罪を犯した人間は、自分が逮捕される瞬間、おそらくは絶望に近い心境に陥ることでしょう。
一方で、何もしていないのに誤認逮捕された人は、絶望感に浸っている場合ではありません。
取調室でカツ丼を食って腹ごしらえをしたら、全力で無実を訴えないと人生破滅です。
では、何もやっていないわけではないが、なぜ逮捕されたのかよく分からない場合はどうすればよいのか。
ある意味、こういう場合が一番厄介です。
〈originally posted on November 15,2019〉
1 ホテルの自室で裸になったから逮捕
ユナイテッド航空の熟練パイロットであるアンドリュー・コリンズという男性は、今年、米国コロラド州デンバーにあるホテルの10階に滞在していたところ、逮捕されました。
自分の部屋で裸になって電話をしているとき、その姿を窓越しに見た人が警察に通報したのです。
公共の場で裸になれば逮捕されて当然ですが、しかし彼が裸になっていたのは、ホテルの自室。
コリンズは、部屋の窓は色付きで外から見えないようになっていると思いこんでいたのですが、実際は丸見えでした。
しかも、ホテル側からはそのことについて説明は無し。
普通に電話で話をしていたら、令状すら持っていない警察官が部屋に突然入ってきて、彼は後ろ手に手錠をかけられたのです。
この奇妙な逮捕劇の後、彼の家族も被害を受けました。
コリンズの3人の息子はアメリカ空軍に所属していますが、上官からこの逮捕をネタにからかわれることもあったとか。
その後、コリンズに対する逮捕が誤りだと認められたものの、それまでに彼は数日間の刑務所生活に加え、半年間の停職という不当な扱いを受けていました。
不幸としか言いようがないコリンズには、日本円で約3300万円の補償金が支払われることになっています。
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2 サンドイッチを食べたから逮捕
これも最近の出来事ですが、ビル・グラックマンと名乗る男性が、カリフォルニア州にあるプレザント・ヒル駅のプラットホームにいたところ、警察官に逮捕されました。
彼は、サンドイッチを食べていただけです。
もちろん、麻薬入りのサンドイッチとかではありません。
ビルは、駅の売店で購入したサンドイッチを食べていたところ、逮捕されたのです。
確かに、この地域では駅のプラットホームでの食事は違法。
しかし、ビル自身は普段から駅のホームで食べていますが、それまで何のトラブルも無かったとか。
以下は、彼が逮捕されるときに交わされた会話です。
ビル:「これだけの人がいて、俺だけ狙い撃ちで逮捕するのか?」
警官:「物を食べてるだろ。抵抗すれば刑務所に行くことになるぞ」
ビル:「理由は?サンドイッチを食べただけで?」
警官:「違う。お前が抵抗するからだ」
その後、ビルは手錠をかけられ、連行されました。
これに対して、ネット上の反応は分かれています。
法は法なのだから、それに違反すれば逮捕されるのは当然、という声もあれば、サンドイッチごときで逮捕なんて行き過ぎだという声も。
そして、これは今回の逮捕に影響しているのかどうか分かりませんが、逮捕されたのは黒人男性であり、逮捕したのは白人男性なのです。
3 「手のピストル」を友だちに向けたから逮捕
2019年9月18日、米国ミズーリ州のオーバーランドパークにあるウェストブリッジ・ミドルスクールで、12歳の女子生徒が、手をピストルに見立ててクラスメートに向けたことにより逮捕されました。
その生徒は、「もし5人殺せるとしたら誰を殺す?」と友人から質問されたところ、「手のピストル」を4人のクラスメートに一人ずつ向け、最後に自分に向けたのです。
これが原因で彼女は校長室へと連れて行かれ、その後、警察がやって来てその生徒を逮捕。
容疑は「脅迫」です。
彼女の祖父のコメントによれば、孫娘が銃を入手することなど不可能で、本気でクラスメートを傷つけようとしていなかったのは明らかなのだから、この件は校長室で処理すれば済んだはずとのこと。
学校での発砲事件が、現実的な危険性として考えうるアメリカだからこその逮捕と言えるかも知れません。
4 ダンナに掃除を頼んだから逮捕
ノース・ヨークシャー出身のヴァレリー・サンダース(58)は、夫のマイケルと2012年に知り合い、2年後に結婚しました。
結婚当初は特に夫婦仲に問題は無かったのですが、マイケルがトレーニングジムのマネージャーの仕事に就いてから状況が一変します。
マイケルは毎日毎日筋トレに明け暮れ、家事をやらなくなったのです。
そこで彼女は、ジムでの筋トレを早めに切り上げて家の掃除をやっておいて、という内容のメモを夫に残しました。
その結果、2018年の4月、4台のパトカーがヴァレリーの家に来て、警察官が彼女を逮捕。
逮捕の理由は、配偶者に対して強制的・支配的な言動があったから。
暴力を伴わない形での家庭内暴力に対処するため、2015年にこういった行為が刑罰の対象になったのです。
逮捕後、ヴァレリーは17時間を刑務所で過ごし、釈放されました。
2019年6月に彼女の裁判が行われる予定でしたが、直前になって起訴は取り下げられ、彼女は完全な自由の身に。
ヴァレリーは取材に答えて、
「これが『支配的な言動』にあたるのなら、世の中の夫婦は全て裁判を受けることになるわ」
とコメントしています。
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5 酒を飲んでいないのに飲酒運転で逮捕
2019年10月、米国ノースカロライナ州で、建築業を営む46歳の男性が、飲酒運転で捕まりました。
それ自体は珍しくはありません。
ただ一点だけオカシイのは、この男性、酒を一滴も飲んでいなかったのです。
酒を飲んでいないのにも関わらず、呼気検査の結果、ビール10缶を飲んだ状態に相当するアルコールが検出されました。
ひょっとしてこの男、自分の体内でアルコールを作ってしまう特異体質なのか、と思われた方。
正解です。
彼の病名は、「ビール自動醸造症候群(ABS)」。
この病気のせいで、彼の胃袋には常に大量のイースト菌が存在しており、炭水化物をアルコールへと変えてしまうのです。
歩くビールサーバーと化してしまった彼は、車の運転中に、気づいたら酔っ払っているということがあり得る状態でした。
リッチモンド大学のファハド・マリク教授によると、この男性がABSになった原因は、彼が使用していた抗うつ剤の可能性があるとか。
現在、彼は抗うつ剤の使用を止めており、突然ほろ酔い気分になることは無いそうです。