クリエイターという肩書を持つ人はもちろんですが、そうでなくても、仕事上、何か良いアイデアを出さねばならないことはよくあります。
優れたアイデアは、厄介な問題を一挙に解決してくれることがありますし、結果として大きな利益をもたらすことも。
次から次へと独創的な発想が出来る人はどんな業界でも重宝されます。
しかし、何としてもアイデアを出す必要があるのに、全く何も思いつかない。
そんなとき、我々は焦ります。
焦って何とかアイデアをひねり出そうとします。
それでも出ない。
出そうで出ない。
まさにアイデアの便秘状態。
本当の便秘なら、下剤を飲むか、「オールブラン」を食べればズドーンです。
では、確実に良いアイデアが欲しいとき、我々は何に気をつければいいのか。
今回は、良いアイデアを得るためには、これだけはやってはいけない、というものをご紹介します。
〈originally posted on April 24, 2022〉
1 コーヒーを飲んでちょっと一息
なかなか良いアイデアが出ないとき、もうひと頑張りしようと一杯のコーヒーを飲む人は多いことでしょう。
しかし、こういう場合に飲むべきは、コーヒーではなく紅茶です。
北京大学の研究チームが2021年に発表した論文によると、紅茶を飲むことで、我々の創造性を引き上げることが出来ます。
その論文の元となった実験では、被験者を二つのグループに分け、一方には紅茶を、他方にはただのお湯を飲ませた上で、発想力が要求される課題に取り組んでもらいました。
すると、紅茶を飲んだグループの方が、より面白いアイデアが浮かぶ傾向が見られたのです。
さらに、思いつくアイデアの数も多いという結果に。
紅茶が発想力を高める原因は、紅茶に含まれるカフェインやテアニンが関係していると見られています。
これらの物質が、集中力を高め、さらに、気分をリラックスさせるのだとか。
つまり、アイデアを生み出すには最適の状態ということです。
余談ですが、この情報はリプトンの公式サイトでも紹介されています。
では、紅茶にこのような効果があるのなら、コーヒーはどうなのか。
これについては、アメリカのアーカンソー大学での研究があります。
それによると、コーヒーを飲むことは、問題解決能力を高め、目の前の仕事をこなすのに有用であるものの、アイデアを生み出す能力については、特に影響が無いそうです。
よって、コーヒーを飲むこと自体は何も悪くないのですが、今すぐに良いアイデアを出したいときには、紅茶を飲むべきでしょう。
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2 眠いのを我慢して頑張る
歴史上、アイデアを出すのに最も長けた人物の一人と言えるのが、発明王トーマス・エジソンです。
エジソンは、発明のアイデアがなかなか出ないとき、手でボールを握った状態で、よく居眠りしていたとされています。
これだと、完全に熟睡してしまう前に、手からボールが滑り落ち、床で音をたてた瞬間に目が覚めるのです。
発明王のこの習慣について、2021年、フランスのパリにある研究所が科学的に検証したところ、実に理に適った方法であることが分かりました。
我々は、入眠直後、眠りの浅い段階で、体の筋肉が弛緩し、脳内では最近の出来事が回想され始めます。
この「うたた寝状態」が、発想力を活かして問題を解く能力を、起きているときに比べて約3倍も引き上げるのだとか。
エジソンは、今から約100年前に、既にうたた寝に秘められた力を知っていたのでしょう。
まったく恐ろしい男です。
そんな天才の領域に我々が近づくのは容易ではありませんが、天才の習慣を真似ることは極めて簡単。
良い発想が出てこなくなったら、うたた寝をしてみましょう。
眠気を感じているときならなおさら。
「寝てる場合じゃないんだ!」などと言って頑張ると、かえって損です。
3 部屋にこもりきり
勉強にせよ仕事にせよ、行き詰まったときは気分転換が重要です。
デスクに向かっているばかりではなく、外の空気を吸うことで気分がリフレッシュすれば、良いアイデアも出やすくなるというもの。
これは誰もが経験的に知っています。
さらに、米国カリフォルニア州のサンタ・クララ大学の研究によれば、発想力アップにとって、屋外に出ること以上に大事なのは、ウォーキングです。
ウォーキングをすることで、発想力が最大で2倍になります。
しかもこの効果は、ウォーキングの後に再びデスクに向かってもしばらく持続するのだとか。
