ブログ記事を盗まれるよりも怖いもの。
それは、自分という存在・身分を盗まれることです。
じっくり時間をかけて書いた記事が、いとも簡単に盗まれるのも死にたくなりますが、どこの誰かも分からない人間が自分になりすますのも許しがたい。
その最も卑近な例を挙げるとすれば、クレジットカード詐欺でしょう。
身に覚えの無い巨額の請求書を見れば、誰でも一瞬血の気が引きます。
しかし、他人になりすますケースには、もっと奇妙なパターンもあるのです。
〈originally posted on November 10,2017〉
1 行方不明者になりすましてエリート大学に入学
1978年に米国モンタナ州で生まれたエスタ・リードは、21歳の時に窃盗罪を犯し、その直後に失踪しました。
それ以来、各地を転々としながら偽名を使って生活。
2004年、急に大学生活を満喫したくなった彼女は、コロンビア大学への入学を目指します。
しかし、かの有名なコロンビア大学に偽名で入れるわけがありません。
そこで彼女は、ブルック・ヘンソンという女性がずっと行方不明になっている事実をネットで知り、ヘンソンになりすますことで入学試験を受け、見事に合格しました。
ところが、バイトを申し込んだ先の店長がヘンソンの身元を調べてみると、彼女が行方不明者であることに気づきます。
店長は早速警察に通報。
警察がリードに連絡を取って、DNA検査をしたいと申し出ると、ヤバイと感じた彼女はまた逃走生活を再開します。
しかし、2008年2月3日、リードは遂に警察に捕まり、後の裁判で有罪となりました。
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2 他人になりすまして結婚
2004年、ニューヨークに住むローザ・バルガス(37)は、結婚式まであと3週間というとき、結婚許可証をもらうために役所を訪れました。
法的に問題の無い結婚かどうかをチェックするだけで、普通はすぐにもらえる書類なのに、彼女は許可証の発行を拒否されたのです。
そして、その理由を聞いて愕然とします。
記録上、バルガスは既に結婚していたのです。
しかも、二人の男性と。
一人はメキシコ人、もう一人はエクアドル人。
その後、何とか結婚許可証は得られたものの、5年後にエクアドル人の「ダンナ」から離婚届が郵送されてきました。
会ったこともない男から、いきなり離婚届にサインするように求められるという、かなり屈辱的な体験を彼女はしたわけです。
この不可解な出来事の原因は、バルガスが1990年に自分の出生証明書を紛失したことにありました。
どこの誰かも知らない女二人が、その証明書を利用してバルガスになりすまし、結婚していたのです。
その目的は、おそらくアメリカに不法滞在するため。
これらの事実に気づいたバルガスは、法的手続きを行うことで、過去の結婚歴を全て抹消。
これで全てが解決したかと思いきや、ニューヨークのロングアイランドで、またもや自分になりすました別の「バルガス」が結婚しているのを発見します。
彼女の悪夢はまだまだこれからも続くかもしれません……。
3 シークレット・エージェントとして赤の他人の家に住む
隣家に見知らぬ人が突然住み始めても、それほど不思議ではないでしょう。
前の住人が別の場所へ引っ越しただけだと考えられるからです。
では、隣家で新たな住人が生活を始めたのに、家の表札が変わっていないとしたらどうでしょう。
この場合、考えられる可能性は3つです。
・新住人が単に表札を替えるのを忘れているだけ
・新住人の名前が前の住人と偶然同じ
・新住人が実はシークレット・エージェント
米国カンザス州ウィチタで、あるとき、男が警察署にやって来て、住所が書かれたメモを渡しつつ次のようなことを伝えました。
俺は今、おとり捜査の一環として、この住所にある家の持ち主になりすまして、そこで生活している。
だから、怪しい奴がいるなどといった通報を付近の住人から受けても、無視してくれ。
この説明で納得するおバカな警察官などこの世にいないでしょう。
警察が調べたところ、男は確かに、その家の所有者として奥さんとともに生活していました。
