Z世代
にとって、ネットは日常生活において当たり前に存在するものでしょう。
SNSで情報収集、チャットアプリでメッセージのやり取り、YouTubeで動画視聴。
スマホ一台あれば何の不自由も無い。
逆に、ネットの無い生活など考えられない。
そんな感じです。
しかし、時代を遡れば、ネット環境は当たり前のものではありませんでした。
そんな時代のネット事情には、今の感覚では理解不能なものも多々あります。
今回は、そんな奇妙なネット事情の一部をご紹介しましょう。
〈originally posted on January 13, 2024〉
1 ダイヤルアップ接続
今の時代、自宅でネット環境を手に入れる方法はいくつかあります。
例えば、光回線。
通信速度、通信品質という点では、これが最も安心できます。
他にも、ホームルーターを設置して、Wi-Fiで接続するという手もあります。
これなら工事も不要。
しかし、かつてはネット環境を整える手段がほぼ一択という時代がありました。
それが、「ダイアルアップ接続」時代。
これは、固定電話の電話線を使ってネット通信を行うというもの。
当時、固定電話はどこの家庭にもありましたから、工事の必要などはありません。
プロバイダと契約さえすれば、すぐにでもネットが使えます。
ただし、通信速度は今とは比較にならないほど遅い。
今の通信速度が飛行機だとすると、ダイアルアップ接続の通信速度は、赤ん坊のよちよち歩き。
大げさでなく、それくらい遅いのです。
ウェブサイトを訪れても、トップページが完全に表示されるまでに数秒はかかります。
重いサイトになると、10秒を超えることもザラ。
そんな不便なネット環境を少しでも快適にするため、ソースネクストという会社は「驚速」というソフトを販売していました(現在も同名のソフトは販売中)。
このソフトには、ページの「先読み」という機能があり、現在表示されているページをユーザーが見ている間に、リンク先のページを予め読み込んでおくのです。
これにより、リンクを辿ったときに、そのリンク先が素早く表示されるというわけ。
なかなか良いアイデアなのですが、実際に使用した人の感想は、やや微妙なものだったとか……。
2 直リン禁止
直リン禁止とは何か。
これは、「私のウェブサイト内の記事に、勝手にリンクを張るなよ」という意味。
例えば、今、僕が書いているこの記事に、他のサイトが無断でリンクを張るのは許さない、というようなものです。
インターネットの便利さは、ある記事から別の記事へとどんどんリンクを辿って情報を入手できることにあるのですが、それを真っ向から否定するのが、「直リン禁止」。
個人がやっているブログでも「直リン禁止」という警告がなされていることはありましたが、どちらかといえば学校・教育関係のサイトに多く見られました。
中学校や高校の公式サイトを訪れると、「このサイトにリンクを張ることはできません」などとハッキリ表記されているのです。
Z世代の人たちからすれば、「リンクを張れないってどういうこと?」と不思議に思うことでしょう。
SNSで情報を共有するのが当たり前の時代にいれば、それも無理の無い話です。
3 BBS荒らし
昔は、様々な企業のウェブサイトで、BBS(電子掲示板)が設けられていました。
様々な話題で自由に書き込みができることで、ユーザー同士の交流を深めてもらうという狙いがあったのです。
とは言うものの、ゲーム会社のBBSには、バグ報告が書き込まれることもしばしば。
ゲーム会社にとって、自社の公式サイトにバグ報告を書き込まれることほど不名誉なことはありませんから、多くのサイトでは、BBS利用のルールとして、「バグ報告はメールでしてください」という注意書きがありました。
多くの場合、BBSは平和的に利用されていましたが、サイトの運営会社を悩ませていたのが、「BBS荒らし」の存在。
これは、BBS上で、他者のコメントに対する嘲笑的、侮蔑的、攻撃的なコメントを書き込み続け、利用者をひたすら不快にさせるのが目的の行為。
荒らし行為があまりにも酷い場合は、運営会社がプロバイダに連絡し、該当する人物のアクセスを遮断してもらう、という措置がなされていました。
しかし、個人がメッセージを送る手段が増えるに連れ、BBSはその役割を失い、姿を消していったのです。
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4 モデムばら撒き事件
冒頭でご紹介した「ダイアルアップ接続」に次いで現れたのが、「ADSL接続」です。
ダイアルアップと異なり常時接続であり、また、通信料に関わらず毎月の料金が固定で、しかも通信速度が桁違いに速い。
そんなADSL接続を自宅で利用するために必要なアイテムが、「モデム」と呼ばれる機器。
通信大手のS社は、かつてこのモデムを日本中の街頭でばら撒いていました。
「モデム0円!」という看板を掲げて、スタッフが道行く人たちにモデムを配っていたのです。
もちろん、月々の料金は発生するので、タダでネットが使い放題というわけではありませんが、当時は「ADSLって何?」という人も多い時代ですから、ネットに接続できる機器をタダでくれるのなら契約しようという人が続出。
しかし、これには大きなワナが待っていました。
ADSL接続の通信品質には、自宅と最寄りのNTT局舎との距離が大きく影響するのです。
局舎が自宅から近いほど通信は安定し、遠いほど不安定になります。
局舎が遠すぎると、ブチブチと通信が途切れまくって、まるで使い物になりません。
ここでの問題は、S社と契約する際、自宅と最寄りのNTT局舎とのおおよその距離を把握していた人が一体どれだけいたのかということ。
おそらく、そんな人はごく少数派だったことでしょう。
その結果、タダでもらったモデムを自宅に設置したものの、まともにネットが使えず、利用料金だけが引き落とされていく、という状況に陥った人はかなりの数に上っていたと思われます。
現在、S社のことがどうにも好きになれない人の多くは、上記の「モデムばら撒き」による被害者なのかもしれません。