ホームレス
に対して偏見を持っている人は少なくありません。
彼らのことを、単なる怠け者だと思ったり、自業自得だと言う人もいるでしょう。
しかし、路上生活を余儀なくされるに至る経緯は、人によって様々です。
必ずしも、本人だけの責任とは言い切れません。
ただ、どういう理由でホームレスになったにせよ、その日々の生活は過酷。
奇跡でも起きなければ、その状況から完全に抜け出すのは難しいかも知れません。
〈originally posted on March 5,2021〉
1 強盗を取り押さえて人生が変わったホームレス
米国テキサス州サンアントニオに住むイライジャ・アーノルドは、幼い頃を児童養護施設で過ごし、同世代の若者が高校や大学に通う一方で、地元のレストランで働いていました。
時給はたったの2ドル強。
住む場所は無く、毎晩の寝床は、駐車場に停めてある、廃車寸前の車の中です。
2017年10月、ただでさえ苦しい生活を送っている22歳の彼に、さらなる試練が訪れました。
彼の働くレストランに、銃を持った強盗が押し入ったのです。
犯人は、天井に向けて2回発砲すると、店内にいる客に対し、妙な動きをすれば殺すと威嚇。
そして、バールを使ってレジをこじ開け始めました。
店内に緊張が走ります。
次の瞬間、アーノルドが犯人に飛びかかり、床に組み伏せました。
犯人も負けじと応戦し、バールでアーノルドの鼻を強打。
アーノルドは鼻の骨が折れ、辺りに血が飛散。
しかし、格闘術の心得があったアーノルドは、その後、抵抗する犯人を、警察が到着するまで取り押さえることに成功し、他の客は全員無事でした。
武器を持った相手から、店内の客を命がけで守った彼の偉業は、またたく間に住民たちの知るところとなり、テレビ局の取材も受けることに。
さらに、困窮している彼を経済的に支援しようとする人が次々と現れ、最終的に、アーノルドは、ホームレス生活を脱却できるだけの金銭を手にしたのです。
危険を顧みない勇敢さが無ければ、今でも彼はホームレスの生活を送っていたかも知れません。
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2 困っている人に所持金の全てを差し出すホームレス
2014年12月4日の深夜、イングランドのランカシャーで大学に通っていたドミニク・ハリソン・ベンツェン(当時22歳)は、財布を落としてしまったため、家に帰ることが出来ず、途方に暮れていました。
極寒の中、連絡の取れる相手も見つからず、ただ寒さに耐えながらベンチでじっとしているだけ。
そんな彼女の姿を偶然目にしたのが、ロバートという名のホームレス。
彼は、ドミニクの窮状を察し、全所持金であるなけなしの3ポンドをタクシー代として彼女に手渡そうとしました。
3ポンドと言えば、路上生活者にとってはかなり貴重な金額。
そのこともあってか、結局、ドミニクはそのお金を受け取りませんでした。
しかし、ロバートの親切な行為に深く感銘を受けた彼女は、彼を助けようと決意。
フェイスブックなどを駆使してロバートの情報を集めていると、彼の善意に助けられた人が、自分だけではないことを知ります。
ロバートは、やむを得ない理由によりホームレス状態を続けて、約7ヶ月が経過していました。
ドミニクは、彼がとりあえず住所を手に入れれば、仕事を得るチャンスは生まれるはずだと考え、一計を案じます。
彼が部屋を借りられるだけの資金を確保するため、ネットで募金を呼びかけたのです。
このキャンペーンの結果、ロバートの善行に胸を打たれた多くの人たちが協力し、あっという間に12500ポンド(約185万円)が集まりました。
もちろん、これだけのお金があれば、職探しを始めるには十分です。
3 ゴミ収集車に圧縮されかけたホームレス
ホームレスの日々は、あらゆる意味で過酷です。
心無い者からいわれのない攻撃を受けることもあります。
そして時には、自ら命を危険にさらしてしまうことも。
