最近は、日本でもブラックフライデーにちなんで11月にセールを行う企業が増えました。
そのセールが終わると、今度はクリスマスセール。
それが終わると、年が明けて新春セール。
年末年始は、買い物をする機会がどうしても増えます。
消費者にとっては、快適にショッピングを楽しんで、良い品物を少しでも安く買うのが理想。
しかし、それを阻む罠も数多く存在するので、注意が必要です。
〈originally posted on December 1,2018〉
1 絶対に話しかけてくる店員
スマホを買い換えようと思い立ち、ネットで最新機種を調べ、なかなか良さそうなスマホを発見。
その後、念のために店舗で実機を触るべく、近くの家電量販店を訪れると、必ず次のような会話が発生します。
客:(お、これが例の最新スマホか…)
店員:「いらっしゃいませ」
店員:「スマホをお探しですか?」
客:「あ、はい(だって、ここスマホ売り場ですし)」
店員:「こちらの機種はですね、RAMが3GBで、ストレージ容量が…」
客:(いや、それ知ってます。ていうかスペックは陳列棚に書いてありますけど…)
店員:「ところでお客様、お客様はどちらの携帯キャリアで…」
店員:「あ、ひょっとして格安SIMとかですか?」
店員:「ちなみに、通信費って毎月どれくらいかかってます?」
店員:「あ、それとですね、お客様…」
店員:「まったくもってお客様…」
店員:「ところがどっこいお客様…」
店員:「お客様…」
これは、考えてみれば大変奇妙な現象と言わざるをえません。
店に立ち寄る客が関心を抱いているのは、陳列された商品であって、店員との和やかな会話ではないのです。
仮に、客側から何か聞きたいことがあれば、その段階で店員に聞けばいいだけのこと。
家電量販店に限りませんが、なぜ店員は、客がじっくりと商品を選ぶのを中断させてまで強引に話しかけてくるのか。
この点、かつては、万引き防止のためであると言われたこともありました。
挙動の怪しい客はもちろんのこと、何の問題も無さそうな客であっても、とりあえず店員が話しかけることで、すぐ近くに店員がいるということを相手に意識させるのです。
しかし、それが狙いなら、「いらっしゃいませ」の一言で十分という気もしますが……。
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2 高確率で金が無駄になる「保証延長サービス」
映像機器や白物家電、ゲーム機などを購入する際、必ず店員から勧められるのが、「保証延長サービス」。
一定の金額を追加で支払えば、通常のメーカー保証期間が1年間であるのを、例えば3年に延長してくれるというサービスです。
店員が例外無くこれを客に勧めてくる理由は、店側にとってはほぼリスク無しで儲かる手段だから。
アメリカ消費者連合(CFA)が行ったリサーチによれば、このような保証延長サービスは、ほとんどの消費者にとって金の無駄になっているとか。
その理由は、通常の保証期間を過ぎて、なおかつ延長された保証期間内に商品が壊れるケースがほとんど無いからです。
製造過程で何らかの不具合がある商品は、大抵一年も経たずに調子が悪くなります。
さらに、購入してから3~5年も経過すると、壊れた物を修理するより、新しい商品を買った方が得なことも多いのです。
CFAで保険の問題を専門にしているボブ・ハンター氏は、保証延長サービスは、「やや詐欺的である」と語っています。
保証延長サービスは、購入代金が高額であるほど利用価値も高まりますが、数万円程度の商品であれば、むしろ利用しない方が賢明かもしれません。
3 商品の配置が突然変わるナゾ
自分が普段よく行く店で、商品の場所が急に変わっていて困惑したことのある人は少なくないでしょう。
台所用洗剤を買おうといつもの陳列棚に行ってみると、何故かレトルトカレーのコーナーになっていた……。
こういうことは、しょっちゅうあるわけではないですが、たまに発生します。
一説によると、これには、客に店内を隅々まで歩かせる狙いがあるのだとか。
お目当ての商品の売り場が変わっていれば、その商品を探すために客は自然と各売場を移動するはめになり、その結果、予定外の買い物をする機会が増えるというわけです。
4 光沢のあるものに惹かれる理由
人間は、キラキラ光る物が好きです。
典型例はやはり宝石類ですが、そこまで高価ではない、例えば家電製品などでも、光沢のある外観は高級感を生みます。
顧客行動のリサーチ&コンサルティング会社であるエンバイロセル社が行った研究によると、歩行者は、キラキラと輝く照明のある店の前では、自然と歩く速度が遅くなるのだとか。
ショッピングモールに入ると、照明をふんだんに使用した店舗が多いですが、そういう店は、集客力の上でも有利なのです。
