仕事でミス
を一度もしたことの無い人間など、まずいないでしょう。
誰でも一度や二度(あるいは数えきれないほど)のミスはやらかします。
人間ですから。
ただ、職種によっては、わずかなミスさえ絶対に許されません。
例えば医者。
「あー、切る血管間違えちゃたよー、てへ」
こんな医師が執刀するような病院には怖くて行けません。
これは極端な例ですが、しかし、ここまで分かりやすいミスでなくても、大惨事が起きることはあります。
〈originally posted on February 13, 2024〉
1 荷物の誤配で人が死ぬ
他人の荷物が誤配された経験のある人は少なくありません。
かくいう筆者もあります。
ただ、すぐに誤配に気づけばそれほど大きなトラブルに発展することは無いでしょう。
一部の例外を除いては……。
2022年9月8日、米国ジョージア州に住むフェルナンド・ソロマンという男性が、フードデリバリーを利用したときのこと。
注文された品を持って店の配達員がやって来たものの、その配達員は住所を間違え、ソロマンの隣の家に配達してしまったのです。
待てど暮らせど配達員が来ないことを疑問に思ったソロマンが店側に確認すると、どうやら隣家に誤配された様子。
そこで彼は、隣家を訪ねました。
あとは事情を説明して、誤配されたものを受け取るだけ。
簡単な話です。
ソロマンは、隣家のチャイムを押しました。
隣人がチャイムの音に気づき、ドアカメラの映像を見ると、そこにはポケットに手を伸ばすソロマンの姿が。
この行動を「銃を取り出そうとしている」と勘違いしてしまうのは、やはりアメリカならでは。
自分の注文した食べ物を取りに来ただけの男を強盗だと思い込んだ隣人は、ドアを開けるなりソロマンに発砲。
その後、救急隊員が派遣されたものの、命は助かりませんでした。
発砲した隣人は加重暴行などの罪で有罪となっています。
単なる誤配でも、場合によっては人の命に関わるというのは、アメリカが抱える銃社会の問題を浮き彫りにしているようにも思えます。
2 命に関わるオーブンのスイッチ
プラスチック製のカヤックはどうやって製造するのか。
工場によって異なるでしょうが、イングランドのとある工場では、巨大な「オーブン」で製造していました。
2010年の某日、その工場に務めるアラン・カテラルという男性が、オーブン内に付着したプラスチックのゴミを清掃するため、オーブンの中に入ったのです。
そこへ、別の従業員の男が通りかかりました。
この男、実は、アランの娘の婚約者。
その男は、オーブンの前に来ると、当たり前のようにオーブンのスイッチをオンに。
このとき、オーブンの中ではまだアランが掃除をしている真っ最中でした。
どう考えてもヤバい状況です。
さらにヤバいことに、このオーブンはスイッチを入れると自動的にドアが閉まり、さらにはロックがかかってしまう仕様。
閉じ込められたアランが手にしていたのは、プラスチックをこそぎ落とすためのバールのみ。
バールでドアをこじ開けるのはほぼ不可能です。
恐らく彼は、内側からドアにタックルをするなりして助けを呼んだことでしょう。
しかし運悪く、彼の置かれた危機的状況に気づける者は、周りに一人もいなかったのです。
この後、アランを待っていた運命は推して知るべし。
さて、不運な事故によって亡くなってしまったアランについて、その責任を取るべき者は一体誰なのか。
やはりオーブンのスイッチを入れた男か。
そうではありません。
そのオーブンのを製造した会社です。
裁判所は、その会社に製造責任があると認定しました。
3 航空機を木っ端微塵にした凡ミス
1950年代、航空機産業に参入する企業が続々と増え始めたころ、頭角を現したのが、イギリスのデ・ハビランド社。
同社のジェット旅客機「コメット」は、当時の最先端技術を数多く盛り込み、他社の旅客機とは一線を画していました。