ということは、企画会議の直前に、会社の近くで少しウォーキングしておけば、会議がスムーズに進行するかもしれません。
4 専門書しか読まない
カナダのトロント大学での研究によると、普段から小説を読む人は、そうでない人に比べ、物事の考え方や決断の仕方に柔軟性があり、発想力も高いそうです。
ここで重要なのは、単純に「本を読む」ことが良いのではなく、あくまで「フィクションを読む」ことが良いのだということ。
よって、読書家であっても、フィクションは一切読まないという人にこの効果はありません。
小説を読むと、様々なタイプの登場人物の考え方や人生観に接し、読者はそれを追体験することになります。
このことが、読者の考え方にも柔軟性を持たせ、杓子定規な結論ではなく、型にはまらない答えを導きやすくするのだそうです。
研究者の話では、こういった効果は、小説を読んだ直後にも現れますが、やはり、日常的に小説を読んでいる人の方がその効果は大きいとのこと。
仕事でクリエイティブな能力が要求される人は、自分の専門分野の文献に目を通すだけでは、柔軟な発想が得られないかもしれません。
時には小説も読むようにしましょう。
5 音楽を聴きながらアイデアを練る
何らかの作業をするときに、好きな音楽を聴きながらだと仕事の効率が上がるのは、誰しも経験していることでしょう。
では、アイデアを絞り出さねばならないときにも、曲を流すことは効果的なのか。
好きな曲を聴いて気分が乗っている状態の方がアイデアを出すには良さそうですが、意外なことに、これは間違いなのだそうです。
それだけでなく、曲を聴きながらだと、かえってアイデアが出にくくなります。
イギリスにあるセントラル・ランカシャー大学が行った研究によると、一般的に信じられているのとは異なり、音楽を聴くことは、発想力を低下させる要因になるのです。
この事実は、その音楽が、歌詞のある曲か、インストゥルメンタルか、外国の曲か、などといったこととは無関係。
さらに、日常的に音楽を聴いて勉強するタイプの人で、好きな曲を聴いている方が気分が乗る、という場合でも、この結論は変わりません。
研究を主導したエマ・スレッドゴールド博士の話では、創造性が求められる仕事をする際は、図書館などの静かな環境が最適なのだとか。
良い案を出したいときは、音楽を聴くのは避けましょう。
6 デスクの上を整理整頓
デスクの上が常にキチンと整理されている人は、几帳面で、仕事もきっちりこなすイメージがあります。
そのイメージ自体は間違っていないでしょうが、しかし、面白いアイデアを生み出せるか、ということになると話は別。
アメリカのミネソタ大学での研究によれば、机上が雑然と散らかっている状態の方が、発想力が高くなる傾向が見られるのだそうです。
ちなみに、相対性理論で有名なアインシュタインも、散らかった環境を好む人だったとされています。
興味深い事実として、机上が整頓されていると、我々は、食べ物の好みがより健康的になり、他人に対して「太っ腹」になるのだとか。
細かい作業や計算などをするときは、デスク周りが整然としている方が仕事の効率が上がるでしょうが、常識にとらわれない考え方が必要なときは、多少だらしない環境の方が良いということになります。
7 みんなでブレインストーミング
一人より二人、二人より三人でアイデアを出し合った方が、良い解決策が得られる。
1942年に、アメリカ人のアレックス・オズボーン氏によって提唱された、このいわゆる「ブレインストーミング」は、現在でも様々な企業で採用されています。
多くの人にとって、これは大変効果的な方法のように思われることでしょう。
ところがドッコイなのであります。
2015年に刊行された応用社会心理学の学術誌によれば、ブレインストーミングは、一般に思われているほど効果的ではありません。
特に、出されたアイデアを書面にリスト化するような形ではなく、主に話し合いのみで会議を行う場合に、非効率的になります。
それは何故か。
その理由の一つは、「責任感の低下」です。
グループで案を出し合うということは、自分一人が積極的にアイデアを絞り出さなくても、他の誰かが出してくれる、という意識が生まれます。
これが、アイデアを出すモチベーションの低下につながるというわけ。
また、グループ内の人間関係や上下関係が、進んで発言することへの阻害要因になることも考えられます。
自分が何か提案しても、誰かに一蹴されてしまうのではないか。
自分よりも他の人の意見が優先されるのではないか。
