親から優秀な遺伝子を受け継いだ人は、ある意味、人生の成功を約束されているようなもの。
一方、凡庸な(あるいはそれ以下の)遺伝子を受け継いだ場合は……。
地道に頑張るしかありません。
頑張ってさえいれば、遺伝子のネガティブな影響を打破することは十分可能です。
そのために、どういうモノが遺伝の影響を受けるのかを知っておくことは、それなりに有益でしょう。
〈originally posted on July 18,2019〉
1 「一生独身」にさせる遺伝子
「いい歳こいてるのに、何でいつまで経っても結婚しないんですか?」
こんな失礼極まりない質問をされたらどう答えるのがベストか。
とりあえず、「遺伝子のせいです」と答えたとしましょう。
おそらく相手は、「ああ、顔がブサイクだからって言いたいのね……」と思うはず。
確かに、顔がブサイクだから結婚できないという可能性はあります。
しかし、独身を貫いている人は、本当に遺伝子のせいで結婚していない可能性もあるのです。
中国の北京大学の研究者らが明らかにしたところによると、我々の体には「独身遺伝子」とでも呼ぶべき遺伝子があるのだとか。
「5-HTA1」という遺伝子にはG型とC型の二種があり、前者のG型を持っている人の場合、他人と親密な関係を築くと、快楽物質であるセロトニンの分泌量が減るのです。
つまり、誰かとラブラブな関係になることが、むしろ苦痛に感じるタイプの人がいるということ。
この遺伝子を持つ人は、そうでない人よりも独身のままでいる確率が約20%上がるそうです。
ただし、この結論に異を唱える研究者もいます。
反対派によれば、恋愛に積極的になるかどうかに関して遺伝子が関わっているとしても、その影響はごくわずかで、本人の気持ちの持ちようでどうにでもなるとのこと。
個人的には、反対派にやや分がありそうな気がします。
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2 笑い上戸にさせる遺伝子
会話をしているときによく笑う人というのは、その場の雰囲気を明るくしてくれます。
こういう人は、「笑いの沸点が低い」などと周りから言われることがありますが、ちょっとしたことでも笑うのは、遺伝子が原因かもしれません。
米国イリノイ州にあるノースウェスタン大学のクローディア・ハース教授によると、「変異型5-HTTLPR」という遺伝子を持つ人は、そうでない人よりもよく笑う傾向が強いそうです。
このタイプの遺伝子を持つ人は、ささいな感情であってもそれを増幅させることが多く、これが笑い上戸の原因だと考えられています。
ただ、ネガティブな感情をも増幅させてしまうので、落ち込みかたが激しくなることも。
3 幸せを感じやすくする遺伝子
幸せになりたいというのは、おそらくほぼ全ての人に共通した願いでしょう。
むしろ、それ以外の何を目的に生きるのか、と言えます。
しかし、幸せの感じやすさにさえ、遺伝子が関わっている可能性があるのです。
マイケル・ミンコフとマイケル・ボンドの両博士の発表した論文によると、FAAH遺伝子にA対立遺伝子の遺伝子コードが含まれていると、自分が幸せであると感じやすいのだとか。
その理由は、この条件に当てはまる人は体内の脂肪酸の量が多く、それにより不安感が軽減されやすいからだそうです。
この遺伝子コードを持つ人の割合が特に高い国はメキシコとナイジェリアで、実際にこれらの国では自分が幸福だと感じている人の割合も高め。
逆に、この遺伝子コードがあまり見られない国はアラブ諸国と東アジア諸国で、幸せを感じている人の割合も低いのです。
4 運転が下手になる遺伝子
この人の運転する車にだけは乗りたくない、と周りに思わせるほど危なっかしい運転をする人。
そういう人が身近にいるケースは珍しくありません。
運転が下手な人というのは、単に運転経験が乏しいだけなのか。
そういう場合も勿論あるでしょうが、遺伝的に決まる面もあるということを、カリフォルニア大学アーバイン校のスティーブン・クレイマー教授が発見しました。
通常、人間が車の運転などをするとき、その運動に関わる脳内の部位で、「脳由来神経栄養因子(BDNF)」というタンパク質が分泌されます。
このタンパク質は、脳細胞どうしの情報のやり取りや、記憶保持力を向上させる働きがあります。
しかし、ある種の遺伝子を持つ人は、このタンパク質の分泌が抑制されるのです。
それにより、運転の最中に様々なミスを犯し、更に、ミスから学んだことも時間とともに忘れてしまいます。
クレイマー教授の研究によれば、運転免許試験において、問題の遺伝子を持つ人は、持たない人に比べて30%以上もスコアが悪いのだとか。
ちなみに、アメリカ国内では、約3割の人がこの遺伝子を持つと見られています。
5 離婚しやすくなる遺伝子
優しい性格で思いやりがあり、人間的にも特に問題なさそうなのに、やたらと離婚回数の多い人がいます。
こういう人は、ひょっとすると遺伝が原因で離婚しているのかもしれません。
今年、ニューヨークにあるビンガムトン大学の研究者らが、結婚生活に影響のある遺伝子を見つけました。
その遺伝子とは、オキシトシン受容体(OXTR)遺伝子で、自分の配偶者をどのようにサポートするか、また、配偶者からのサポートをどう受け止めるかに影響します。
さらに、その遺伝子の特定の場所に、ある特殊なパターンが見られる夫は、妻からのサポートに対して満足感を得にくいのだとか。
このことが、夫婦生活への不満につながり、最悪の場合、離婚するのです。
こういう夫が離婚を避けるには、妻に対して日頃から意識的に感謝するようにすべきかも知れません。
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6 凶悪犯罪に関わる遺伝子
親が凶悪犯だと、その子も凶悪犯になる確率が上がるのか。
2014年、スウェーデンのカロリンスカ研究所で、それを確かめるための研究が行われました。
フィンランド国内の895名の犯罪者について、その遺伝子情報を調べたのです。
その結果、殺人などの重犯罪を犯した者だけに共通する遺伝子が発見されました。
それは「MAOA」と「変異型CDH13」と呼ばれるもの。
これらのうち、「MAOA」があるとドーパミンの代謝率が下がり、それによって酩酊中に暴力的になる傾向が強まるのだとか。
そしてこのことが、重大な犯罪を引き起こす一因だと考えられています。
さらに、犯罪を性犯罪に限定すれば、遺伝の影響はより強く現れます。
先のカロリンスカ研究所のニクラス・ラングストーム教授によると、自分の兄弟が性犯罪を犯している場合、当人が同じく性犯罪を犯す確率は、約5倍上がるのだとか。
また、父親が性犯罪を犯している場合、その息子が性犯罪に走る確率は4倍近く上がるそうです。
これは、スウェーデンで1973年から2009年の間に性犯罪で有罪判決を食らった、約21500人の男性を対象に遺伝子情報を調べた結果得られた結論です。
ただし、この結論が意味するところは、近親者に性犯罪者がいると必ず本人も性犯罪者になるということではありません。
また、「性犯罪者遺伝子」なるものが存在するということでもないのです。
先述のように、性犯罪歴のある兄弟を持つ人について、性犯罪を犯す確率が5倍になるとは言っても、スウェーデンにおける一般的な男性の性犯罪率が0.5%なので、その確率が2.5%に上がるということ。
遺伝によるこの数値変化をどう捉えるかは、人によって異なるでしょう。