山ほどあるギネス世界記録の中で、これだけは止めておいた方が良いと思われるものをご紹介します。
誰も達成したことのない記録を打ち立ててギネスブックに名前を残すのは、この上なく名誉なことでしょう。
とは言っても、誰もが気軽に挑戦できるものではないのも事実。
挑戦する記録内容によっては多額の費用がかかりますし、ギネスに申請を行なうだけでもお金が要ります。
さらに、過去の例を振り返ると、どう考えても避けた方が良さそうな記録も存在するのです。
〈originally posted on August 10,2017〉
1 超肥満ネコ
「ウチのネコ、最近異常なほど太ってきたな。世界記録狙えるんじゃないか」
自分のペットが太ってしまった場合、こんなことを考える人がいるかもしれません。
かつてギネスブックでは、「最も体重の重いペット」が定番の記録として掲載されていました。
オーストラリア生まれのヒミーというネコ(雄)は、体重が21.3kg(6才児とほぼ同じ)もあり、ギネスの世界記録に認定されています。
体重が重すぎて自力で動けないので、ヒミーは手押し車に乗せられて移動していたそうです。
しかし、人間と同じく、太りすぎは健康上の様々な被害をもたらしかねません。
このことは近年アメリカで特に問題となっており、ペットとして飼われている犬・ネコのそれぞれ53%、58%は太りすぎであるとされています。
また、ギネス記録を狙ってペットに過剰な量のエサを与える飼い主が現れる可能性も否定できません。
そこで、1998年にギネスは「最も体重の重いペット」を記録として採用することを止めました。
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2 大食い世界一
あまり知られていませんが、ギネスブックにおいて、「大食い」というのは二種類に分けられます。
一つは、制限時間内にどれだけ多く食べられるかを競うもの。
もう一つは、制限時間を設けず、ギブアップするまでひたすら食べ続けて完食した量を競うもの。
後者に関して、1931年から1981年まで 世界記録を保持していたのが、カリフォルニア出身のエドワード・ミラーという男性です。
1963年には27羽分のキチンを平らげて世界記録を達成。
ちなみに彼は、普段の生活で毎日25000kcalを摂取していたと言われています。
これは、ビッグマック約100個分です。
しかし、大食い生活のツケが回ってきたのか、糖尿病や心臓病により彼の晩年は闘病生活の日々でした。
2008年、ミラーは89歳で亡くなっています。
そして、制限時間無しの大食いが健康に与える悪影響を考慮し、このカテゴリーは1990年代にギネスブックから消え去りました。
3 世界一長いサンドイッチ
は、ギネスブックで人気のあるカテゴリーの一つです。
しかし、スケールの大きな食べ物を作る際は、意外な落とし穴があるので注意が必要。
かつて、イタリア人のグループが、1378mの超ロング・サンドイッチを作ってギネス記録に認定されました。
この記録を打ち破ろうと、イラン人の女性グループが1000人以上もの料理人を集め、1500mのサンドイッチ作りに挑戦。
屋内で作業を行うのは到底無理なので、町の歩道にテーブルを並べ、その上で調理が行われました。
当たり前ですが、やたらと長いサンドイッチを町の中で作っている集団がいたら、見物人が集まってくるのは避けられません。
彼らがただ見ているだけなら特に問題は無いでしょう。
しかし、実際はそう甘くなかったのです。
世界一のロング・サンドイッチを料理人たちが作っている側から、大勢の見物人が完成前のサンドイッチをばくばくと食べ始めました。
ひょっとすると、無料でサンドイッチを振る舞うイベントか何かだと彼らは勘違いしたのかもしれません。
何れにせよ、お腹を空かせた見物人たちのせいで、ギネス記録の夢ははかなく散ったのでした。
食べ物を使ったギネス記録を狙う場合は、つまみ食いをする連中が出ないように十分注意せねばなりません。
4 音速を超えるフリーフォール
フランス人のミシェル・フルニエは、自らが自由落下する際の最高速度に人生をかけた冒険家です。
記録に挑戦する具体的な手順は、まず気球で高度40kmまで上昇し、そこから飛び降ります。