こういった意識が、人によってはアイデアを発表するのを躊躇させてしまうのです。
昔、アイリスホニャヤマという企業のブレインストーミングの様子をテレビで観たことがあるのですが、若い男性社員が案を出した瞬間、目の前の先輩から「ハイそれ却下」と速攻で撃墜されていました。
さらに、発想力の高い人と低い人が同じテーブルで議論し合うことで、発想力の高い人の能力が、低い人たちのせいで足を引っ張られる可能性もあります。
最後に、グループの人数が増えるほど、一人あたりの出すアイデア数が低下することが、研究によって明らかになっています。
大人数で議論しているのに、一人が何個もアイデアを出していては、
「おいおい、これだけ人数がいるんだから、ちょっとは空気読め」
ということになりかねません。
こうして見ると、ブレインストーミングは、メリットよりもデメリットの方が目立ちます。
本当に実のあるブレインストーミングを実践するためには、上記のようなデメリットに十分配慮した上で行う必要がありそうです。
8 お酒を控える
締め切りまでに何か妙案を思いつかなくてはならないとき、ついつい根を詰めてしまいがちです。
お酒を飲んでゆったりくつろぐ気分になどなれないという場合もあるでしょう。
しかし、そういう時こそアルコールの力が物を言うのです。
オーストリアにあるグラーツ大学での研究によれば、適度なお酒は、発想力を高める効果があります。
歴史的に見ても、お酒は創作活動の強い見方でした。
アーネスト・ヘミングウェイなど、偉大な作家たちの多くはお酒を嗜んでいたとされています。
ただし、アイデアを練るのにお酒が効果的だとはいっても、いくつか注意点が。
まず、あくまで「適量」の飲酒であること。
ワインなら、多くてもグラス一杯程度です。
当然ですが、お酒が苦手な人が無理に飲む必要はありません。
また、一つのことに専念してテキパキとこなす必要がある仕事の場合は、お酒を飲むことで逆に作業効率が落ちてしまいます。
お酒の効果は、あくまで良いアイデアを生むためのものだと割り切りましょう。
9 険しい表情
思索に耽っているとき、我々の顔は、少し険しい表情になるのが普通です。
眉間に皺を寄せて一点を見つめ、腕組みしながらああでもない、こうでもないと思考を巡らせてヒラメキを待つ。
しかし残念ながら、これでは良いアイデアは出にくいのです。
アメリカのメリーランド大学が行った研究によると、人間は、目を細めていると発想力が低下し、逆に、眉を上げて目を見開くと、発想力が高くなります。
これは、脳への視覚情報が増えることで、物事を多角的に捉えて解決策を引き出そうとする傾向が強まるからだそうです。
よって、何か良いアイデアが欲しいときは、限界まで眉をギュイーンと上げて、『時計じかけのオレンジ』のあの有名なルドヴィコ療法みたいな感じで目をガバッと開きましょう。
きっと周りからは、
「え、何ちょっとコノ人ヤバいんだけど、キモいんだけど」
と思われるでしょうが、気にしてはいけません。
10 リモートワーク
次から次へと新種のウイルスが登場し、一向に終息する気配の無いコロナ。
コロナをきっかけにリモートワークを採用し、それが常態化した会社も一気に増加しました。
このことはウイルス感染防止という点以外にもメリットが多く、特に、都市部におけるリモートワークは、通勤地獄から逃れられることが大きな利点でしょう。
しかし、いいことばかりではありません。
2021年にマイクロソフト社が行った研究によれば、リモートワークによって、社員の創造性やコミュニケーション、チームワークが減退するのだとか。
その一因として、社内の各部署間で、円滑な意思疎通や、情報の共有などがしにくいという点が挙げられます。
異なる部署の人間と意見を交わすことは、面白い着想を得るきっかけになりうるのですが、リモートワークによってその機会が奪われてしまうのです。
また、これはあくまでマイクロソフト社に限った話ですが、リモートワークを採用したことで、社員の平均的な労働時間は、減るどころか、むしろ増えていたとか。
リモートワークは、だらだらと長くなりがちな会議の時間を短縮できるなどのメリットがあるのですが、実際にオフィスで対話することに完全に取って代わるものではなさそうです。
アイデア商品が売りとなっている企業の場合、リモートワークにばかり頼るのは避けた方がいいかもしれません。
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