に若かったので、自分と女性との恋愛的な要素に意識が向いてしまったからではないかと考えられています。
この仮説が正しいとすると、男性がアホになってしまう条件は、自分の目の前にいる女性がその男性のタイプであること、或いは、まだ会っていない女性について、その相手との男女の関係を意識していること、と言えそうです。