チャリティーなのに最悪とはこれ如何に。
電話一本で少額の寄付ができる「ドラえもん募金」は、誰でも手軽に実行できることに加え、運営しているのがテレビ局ですから(一応は)信頼できるという点を考えると、チャリティーの手段としては非常に優れていると言えるでしょう。
もちろん、チャリティーの方法というのは他にも様々な形態があるわけで、お金よりも支援物資を送りたいという人や、現地に赴いてボランティア活動を行いたいという人もいます。
ただ、そういった方法は、単純に金銭を送る場合と異なり、状況によっては善意が仇となる可能性もあるので注意が必要です。
〈originally posted on July 14,2018〉
1 髪の毛の無い子供たちへカツラを
脱毛症や、火傷、癌などによって髪の毛が無い子供は世界に少なくありません。
そういう子供たちのために、散髪した際などに出る髪の毛を一般の人から募集し、それらを使ってカツラを製作するチャリティ組織が複数存在しています。
2013年、そんな組織の一つである「ロックス・オブ・ラブ」に対し、とある非営利団体が調査を行いました。
その組織のチャリティー活動が実際にどれくらいの成果を上げているのかを調べたところ、意外な事実が判明。
1年間に寄付される髪の毛の約8割は、単なるゴミとして処分されていました。
髪の毛が短すぎたり、染められていたり、或いは「白髪」だったりといった理由から、子供用のカツラに適さないものが大半を占めていたのです。
では、残りの2割の髪の毛を使えば一体どれくらいの数のカツラが製作できるのかというと、およそ2千個です。
ところが、ロックス・オブ・ラブが現に製作したのは300個程度。
責任者の話によると、カツラの注文がそのくらいしか無かったのだとか。
そして、カツラを作るのに使用されなかった分の髪の毛は、組織の運営費のために売却されていたのです。
寄付する側からすれば、自分の髪の毛がゴミとして焼却されるか、利益を上げるために売却されるか、或いはカツラが必要な子供のために利用されるかは、全く知る由もないということになります。
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2 誰もが買える安いメガネ
日本ではあまり見ないですが、かつてアメリカでは、スーパーや薬局などで、不要になったメガネを寄付するための箱が置かれていることがありました。
それらのメガネは開発途上国に送られ、経済的に厳しい生活を強いられている人たちでも買えるように安価なメガネとして再利用されるのです。
貧しい人でもメガネを掛けられるようにするという目的自体は何の問題もありません。
しかしそのために、要らなくなったメガネを寄付してもらうというのはほとんど意味をなしませんでした。
そもそも、メガネが不要になるのは、フレームが折れたり、レンズに傷が付いたりしたときですから、そういうものが寄付されたところで使い物になりません。
さらに、辛うじて使用に耐えうるメガネがあったとしても、レンズの度数やフレーム幅などの点から見て、そのメガネがぴったりフィットする人を発見するのは、宝くじに当選するくらいの低い確率です。
ある研究チームがこのチャリティについて詳しく調べたところ、集められた膨大な数のメガネのうち、再利用が可能なのはたったの7%でした。
しかも、その7%のメガネを見つけるためには多くのスタッフが必要ですから、費用もかさみます。
結局、メガネを寄付してもらうよりも、一からメガネを作った方がはるかに簡単で安上がりであることが分かったのです。
3 ホームレスとアメフトの意外な関係
アメリカでアメフトの大学対抗戦が行われる場合、大学が勝利したことを示すデザインが施された特製Tシャツが、試合の始まる前に販売されることがよくあります。
自分の大学を応援する人たちが、勝利を祈願してそのTシャツを着るわけですが、実際に試合に勝ったときはいいとして、負けてしまった場合は、言いようのない虚しさを醸し出すTシャツになってしまいます。
そういったTシャツは、発展途上国などに寄付されます。
そして、このチャリティーを一歩(悪い方向へ)進めた者がいました。
その男は専用のウェブサイトを立ち上げ、訪問者がそこでTシャツを購入すると、その商品が、購入者本人ではなく街のホームレスたちに手渡されるようにしたのです。
ホームレスの生活を支援する善良なサイトのように思えますが、そうとは言い切れない面がありました。
実はそのTシャツ、購入者が応援している大学の「ライバル校」のロゴがプリントされているのです。
そのTシャツをホームレスに着せることで、相手校を辱めようという狙いがあることは明らか。
当該サイトの運営者は、このTシャツ販売について、「不適切ではあるが、役には立っている」というコメントを出し、販売を続けていました。
しかし、批判の声が強まったため、後にサイトは閉鎖され、運営者は謝罪のコメントを公開しています。
4 お腹が空いたらドッグフード
2006年、約2年間にも及ぶ干ばつが原因で、ケニヤの一部の地域では農作物が壊滅的なダメージを受け、400万人を超える人々に影響を与える深刻な食糧不足に見舞われました。
この状況を見て、何とかせねばと立ち上がったのが、ニュージーランドでドッグフードのメーカーを経営するクリスティーン・ドラモンド。
彼女はケニヤに大量の支援物資を送ることを決めました。
その「物資」とは、ドッグフードです。
ドッグフードのメーカーだからドッグフード。
非常に分かりやすいですが、この支援物資は、家で飼われているペットに向けたものではなく、あくまで人間を助けるために送られたのです。
いくら食糧難だからといって、犬にやるエサを人間用に提供するのは、酷い侮辱であると捉えられても仕方がないでしょう。
当然ながらケニヤ政府は激怒し、この申し出を拒否。
これに対しドラモンドは、問題の支援物資はドッグフードの製法に近いプロセスで作られてはいるが、決してドッグフードそのものではなく、味も(人間が食べて)美味しいと反論。
しかし、仮に彼女の主張が真実だとしても、見た目がドッグフードであることに変わりはありません(ちなみに食べた人の話では、かなり不味かったとか)。
しかも、ドラモンドが支援物資の送り先として選んだ地域は、干ばつの被害をほとんど受けていなかったのです。
一体何がしたいのかよく分からないこの女性は、その後マスメディアから「ドッグフード・ウーマン」というニックネームを付けられています。
5 ケニヤはチャリティー受難の国(?)