その高度な技術で、ライバル機よりも高く、速く飛ぶことが可能だったコメットが、1954年、飛行中に空中分解。
この事故により、56人が亡くなりました。
先端技術の結晶であるはずのコメットは、なぜ空中分解したのか。
それは、極めて単純な設計ミスが原因だったのです。
そのミスとは、四角い窓。
コメットの窓は、全て四角い形状をしていました。
飛行中、旅客機の機体には強い圧力がかかります。
その圧力は、丸い形状よりも尖った形状に集中する性質があるので、尖った部分は破壊されやすくなるのです。
旅客機の機体表面で尖った部分というと、コメットの場合、四角い窓の四隅になります。
つまり、窓という窓の角に圧力が集中し、機体が破壊されたというわけ。
当時、この原理に気づいていたエンジニアはいなかったとされています。
よって、コメットの事故があってから、すべての旅客機で、窓の四隅は丸い形状になったのです。
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4 刑期の10分の1で自由になった囚人
2018年10月11日、イギリスのロンドンで、ジャレル・ホランド(当時21歳)という男性が、男にナイフで刺され、重傷を負いました。
犯人は、ラストン・ドッド(当時25歳)という男。
ドッドは、ホランドと口論になった際、頭にカッと血が上り、持っていたナイフでホランドの背中を複数回刺したのです。
ホランドは、すぐに病院で治療を受け、一命は取り留めましたが、非常に危険な状態でした。
その後、警察による大捜索のすえ、ドッドは逮捕され、裁判により懲役9年の実刑に服することに。
ところが、ドッドが収監されてから1年と経たない2019年の11月、ホランドは信じがたい光景を目にします。
ドッドが平然と道を歩いていたのです。
懲役9年を食らったはずの囚人が、1年と経たず自由の身。
誰もがすぐに考えるのは、「脱獄したのか?」ということでしょう。
しかし、ドッドは脱獄などしていません。
堂々と刑務所を出所し、自由になったのです。
そのカラクリは至って単純(+おバカ)。
ドッドに懲役9年が言い渡されたとき、裁判所の職員が誤って「懲役9ヶ月」と記録してしまったのです。
このミスに気づいていたのは、ドッド本人だけ。
他の誰も気づいていませんでした。
9ヶ月の刑期を終え、ドッドが釈放されることになったとき、彼は内心、笑いが止まらなかったことでしょう。
その後、ドッドは行方をくらまし、警察は、またもやこの危険人物の大捜索を始めるはめになったのでした。
5 核廃棄物と猫砂の微妙な関係
今から約10年前、アメリカのロスアラモス国立研究所では、核廃棄物に「ある意外な物」を混ぜることで、その危険性を低減させていました。
その意外な物とは、猫砂。
そうです。
猫のトイレ用の砂です。
何でそんな物を混ぜるのかというと、液体になっている核廃棄物を固形にするため。
核廃棄物は、液体の状態よりも固形の方が安全性が高いのです。
固形にしてしまえば、それが施設のどこかから「漏れ出す」危険も無くなりますし、液体よりも扱いやすいというわけ。
しかし、2014年、職員の一人が些細なミスを犯しました。
普通の猫砂ではなく、「生物分解性の猫砂」を混ぜてしまったのです。
猫が糞をしたとき、その糞を分解してくれるわけですから、飼い主にとってはありがたい性能といえるでしょう。
ところが、この砂に混ざるのは、糞ではなく核廃棄物。
核廃棄物は、分解されては困ります。
何も反応を起こさず、そのままの状態で保管しなければならないのです。
にも関わらず、生物分解性の猫砂と混ざってしまった核廃棄物は、次第に分解を始め、徐々に発熱。
55ガロン(約200リットル)の容器に入れられた核廃棄物(+猫砂)は、遂に爆発しました。
これにより、21人の職員が被爆。
飛散した核廃棄物を全て取り除くのに要した期間は3年。
費用は20億ドルもかかったとされています。