けっこう頑張っているはずなのに、なぜ自分はいつまで経っても幸せになれないのか。
この奇妙な現象の謎に迫ります。
本当に今の自分が幸せだと断言できる人はそれ程多くないかも知れません。
そもそも、幸せとは何なのか、という素朴な疑問に対して答えを出すのも難しい面があります。
今回は、そういった「幸せ」の持つ意外な落とし穴をご紹介します。
1 遺伝が原因で幸せを感じない
アメリカのミネソタ大学が、双子を対象に行った調査で、人が感じる幸せの度合いを決めるものは何か、という疑問についての答えを出しました。
その答えの一つは、「環境的な要素」です。
自分の人生が充実していても、周りの状況によっては幸せを感じにくいというわけです。
そして意外なことに、遺伝的な要素も、幸福度に大きく影響します。
これを裏付ける研究結果が、イギリスの研究者によっても発表されました。
2500人の被験者を対象にしたその研究によると、
「5-HTT」
という、セロトニンの分泌に関わる遺伝子の長さが幸福感に影響しているらしいのです。
具体的には、長いタイプの「5-HTT」を持っている人は、そうでない人よりも物事をポジティブに捉え、幸せを感じやすいそうです。
また、エセックス大学の研究によれば、同じく長い「5-HTT」を持つ人は、ストレスをコントロールする能力や、ネガティブな感情を克服する能力が高いのだそうです。
【スポンサーリンク】
2 年を取るほど幸せを感じにくい
近年の研究が示す所では、人間は10代から20代にかけてが最も幸せを感じやすく、30代が近づくにつれ、急激に幸せを感じにくくなるそうです。
その理由として考えられるのは、若い頃は多少非現実的な希望や目標であっても、それを支えにして前向きに頑張れますが、年を取ってくると、そういった目標の多くが達成困難あるいは不可能であることを知ってしまうからだとされています。
端的に表現すれば、
「夢が無くなる」
ということかも知れません。
3 「3人目の子供」から幸せを感じにくくなる
アメリカ人、イギリス人、ドイツ人の親を対象に行った調査によれば、第一子を授かるときの幸福感は、子供が生まれてくる直前期にピークに達することが多いようです。
そして、第二子が誕生する時にも同様の幸福感が得られます。
しかし、第三子の時には幸福感が一気に下がり、場合によっては出産後にネガティブな感情が生じることもあるのです。
また、子供を持つことによる幸福感は、出産時の年齢も大きく関係しており、35歳から45歳までが最も幸福感が高く、18歳から22歳までが最も低いとされています。
4 「幸せ」と「喜び」の違い
甘い物に目がない人にとって、お気に入りのスイーツを食べている時というのは至福のひと時だと思うのですが、ではこの状態は「幸せ」と言うべきなのでしょうか。
心理学的に見ると、これは「幸せ」ではなく、「喜び」に当たるのだそうです。
「喜び」は、周りの状況や物などによって与えられる、一時的な満足感のことを指します。
一方、「幸せ」はそういった外部の物から得られるのではなく、自分自身が周りの人たちに影響を与えたり、助けたりすることが出来る状態、あるいは、様々な困難に打ち勝つ能力を持っている状態のことを指すのです。
つまり、自分が認識している、自分自身の存在価値の高さが「幸せ」に繋がるというわけです。
極端な話、「喜び」が全く無いところにも、「幸せ」は存在しえます。
もちろん、こうした意味の捉え方は、日常的な用法とは異なりますが、このような区別を意識することで、単なる「喜び」を真の「幸せ」だと勘違いしてしまうのを避けることが出来るというわけです。
あくまで「物」に依存した喜びは、常にそれらの物を買い続けていかないと、充足感が得られない危険性をはらんでいるのです。
5 「時は金なり」の悲劇
カナダのトロント大学で、時間に関する興味深い実験が行われました。
被験者に時給のことを考えてもらい、その後で、音楽を聴いたりネットを使ったりして余暇の時間を楽しんでもらったのです。
すると、被験者の多くは、何か生産的な事をやりたいという衝動に駆られ、ゆっくりと余暇を楽しむことが出来なかったそうです。
また、町中に点在するファストフード店なども、我々が景色や食べ物をじっくり楽しむ能力を殺いでいる原因だと見られています。
現代人は、「時は金なり」という意識が強すぎて、常に効率的な時間の使い方をしようとしてしまい、本当の意味で物事を楽しむ余裕が失われていると言えそうです。
6 幸せを恐れる人たち
誰もが幸せを手にすることを望むと思いがちですが、実はそうではありません。
ニュージーランドのヴィクトリア大学ウェリントンで行われた研究によれば、幸せになることを恐れるあまり、むしろ「不幸せ」を望んでいる人が少なくないそうです。
そういう人は、幸せな出来事の後に、何か大きな不幸が待っているのではないか、という不安を抱きがちです。
また、自分だけが幸せになることより、自分が属する家族、組織、団体の利益を優先して考える傾向があるようです。
そして、このタイプの人が特に多く見られる地域が、インドや香港、日本なのです。
日本では、有給休暇を取るのに抵抗を感じる人が多いという事実に、その傾向がよく現れています。
7 悲観的な人ほど幸せを感じやすい
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンが行った研究によれば、我々が何かを成し遂げた時、そこから得られる満足感の大きさは、その人が予め設定していた目標値に大きく左右されるそうです。
例えば、50点の結果しか期待していなかった人が80点の結果を出した場合と、80点を予想していた人が90点だった場合とでは、前者の方が達成感が大きい、というわけです。
つまり、人間は自分の設定した期待値との「比較」で幸福を感じる傾向が強いということで、驚くべきは、同大学によればこの仕組みは極めて複雑な「数式」で現すことも可能なのだとか。
ということは、
「どうせ自分は何をやってもダメだ……」
という風に、普段から悲観的でいる人ほど、自分が出した結果から幸福感を得やすい面があるということにもなります。
【スポンサーリンク】