おまけに、本来の持ち主の名前でクレジットカードを作り、それでTVやパソコンなどを購入。
信じがたいことに、その名前を使ってパーティを開き、近所の人たちを招くこともあったとか。
実は、この家の真の所有者は、母親の看病のために数ヶ月間家を空けており、そこへこの男がやって来て、家と名前を盗んだというわけ。
近所の住人に怪しまれるのを見越して、自ら警察署に赴き、あたかも自分がシークレット・エージェントであるかのように説明して墓穴を掘ったのです。
少々頭の悪すぎるその「エージェント」は、その後警察に自首しています。
4 自分の娘になりすまして高校時代をやり直す
米国ウィスコンシン州出身のウェンディ・ブラウンは、かなり過酷な学生時代を過ごしました。
両親から虐待を受け続けたことで、上手く喋ることが出来なくなり、さらに、それが原因で周りから酷いイジメに遭っていたのです。
そして、17歳の時に妊娠し、高校を中退。
一方、彼女の姉は、学校でチアリーダーをしながら充実した生活を送っていました。
そんな輝かしい姉の姿を横目で見ながら、ウェンディはこう思っていたことでしょう。
2008年、33歳で、すでに子供もいたウェンディは、妙案(というか、妙な案)を思いつき、実行に移します。
州外に住んでいる15歳の娘の身分証明書を使って、地元の高校に入学したのです。
母娘だから顔は当然似ているでしょうが、自分の娘になりすますのは驚き。
ウェンディは普通に授業に出て、チアリーダーをやり、プールで行われた学生たちのパーティにも水着で登場。
しかも凄いのは、実は30歳を過ぎているということが周りの生徒にバレなかったということ。
しかし、無断欠席が多いことから教員たちの間で疑問の声が上がり、数週間で正体が明るみに。
さらに、詳しく調べてみると、彼女には精神的疾患があることが判明し、その後、ウェンディは3年間を施設で過ごすことになりました。
ただ、彼女はその期間を利用して、念願の高校卒業資格を得ています。
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5 ルームメイトになりすましてやりたい放題
日本では一般的ではないですが、アメリカなどでは、家賃の負担を減らすために、面識の無い人と大きめの部屋を一緒に借りることがあります。
2007年、米国フロリダ州在住のブリタニー・オセンフォートも、共通の友人を通じて知り合ったミシェルという女性と一緒にアパートで暮らし始めました。
二人の関係はいたって良好だったのですが、ミシェルの行動が徐々におかしくなっていきます。
ブリタニーの服装を真似て、髪型や髪の色も同じにして、ミシェルの見た目はどんどんブリタニーに近づいていきました。
もともと二人とも面長だったこともあり、もはや双子としか思えないレベルに。
ブリジット・フォンダ主演のホラー映画『ルームメイト』と同じような状況になりつつあったある日、奇妙な電話がブリタニーにかかってきます。
電話の内容は、保釈金を払ってくださいというもの。
一体どこの誰を保釈させるのかというと……。
「ブリタニー」です。
刑務所にいる「ブリタニー」が、自宅にいるブリタニーに連絡を取り、保釈金を払ってくれと頼んできました。
この謎めいた出来事の真相はこうです。
刑務所から助けを求めてきた「ブリタニー」の正体は、ルームメイトのミシェル。
彼女は、ブリタニーになりすまして売春を繰り返し、それが原因で逮捕されていました。
さらに、ミシェルというのは偽名で、本名はリチャード・フィリップス。
男性として生まれていながら心は女性という、いわゆるトランスジェンダーでした。
とりあえず、これらの事実が明らかとなったことで、ブリタニーは汚名を返上。
しかし、さらなる試練が彼女を待っていました。
警察署などのデータベースには、ブリタニー・オセンフォートの名前で逮捕歴が記録されてしまい、これはそう簡単には変更できません。
よって、自分の身が潔白であることの証明書を、ブリタニーはどこへ行くにも常に持ち歩かねばならないのです。