男性の場合、異性を知らない期間が長引けば長引くほど、精神的に追い込まれる可能性が高くなります。
30歳まで童貞だと魔法が使えるようになる、というのは、ネット上の古典的な知識の一つ。
40歳まで女性を知らないままだと異世界を行き来できるようになるとか、50歳までだと守護天使になれるとか。
そんなことが本当にあるのかどうかはさておき、男が女性と付き合えないまま生きていくというのは、それだけで人生の難易度が跳ね上がります。
しかし、付き合えないだけならまだしも、そもそもこの世に女性が存在しないと信じている人がいたとしたら。
今回は、そんな男の話です。
〈originally posted on August 26, 2021〉
1 ベトナム戦争の終結を知らぬまま40年
ベトナム人のホー・ヴァン・ラング氏は、現在49歳。
彼は、1歳のときから40年以上もの間、父親と兄と3人だけで、ジャングルの中で生活していました。
彼の父は、ベトナム戦争の最中、米軍の爆撃により妻と二人の子供を失い、それを機に、生き残った幼い息子二人を連れ、1972年にジャングルへと逃げ込んだのです。
それからの毎日は、完全に狩猟生活の日々。
家族の中でも、特にラングは動物を狩る能力に長けていました。
彼が獲物にするのは、主にネズミ、トカゲ、カエル、ヘビ、サルなど。
ちなみに、ネズミを食べるときのお気に入りの部位は、頭だそうです。
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2 外界と隔離された生活
ラングたちは、狩りや採集をしていると、たまに、他の人間の姿を目撃することがありました。
しかし、彼らは他者との接触を極度に嫌うあまり、決まってその場から逃げていたのです。
こういったわけで、外部とのコミュニケーションは完全に絶たれた状態。
ラングが会話をする相手は、父親と兄だけです。
さらに、父親は、母親のこと、ひいては女性のことについて、ラングに何一つ教えたことが無かったとか。
そのため、ラングは、この世に「女性」という、自分とは異なるタイプの人間がいることを、ずっと知らずにいたのです。
3 さらばジャングル生活
こうした生活が何十年も続いていましたが、ラングが41歳になった、今から8年前、変化の時が訪れました。
彼らはジャングルから救出され、遂に現代の文明に触れることになったのです。
サルを捕まえて食料としていた日常から、ビルが立ち並び、車が走り、パソコンやスマホがある日常へ。
この変化は、タイムスリップしたに等しいほど衝撃的だったことでしょう。
新しい生活に慣れるまでに、ラングが苦労したであろうことは、想像に難くありません。
彼の兄の話では、ラングは精神面がまだ赤ん坊並みであるとのこと。
善悪の区別が付いておらず、自分の行動を制御しきれない面があるのです。
現在では、ラングは女性という存在を理解し、当然、見た目で男女を区別することもできます。
しかしながら、男性・女性という区別の本質的な意味については、感覚的にはまだ理解できていないのだとか。
40年以上もの間、女性の存在すら知らなかったのですから、それも無理の無い話。
彼は、女性を知らないだけでなく、生まれてから性的な欲求を感じたことも無いそうです。
ちなみに、彼の父親は、ベトナム戦争が既に終わっているという事実を完全には受け入れられておらず、将来的には再びジャングルに戻りたいと語っています。
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4 今もなお孤立して生き続けるセンチネル族の謎
ラングの場合、父親によってジャングルに連れてこられた結果、文明社会との関係を絶つことになったわけですが、現在でも、自分たちの意思によって外部との接触を絶っている人々がいます。
それが、インド洋東部の北センチネル島に住む、センチネル族。
人口は数百人程度とされており、何百年もの間、外部と一切交流せず、その島で原始的な生活を営んでいるとか。
これまでに何度か、彼らへの接触が試みられました。
しかし、センチネル族は、自分たちに近づくよそ者を、弓矢と槍で容赦なく殺そうとするので、ことごとく失敗に終わっています。
しかも、彼らの話す言語は独自のもので、意思疎通は極めて困難。
北センチネル島は、人間が暮らす場所としては、永遠に時間の止まった世界と言えるかも知れません。
そんなセンチネル族に関して、一つの大きなミステリーがあります。
2004年、北センチネル島を含むアンダマン諸島に、大規模な津波が発生しました。
この津波は、アンダマン諸島各地に甚大な被害をもたらし、もちろん、北センチネル島も例外ではありません。
このため、センチネル族は、そのほとんどが、津波の犠牲になったと考えられました。
ところが、津波が収まってから程なくして、北センチネル島の様子を確認するためにヘリコプターが島に向かったところ、森の中からセンチネル族と思しき住民が現れ、槍を振ってヘリを威嚇し始めたのです。
彼らは、津波の被害を免れていました。
この津波によって、他の地域で大勢の犠牲者が出たにも関わらず、なぜ彼らだけ生き残れたのか。
外部からの救助も何も無い状況で、如何にして津波に対処できたのか。
これは、センチネル族に関する大きな謎とされています。
そして、彼らに直接話を聞く手段が事実上存在しない以上、この謎が解明されることは、永久に無いでしょう。