あまりに多く摂取すると、健康に悪影響を与えるものは色々とあります。
例えば、糖分。
毎日のように、ケーキやドーナツを好きなだけ頬張っていれば、そのうちしわ寄せが来るのは必至。
ただ、糖分の多い食べ物の中でも、アメというのは、一度に大量には食べられませんし、1個あたりのカロリーもそれほど高くないので、アメを舐めることに神経質になる必要は、あまり無いように思えます。
しかし、何事にも、やはり限度は必要です……。
(アイキャッチ画像:Yakovleva / Pixabay)
「ブラック・リコリス」の危険性
先月、米国マサチューセッツ州在住の男性が、ファストフード店にいるとき、急に心不全に襲われて、亡くなりました。
もともと、彼は、心臓病を患っているというわけではなかったのです。
では、なぜ心不全になったのか。
その原因は、「ブラック・リコリス(リカリシュ)」というアメ(上掲の写真)だと考えられています。
欧米ではよく知られた菓子で、リコリスというのは甘草のこと。
54歳の建設作業員であるその男性は、これを毎日舐めていました。
実はこのアメ、2018年に、アメリカ食品医薬品局(FDA)が、過剰摂取は心臓に悪影響があるという警告を発していたのです。
具体的には、40歳を超えた人が、毎日56グラムのブラック・リコリス(およそ1袋の8分の1)を食べる生活を2週間以上続けると、心臓病のリスクが発生するのだとか。
その原因とされているのは、このアメの原材料として使われている、「甘草エキス」。
その名が示すとおり、甘味料としての役割があるのですが、このエキスの中には、ヒトの体内においてカリウム吸収を妨げる物質が含まれているのです。
よって、これを過剰に摂ると、体内のカリウム量が減ります。
それと引き換えに起きるのが、ナトリウムの増加。
こうして、カリウムとナトリウムの量的バランスが崩れることが、高血圧や不整脈の原因になりうるのだそうです。
ということは、リコリスを食べ過ぎることは、命の危険すらあるということ。
ただし、重大な健康上のリスクが発生するまで食べるとなると、かなりの量を食べねばならないので、普通はそんな事態にはなりません。
過去の例としては、70歳の男性が、毎日60~100個のブラック・リコリスを食べていたことから、危険な状態に陥った、というのがあります。
先程のマサチューセッツ州の男性の場合、毎日食べていた量は、1袋半。
その結果、彼の体内のカリウム量は、極端に低い数値になっていました。
赤は安全、黒は危険
このリコリスという飴には、赤色と黒色の2種類があります。
そして、赤の「レッド・リコリス」には、その名前とは裏腹に、リコリスが含まれていません。
つまり、危険なのは「ブラック」の方だけです。
実は、亡くなった男性も、ずっと「レッド」の方を食べていたのですが、「ブラック」に変えてから、体調を悪化させていました。
日本では、「ブラック・リコリス」自体は、輸入品として入手するしか無いですが、リコリス(甘草エキス)を含んだのど飴や菓子類は、普通に買えます。
先述のとおり、常識的な量を食べる分には何の問題も無いのですが、もともと心臓が弱い方は、リコリスの摂取量にはちょっと注意した方が良さそうです。
糖分の摂りすぎとアルツハイマー病
リコリスを使用していない飴ならば、食べ過ぎたからといって、それだけで心臓への危険が生じるということにはならないでしょう。
しかし、糖分の摂りすぎという意味では、やはり問題があります。
2017年に発表された、イギリスのバース大学での研究によると、糖分の過剰摂取は、アルツハイマー病になるリスクを高める可能性があるのです。
この発表以前から、糖尿病の患者がアルツハイマー病を発症しやすいことは知られていました。
上記の研究は、たとえ糖尿病を患っていなくても、糖分の摂りすぎがアルツハイマー病につながることを示唆しています。
同大学の、ジャン・ファン・デン・エルセン教授の話によれば、初期のアルツハイマー病において、症状の悪化を防いでいるMIFという酵素の働きが、糖分の過剰摂取によって阻害されてしまうのだとか。
その結果、認知症のリスクが上がるのです。
もちろん、この研究結果は、糖分とアルツハイマー病との関連性を示す一つの仮説に過ぎません。
しかし、甘い物の食べすぎは、それ自体が様々な弊害をもたらしますから、体重計に乗るのが怖くなる前に、摂取量を減らすのが無難でしょう。