2015年、米国カリフォルニア州フリーモントで、一人のホームレス男性が、大きなゴミ箱の中で寝ていたところ、ゴミ収集車がやって来ました。
案の定、その男性は、大量のゴミと一緒に、収集車の後部へと放りこまれます。
ここから先、彼に待っている運命は、ゴミと共に「圧縮」されること。
ゴミ収集のスタッフは、まさか人間がゴミに紛れているなどとは思っていませんから、この状況は男性にとって絶体絶命。
しかし、その男性は、圧縮される寸前で、奇跡的に外に脱出しました。
これだけでも驚きですが、さらに驚くべきは、この男性、これと全く同じ経験を過去にも一度していたのです。
2回もゴミ収集車に投げ込まれ、2回とも、圧殺される寸前に脱出。
まさに奇跡の生還と言えるでしょう。
4 空港で生活していたら、母親に発見されたホームレス
家族の一員が、ある日突然ホームレスになってしまったら……。
あまり想像したくは無いですが、今のコロナ禍の状況では、ありえない話ではありません。
本当にそうなった場合、家族がその者を見つけるのは至難の業です。
2000年ごろ、ジョージというイギリス人男性は、借金で首が回らなくなり、ホームレスになりました。
彼が生活の場として選んだのは、ロンドンのヒースロー空港。
ここは、飲食店からの残飯が毎日手に入るので、食べ物に困ることが無く、ホームレス初心者の彼にとっては最適の場所でした。
そして、空港の「住人」になってから4年の歳月が過ぎたある日。
ジョージに声をかける一人の女性が現れました。
よく見ると、彼女は、何とジョージの母親。
その母親は、空港まで親戚を迎えに来ていたのですが、そのとき、偶然息子のジョージを発見したのです。
彼女の話によると、息子がいなくなってからは、言いようの無い喪失感に苦しんでいたとか。
空港の広さや人の多さを考えると、二人が邂逅する確率は決して高いとは思えず、かなりラッキーだったと言えるでしょう。
しかしながら、感動の再会を果たしたものの、ジョージは、自分が原因で家族に迷惑をかけたことから、すぐに以前のような関係には戻れないだろうと語りました。
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5 ホームレス同士の結婚事情
ホームレス同士の結婚に、様々な困難がつきまとうであろうことは、想像に難くありません。
経済的な問題もありますし、お互いの親の気持ちも複雑でしょう。
しかし、そのような困難を排し、結婚したカップルがいます。
イギリス人のヴィクトリア・ガンという女性は、2014年6月、ルームメイトの都合によって部屋を出ていかざるを得なくなり、それ以来、親戚の家を頼ったり、路上で寝たりといった日々を過ごし、2016年には、ブライトン市にあるシェルターでの生活を始めました。
そのシェルターで出会ったのが、ジェフ・ハンプステッドという、同じくホームレスの男性。
あるとき、爽やかな笑顔で彼がギターを奏でている様子を見たヴィクトリアは、にわかに彼に惹かれました。
彼女は思い切ってジェフに自己紹介したのですが、そのとき、彼の年齢を聞いてビックリ。
自分より20歳近くも年上の、50歳だったのです。
とてもそうは見えなかったそうなのですが、とにかく、これをきっかけにして二人は付き合うことに。
二人の関係はどんどん親密になっていき、2018年10月に、ヴィクトリアは娘を出産。
同年のクリスマスにジェフが彼女にプロポーズし、二人は結婚しました。
ここまでくると、いつまでもシェルター暮らしというわけにはいきません。
そこで、公的扶助を利用して部屋を借り、彼らは新居で新たな人生をスタート。
それをきっかけに、ジェフは本格的に就職活動を開始しました。
希望の無いホームレス状態から、自分たちの家庭を築くまでに人生を好転させた二人ですが、全てが順調というわけではありません。
元々はシェルターで生活していたということと、二人の年齢差とが原因で、娘を公園に連れていくと変な目で見られることも少なくないそうです。