ところで、なぜ人間はキラキラ光る物が好きなのか。
これに関して、少し古い学説ですが、遠い昔に人間が持っていた、新鮮な飲み水を見つけるための能力が進化した結果ではないかとする説があります。
キラキラと光って見える水ほど新鮮で、飲んでも安全だというわけです。
5 「39980円」vs「40000円」
NHKで4K・8Kの放送が始まったことで、今後はそれらに対応したテレビの売り上げも益々伸びるでしょう。
アマゾンで4K対応テレビを検索してみると、その価格が、「169800円」や「99633円」、「79800円」などとなっているのが目に付きます。
もちろん、キリのいい数字になっているものもありますが、どちらかと言えば、キリのいい数字にわずかに届かない価格設定の方が多いのです。
そして、これには科学的根拠があります。
我々は、価格を左から右に読むとき、最初に目に入る、一番左の数字を特に重視する傾向があるそうです。
例えば、執筆時点で税抜き価格「39980円」のPS4 Proは、「40000円」と20円の差しか無いのですが、前者は「3万円台」、後者は「4万円台」と印象付けられる結果、20円以上の違いがあるかのように錯覚してしまうのです。
よって、メーカーにとっては、価格の最初の数字を少しでも低くする方が、安いという印象を与えることができて、有利と言えます。
また、アメリカにあるコーネル大学のブライアン・ワンシンク教授によると、こういった中途半端な価格は、倹約家の消費者が余計な買い物をしてしまう一因になっているとか。
倹約家の人たちは、買い物をする際、自分が買う品物全ての合計額を正確に計算しようとします。
しかし、「2998円」のような半端な数字は、計算ミスを誘発し、結局のところ、彼らは平均約20%も余分に買ってしまうという研究結果が出ました。
逆に、大ざっぱにしか計算しない人ほど合計額は少なかったとか。
少しでも節約しようとする人にかえって損をさせてしまう点を考えると、こういった価格設定はなかなか侮れません。
6 タッチスクリーン表面の大腸菌
頻繁にマクドナルドを利用する人にとってショッキングなリサーチ結果が、最近イギリスで発表されました。
マクドナルド店内に設置された、注文用のタッチスクリーンに付着したばい菌を調べたところ、調査対象となった全ての店舗において、大腸菌が発見されたのです。
具体的には、大便連鎖球菌やブドウ球菌など。
また、一部の店舗では、リステリア属細菌も発見されました。
リステリアは、稀に食中毒を引き起こし、重症の場合は死に到ることもあります。
ロンドン・メトロポリタン大学で微生物学を教えるポール・マトウェレー教授によれば、これらの細菌が飲食店で見つかるのは、かなり危険であるとのこと。
多くの客は、タッチスクリーンで注文した後、商品を受け取って、そのまま手を洗わずに素手でハンバーガーやフライドポテトを食べます。
その時、大腸菌が口に入るわけです。
この結果に対しマクドナルド側は、タッチスクリーンは定期的に消毒剤で拭いていると主張していますが、マトウェレー教授は、拭き方が不十分なのではないかと指摘。
これはあくまでイギリスの話ですが、果たして日本ではどうなのか……。
7 初めて行く店だとつい色々買ってしまう理由
いつも行っている店では余計な物を買うことは無いのに、初めて立ち寄る店だと特に必要の無い物まで買ってしまう。
こういう経験は誰しもあるでしょう。
この現象を引き起こしている物の正体は、我々に快楽を与える物質であるドーパミンです。
ドーパミンは、様々な場面において脳内で分泌され、例えば、自分が欲しい物を買う際にも分泌されます。
また、何か新しい経験をすることでも分泌されるので、旅行先や、初めて訪れる店で買い物をするときには、普段とは違う新しい環境にいるため、ショッピングによる快楽の度合いもアップするのです。
これが、初めて行く店だと色々と買ってしまう原因だとされています。
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8 イライラしたり、気分が落ち込んだりしているときの買い物は危険
スタンフォード大学の研究チームが実施した実験によると、悲しい映画を観た直後の被験者は、そうでない被験者と比べ、購買意欲が約3倍も高まるのだとか。
その原因も、先ほどと同じ、ドーパミンです。
ドーパミンは心地よさを与えてくれるので、自分の精神がネガティブな状態にあると、物を買うことによって得られるドーパミンによって、それを解消しようとするのです。
よって、イライラしたり、落ち込んだりしているときに、今まで行ったことのない店に立ち寄り、たまたまその店でセールをやっていたら、派手に散財してしまう条件が全て整っているということになります。