そのまま落下していき、地上6kmの高さまできたらパラシュートを開いて着地。
落下時間は15分にも及び、最高速度は音速を超えると見られていました。
2003年、万全を期して記録挑戦を始めたものの、気球を膨らませている途中で球皮(袋)が破れてしまい、失敗に終わります。
その5年後、今度はちゃんと気球は膨らみましたが、球皮とバスケット(ゴンドラ)をつないでいるロープが切れてしまい、球皮だけ空へ飛んでいくという笑えない事態が発生し、やはり失敗。
この2度の失敗により、フルニエは2千万ドルもの損失を出してしまいました。
思わず忘れそうになりますが、彼の目標は、気球に乗ることではなく、自由落下で音速を超えることなのです。
世界記録の達成には大掛かりな準備が必要なこともありますが、気球を使った挑戦だけは止めたほうが良いかもしれません。
5 断食の日々
食いしん坊な人には縁の無いギネス記録と言っていいのが、連続断食日数の記録です。
2015年、アメリカ在住のロシア人男性アガシ・ヴァルタニアンは、50日を超える断食に挑戦しました。
これには世界記録の達成という目的もありましたが、ちょうど100年前の1915年に起きた「アルメニア人虐殺」の問題を風化させないためのアピールという意味合いもあったのです。
本当に何も食べていないのが周りから確認できるように、ガラスで出来た部屋(1辺3.5mの立方体)を用意し、彼はその中に入って生活を始めました。
断食の間、口に出来るのはペットボトルの水のみ。
そして、55日間の断食を終えて、彼は部屋から出ました。
100kg近くあった体重は74kgにまで減少。
ここまで過酷な試練に耐えたのですから、世界記録達成は間違いないはず……。
そう思うのが普通ですが、残念ながらその夢は叶いませんでした。
危険な挑戦だから記録として認められなかったのかというと、そうではなく、実はそれ以前の問題。
何と、ヴァルタニアンはギネスブック側に対し事前に何の連絡もしていなかったのです。
世界記録の達成が認定されるためには、その瞬間にギネス審査員が立ち会わねばなりません。
55日間の断食を終えてから申請したところで何の意味も無かったのです。
ちなみに、断食日数の世界記録は、1920年代に達成された「94日間」となっているので、どの道ギネスブックに彼の名前が載る可能性はありませんでした。
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6 ドミノ倒しの悲劇
ドミノ牌を並べること自体は誰にでも簡単にできますが、数十万個、数百万個を並べるとなると話は別。
誤って一つでも倒してしまったら連鎖的に大量のドミノ牌が倒れ、何時間もの苦労が一瞬で水の泡です。
その意味で、ドミノ倒しは、ギネスブックの中で最も神経をすり減らすカテゴリーかもしれません。
2005年、オランダ人のグループが、400万個のドミノ牌を並べるというギネス記録を目指しました。
数が数ですから、大きなコンベンション・センターのビルを、記録に挑むための会場として使用することに。
その中で彼らは数日間にわたって慎重にドミノ牌を並べ続けました。
しかし、完成目前という時に予想だにしなかった事態が発生。
ビルの窓から舞い込んできた一匹のスズメが、ドミノ牌の一つを倒したのです。
これにより、非情にも約23000個のドミノ牌が一気に崩れました。
400万個のうちの23000個というと、大したことはないと思われるかもしれません。
確かに、倒れたドミノ牌を改めて並べることは難しくないでしょう。
しかし、ギネス記録はギネスの審査員がチェックしてナンボ。
その審査員が会場に到着する予定の時刻までに23000個を並べるのはどう見ても不可能でした。
挑戦は失敗です。
そして、悲劇はこれだけにとどまりませんでした。
警備員の一人がエアライフルでそのスズメを射殺したのです。
後から分かったことですが、殺されたスズメはオランダにおいて絶滅危惧種に指定されていました。
見物人たちからは、さすがにやり過ぎだろという非難の声が上がり、動物愛護団体も猛抗議。
実に後味の悪い結果となりました。
ちなみに、2009年になって、やはりオランダ人のグループが約450万個のドミノ牌を並べてギネス世界記録に認定されています。