地道な捜査
だけが捜査ではありません。
TVドラマにおいて常に安定した人気のあるジャンルの一つとして、刑事ドラマが挙げられます。
『相棒』や『遺留捜査』、『警視庁ゼロ係』など、何度も新シリーズが製作されているものについては、必ずチェックするという人も多いでしょう。
こういったドラマでは、如何にして難事件を解決するかが一つの見どころになっており、時に主人公は、かなり奇抜な方法で犯人を見つけ出します。
しかし、これからご紹介するような解決法は、色んな意味で、刑事ドラマに採用するのはまず不可能です。
〈originally posted on July 24,2018〉
1 オウムが唯一の捜査協力者
1942年、ニューヨークでレストランを経営するマックス・ゲラーという男性が、店内で何者かに殺害されるという事件がありました。
目撃者の数は約20名。
しかし、証言することによって犯人から報復されるのを恐れたためか、積極的に捜査に協力しようとする人はなかなか現れず。
彼らの他に、事件を目撃していた存在といえば、名物マスコットとして店の中で飼われていた一匹のオウムだけ。
オウムが犯人を教えてくれたらどんなに捜査が楽になるか。
おそらくはそんなことを考えつつ、ダメもとで刑事がそのオウムに話しかけると、
という言葉を連発するばかり。
「強盗(robber)」という単語をそのオウムが知っているらしいことは分かったものの、「強盗だ!」と言われたところで大して捜査の役には立ちません。
有力な手がかりの無いまま、1年が経過。
あるとき、このオウムに再び注目した刑事が現れました。
実はそのオウム、店の常連客の名前を覚えて、入口でそれらの名前を連呼するように訓練されていたのです。
となると、犯人の名前を覚えている可能性もあります。
ここでその刑事はあることに気づきました。
オウムが「ロバー!ロバー!」と言っていたのは、ひょっとすると人の名前、すなわち「ロバート(Robert)」ではないか、と。
早速、レストランの常連客の名前を調べてみると、「ロバート・バトラー」なる人物のいることが判明。
しかも、事件のあった直後にその男は別の州に移り住んでいました。
かなり怪しい男ですが、しかし彼を逮捕するには一つ重大な問題があります。
それは、容疑者の特定につながる証言をしたのが、一匹のオウムだけであるということ。
オウムがお前の名前を口にしたからお前を逮捕する、などと言われても、犯人はまず納得しないでしょう。
ところが、警察にとってラッキーなことに、この話を聞かされたロバート・バトラーは、自分が犯人であることを素直に認めたのです。
バトラーはその後、裁判で有罪が確定し、懲役15年を宣告されています。
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2 蚊の体内の血液で容疑者を特定
2008年、フィンランドの首都ヘルシンキ北部の町で、一台の車が車道脇に乗り捨てられているのを、地元の警察が発見しました。
その車が盗難車であることはすぐに判明しましたが、盗んだ犯人の目星は全く付けられず。
しかし、そのとき現場にいた巡査部長は、普通ならまず気にも留めないモノに注目しました。
それは、車の中にいた「蚊」です。
彼は一匹の蚊が車内に止まっているのを発見すると、犯人の血をその蚊が吸ったかもしれないと考え、蚊を捕まえて研究機関に送ったのです。
そして、蚊の血液から採取したDNAの鑑定結果を基に、犯罪歴のある者を警察のデータベースで調べてみると、一人の男のDNAがピタリと一致しました。
その男に事情を聴いてみると、ヒッチハイクをしている途中でたまたまその車に乗せてもらっただけ、という言い訳が。
車の持ち主が本当にこの男を乗せたかどうかは、調べればすぐに明らかになるわけで、これは相当に苦しい言い訳と言わざるをえません。
ちなみに、フィンランドにおける犯罪捜査の歴史で、昆虫によって犯人が明らかとなったのはこれが初めてなのだそうです。