どう考えても法律的にアウトっぽいのに、実は完全にセーフ。
法律家が問題ないと言えば、もはやそれまで。
釈然としないがどうしようもない。
今回はそんな、法律の抜け穴の数々をご紹介します。
〈originally posted on November 14,2016〉
1 アンティークなら銃の所持OK
イギリスは、基本的に銃に対する規制が厳しいことで知られています。
そのおかげで、2003年から銃犯罪の件数は約半分にまで下がったそうです。
ところが、この規制を比較的簡単に回避できてしまう抜け穴があります。
実は、「アンティーク」に分類される銃であれば所持しても問題ないとされているのです。
アンティークであれば、大抵はコレクターが部屋に飾ったりする目的で購入するものだという考えが根底にあるのでしょう。
しかし、100年前に製造された銃といえど、実弾を込めれば普通に発射できます。
そこに目をつけて、あくまで犯罪目的でアンティークの銃を入手する者が増え始めました。
ロンドン警視庁によれば、2012年からの3年間で発生した銃撃事件のうち、少なくとも31件は「アンティーク」の銃が使われていたとか。
少し考えれば、アンティークの定義が広すぎることに問題があるのは明らかですが、政府が法改正に向けて動き出したのは、2016年に入ってからです。
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2 お前の物は俺の物
2014年の統計によると、アメリカ国内における窃盗などの犯罪による被害総額は35億ドルです。
一方、警察が市民から没収した金銭の総額は……。
50億ドルです。
もちろん、これらは全て合法的に没収されたもの。
それにしても、何故これほどまで巨額になるのか。
ここにも法の落とし穴が存在します。
例えば、ある男性がスピード違反で警察に車を停められたとしましょう。
警察官が車内を確認すると、大金の入った鞄が。
このとき、その金はドラッグ絡みの犯罪で得たものだと警察官が思った場合、有無を言わさず没収できます。
何らかの証拠を提示する必要もありません。
仮に、その金が児童養護施設を建てるための資金の一部だとしても、警察官に「怪しい金」と思われたら終わりなのです(実際、オクラホマ州でそういう事例がありました)。
やましい所が何も無い場合、金を取り戻そうとする人も当然いますが、運良く返還されるのは全体の約6分の1に過ぎないとか……。
3 宗教に必要なら薬物OK?
大麻所持で逮捕された沖縄在住の元女優が、大麻の合法化を訴えていたのは記憶に新しいところです。
合法化の是非はともかく、日本で一般人が大麻を持っていれば逮捕は免れません。
アメリカにおいても26の州で大麻は違法とされています。
それらの州の一つ、インディアナ州で、州都インディアナポリスに住むあるグループが、法の抜け穴を見つけました。
同州の法律によれば、信教の自由を徹底させる趣旨から、個人の信条に必要な物はその所持を禁じてはならないとされているのです。
そこでこのグループは、大麻を神聖なものとする宗教を創始することで、禁止を見事に回避しました。
4 アメリカの銃販売の抜け穴
銃の所持が認められているアメリカにおいても、誰でも簡単に銃が買えるわけではありません。
ガンショップのオーナーは、客に対して必ず身元調査を行うよう義務付けられています。
そこで何か怪しい経歴が発覚すれば、販売を拒否するわけです。
ところが、その身元調査が3日以内に完了しなかった場合、そのまま銃を販売しても構わないのです。
銃犯罪を防ぐ上であまりに大きなこの抜け穴は、これまでに15000回以上も悪用されたと見られており、その中にはディラン・ルーフの起こした事件も含まれています。
2015年7月17日、サウスカロライナ州チャールストンの教会で、ディランは9人を射殺しました。
仮に、ディランに対してキッチリと身元調査が行われていたならば、彼の薬物使用歴が判明し、銃の所持を阻止できたはずなのです。
5 「とりあえず羊」作戦
アメリカの多くの州では、農業を奨励する目的から、農地に対する固定資産税が低く抑えられています。
ただ、「農地」であると認定される条件はかなり曖昧。
例えば、自分の所有する広大な土地に羊(または牛)を数頭放っているだけでも「農地」として通ってしまうのです。
減税額に比べれば、羊の飼育にかかる費用などごくわずか。
フロリダ州に巨大テーマパークを所有し、某ネズミのキャラクターで世界的に有名なある企業(というかアノ企業)は、この方法で年間9億5千万ドルもの節税に成功していると見られています。
6 「とりあえずタクシー」作戦
は車の交通量が非常に多く、渋滞をいかに解消するかが大きな課題となっていました。
2003年、車の量を少しでも減らすべく、平日にロンドン市内の特定エリアを走る車に対し、政府は一定の料金(1日あたり約15ドル)を課すようになったのです。
これにより、10年後には交通量が10%削減されたそうです。
しかし、どうしてもその料金を払いたくない人は、ある特殊な手段を使うようになりました。
タクシーは規制対象から外されているので、自分の車をタクシーとして登録する者が増え始めたのです。
車内に料金メーターを設置してさえいればタクシーであると認められ、客を乗せる必要もありません。
タクシーとして登録するのにかかる費用は年間200ドル程度なので、毎日15ドルを払うよりはるかにお得というわけです。
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7 「死の区域」の恐るべき(?)秘密
米国ワイオミング州にある「イエローストーン国立公園」は、世界初の国立公園とされています。
いきなり物騒な話になりますが、仮にこの公園内で殺人が起きたら、事件を管轄するのはどこの裁判所なのか。
それはもちろん、公園があるワイオミング州の裁判所であり、陪審員も同州に住む人の中から選ばれます。
ところが、この国立公園にはわずかに隣のアイダホ州にはみ出している区域があるのです。
では、そこで殺人が行われたら陪審員はどこから選ばれるのか。
同じ公園内で起きたのだから、やはりワイオミング州……かと思いきや、話はそう簡単ではありません。
被告人の権利について記された合衆国憲法修正第6条によれば、陪審員は犯罪が発生した州及び地区から選出されねばならないとあります。
となると、殺人が行われたのは厳密にはアイダホ州ですから、アイダホ州から陪審員を選ばねばなりません。
しかし、公園自体はワイオミング州のものであることを考えると、ワイオミング州から選ばねばならないともいえます。
ということは……。
結論 裁判ができない
冗談のようですが、本当です。
どちらの州から選出すべきか決められない以上、陪審員が揃わないのですから、裁判はいつまで経っても始まりません。
誰かがここで人を殺しても、裁かれることが無いというわけです。
この事実から、この場所にはいつしか「死の区域(Zone Of Death)」というあだ名まで付きました。
もっとも、今までここで殺人事件が起きた例は無く、この狭い区域内のみで犯罪が完結することも考えにくいことから、それほど問題視すべきことでもないという意見もあります。