今回は、ウェブサイトの墓場にご案内いたします。
画期的なサービスを提供するウェブサイトというのは、大抵は企業が運営を行っており、莫大な利益を上げていることもあります。
グーグルやアマゾンがその好例でしょう。
そういったサイトが突然消えてしまうことは、通常は考えられませんが、不運な条件が重なることで、サイトが継続できなくなったり、あるいは、サイト自体は残っているのに最早誰もその存在を覚えていないこともあるのです。
〈originally posted on July 19,2018〉
1 チャチャ(ChaCha)
スマートフォンが無い場合、最も困ることの一つは、外出先で、好きなときに調べものができないということでしょう。
目的地までのルートや、電車の時刻、天気予報など、必要な情報をすぐに引き出せないのはかなり不便です。
では、スマホが今ほどには普及していなかった時代、つまり、ガラケーがまだ現役だった頃、人々はどうしていたのか。
その答えの一つが、2006年にアメリカで始まった「チャチャ」というサービスです。
チャチャの公式サイトにアクセス(あるいは専用アプリを利用)して、質問を送信すると、答えが返ってきます。
検索エンジンと同じではないかと思われたかも知れませんが、質問に答えていたのはチャチャのスタッフ、すなわち人間です。
言わば、「人力検索エンジン」。
質問を受け取ったスタッフが、パソコンで答えを調べ、急いでそれを返信するという、ハイテクなのかローテクなのかよく分からない方法で成り立っていました。
誰でも無料で利用できるこのサービスは、アマゾン創設者であるジェフ・ベゾスも巨額の投資をするほど有望視されたものでしたが、スマホが普及し、「ググる」のが当たり前になるに連れて存在意義を失っていき、2016年にその役目を終えました。
ちなみに、チャチャという名前は、「検索」を意味する中国語の方言に由来しています。
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2 ネットスケープ
インターネットを閲覧するにはブラウザが必要なわけですが、かつてブラウザと言えば、インターネット・エクスプローラー(IE)とネットスケープの二つが主流で、互いにシェアを争っていました。
この「第一次ブラウザ戦争」は、ウィンドウズのパッケージにIEをバンドルして販売するという(強引な)手段により、マイクロソフトの完全勝利に終わります。
その結果、1990年代はIEがブラウザの世界標準になり、ピーク時には95%のシェアを占めていました。
しかし2000年代に入り、FirefoxやGoogle Chromeといった、高速で使い勝手が良く、スマホにも対応したブラウザが登場したことで、IEは一気に影が薄くなっていきます。
ところで、敗北したネットスケープは一体どうなったのかというと、不思議なことに、オリジナルの公式サイトは今でも存在しています。
アクセスしてみると、ホームページの冒頭で、「ハイパーリンク」が何であるかについての説明が。
文字の色が違うところをクリックすると別のページに移動できますよ、という具合に、今では当たり前のことをこの上なく丁寧に解説してくれています。
「最新のニュース」は1994年で更新が最後となっており、今となっては完全に時が止まったサイトです。
3 ヒート・ネット
現在、ゲームのダウンロード販売サイトで世界最大級の規模を誇っているのが、「Steam」です。
セールがある度に、一つ数百円程度の激安ゲームを購入してしまい、どう考えても遊ぶ時間の無い大量のゲームがライブラリに名を連ねている人は少なくないでしょう(ええ、私ですとも)。
Steamは世界中で利用されている巨大サイトですが、単純にゲームをダウンロードできるだけではなく、「Steam」というソフトウェアを使ってそれらのゲームを一括管理できるのが特徴です。
言わば、自分のパソコンの中にSteamというゲーム機が内蔵されているようなもの。
こんな画期的なシステムを考え出すアメリカ人はやっぱり凄いと思いたくなりますが、実はSteamが誕生する6年も前に、似たようなサービスを提供するサイトがすでに存在していました。
それが、1997年にサービスを開始した「ヒート・ネット」です。
しかも、これを作ったのは日本のゲームメーカーであるセガ。
毎月定額を支払うことで、セガやその他の人気メーカーのゲームが楽しめて、オンラインプレイにも対応していました。
当時としてはかなり革新的なサービスでしたが、たった3年で終了。
長く続かなかった理由は主に二つあります。
一つは、時代を先取りしすぎていたこと。
今から20年前のインターネット普及率を考えると、このようなサービスは少々早すぎた感が否めません(ちなみに、Steamが誕生したのは2003年)。
もう一つは、ヒート・ネット内で使える通貨(ポイント)の存在。
このポイントを使って、ゲームはもちろんのこと、雑誌やパソコンのパーツなども購入できたのですが、ポイントの増やし方に関して重大な欠陥がありました。
このポイントは、ユーザーがヒート・ネットに接続している時間の長さに応じて付与されるのです。
これにより、サービス開始からしばらくして、ゲームはやらずにとりあえずヒート・ネットに接続したまま放置しておく利用者が激増。
つまりユーザーは、特に何もしなくてもポイントがどんどん貯まっていったのです。
当然ながら、このことは会社にとって大きな損失になりました。
そして、この問題を根本的に解決できなかったことが一因となり、ヒート・ネットは2000年に終了。
諦めきれないセガは、新世代のゲーム機「ドリームキャスト」のためのオンラインサービスである「セガ・ネット」を始めましたが、ドリームキャストがコケてしまったため、セガ・ネットもまた短命に終わりました。
4 ヤフー・オークション
アメリカで最も人気のあるオークション・サイトとして有名なのは、1995年に設立された「eBay」です。
その3年後、eBayに対抗すべくヤフー・オークションが生まれました。
当時、今のグーグル並みの影響力を持つヤフーが始めたこのオークション・サイトは、広告収入だけで運営することで、出品に関わる費用の完全無料を実現し、そのことが一部のユーザーには強く支持されていました。
しかし、ライバルより3年も遅れてスタートしたサイトでもって強大なeBayと闘うのは少々無理があったようで、利用者は徐々に減少。
2007年には、アメリカや他の国々でほぼ全てのサービスを終了しました。
現在は、香港、台湾、日本でのみサービスが継続しており、ご存知のように日本では「ヤフオク!」という名称で親しまれています。
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5 ヌーペディア
ネットで調べものをするとき、何かと役に立つのがウィキペディア。
オンラインの百科事典として、誰でも自由に閲覧できるのみならず、記事を編集することも出来るのが最大の特徴ですが、そのことが記述内容の信頼性にも少なからず影響を与えており、正確な情報ばかりとは言い切れないのが玉にキズ。
そして、その問題点を解消していたのが、1999年に開設されたサイトで、ウィキペディアの前身でもあるヌーペディアなのです。
任意のトピックについて、それなりに知識のある人が記事を書いていたのですが、ウィキペディアと違ってすぐには記事が公開されません。
専門家がそれらの記事の内容を検証し、十分信頼できると判断されたものだけが公開されるのです。
よって、内容の正確さについてウィキペディアより上なのは確実。
ただ、この厳しいチェックのせいで、最初の年に公開された記事の数はたったの21。
一方で、ウィキペディアが最初の年に公開した記事数は18000です。
ヌーペディアは2003年まで約4年間つづきましたが、その間に公開した記事の総数は30にも届きません。
現在のウィキペディアの存在価値を考えると、内容の正確さを多少犠牲にしてでも、より多くの項目を検索できる方が利用者にとってはメリットが大きいと言えそうです。