ケニヤがチャリティーの被害に遭ったのはドッグフード・ウーマンの一件だけではありません。
1980年代にまで遡ると、ケニヤは世界各国から大量の衣類を寄付されていました。
もちろん、寄付する人の大半は善意から行っているのでしょうが、ここで重要なのは、発展途上国で生活する人たちは、基本的に自分が着る服くらいは普通に買えるということなのです。
にも関わらず、年間10万トン超の古着が海外からケニヤに流入し、激安で手に入る衣類が市場に溢れたことで、同国の繊維工業は凋落の一途をたどり、何千人もの失業者が出ました。
過剰な量の衣類が寄付される傾向はアフリカの他の国々にも広まり、その結果、12カ国で衣類の寄付の受け入れを禁止したのです。
6 役立たずのボランティア
2004年12月26日に発生したスマトラ島沖地震は、インドネシアやインド、スリランカなどの国々に津波による甚大な被害をもたらし、22000人以上が犠牲になりました。
被災地の様子がテレビなどで報じられると、世界各国からボランティアが集まったのですが、彼らの多くは或る重大な問題を抱えていました。
被災地で何をすべきか、という基本的なことについて、全くと言っていいほど分かっていなかったのです。
そういった人たちの中には、現地に到着するなり、作業そっちのけで他のボランティア・グループと場所の取り合いを始める者もいました。
そして、ようやく本来の目的のために動き出したと思ったら、後先考えない行動により、地元の人たちの復旧作業を台無しにする者たちも。
災害で船を失った漁師たちに対し、あるグループは何隻もの新しい船を寄贈したのですが、それらの4分の1以上は漁船としては全く使えないものでした。
別のグループは、タイで家を失った人々に対し、金属製の材料を使って家を建てましたが、年中蒸し暑い日が続くタイの気候を考えると、内部に熱がこもってしまうそのような家は、とても人の住めるものではなかったのです。
あまりにも役に立たないボランティアが多かったせいで、赤十字による効率的な活動が阻害される面もあったとされています。
ある専門家によると、このような「役に立たないボランティア活動」が起きるのは、特に国境を越えたボランティアでよく見られるのだとか。
現地の言葉を上手く話せない人が何かを手伝おうとしても、意思疎通が不十分になってしまい、作業がなかなか進まないのです。
さらに言えば、被災地でのボランティア活動には、状況にもよりますが、ある程度の「スキル」が要求されます。
そして、被災地によって不足している物資が異なるのと同様、必要とされるスキルも異なります。
ボランティア活動に参加することはもちろん重要ですが、自分の能力が活かせるか否かを見定めてから行動を起こす必要があると言えそうです。
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7 チャリティーを悪用する性犯罪者
1970年代、イギリスのTV番組で司会を務めていたジミー・サヴィルは、脊髄損傷の子供たちのため、ストーク・マンデヴィル病院に多額の寄付を行っていました。
その見返りとして、彼はいつでも好きなときに同病院を訪れて、監督者を伴わずに子供たちと触れ合うことを許可されたのです。
しかしこの時、病院側は、サヴィルがとんでもない性犯罪者であることを知りませんでした。
監督者がいないのをいいことに、彼は20年以上に渡って病室内で子供たちに性的虐待を行っていたのです。
さらに恐ろしいのは、病院側がこの事実に気づいてからも、サヴィルを野放しにしていた疑いがあること。
その理由は、おそらくは寄付金が失われるのを避けたかったからです。
サヴィルは何度か警察の捜査対象となっていますが、いずれの場合も証拠不十分により訴追を免れています。