ゾディアック・キラー
とは、1960年代後半から1970年代初頭にかけて、アメリカの北カリフォルニアで犯行を重ねていた連続殺人犯の異名です。
この犯人が標的にしていたのは、主に若いカップル。
確実に判明しているだけで、5人が犠牲になっています。
しかし、実際に殺害された人数は、20人以上に上ると見られており、犯人自身の言葉によれば、犠牲者の総数は37人。
自惚れた殺人鬼にありがちなこととして、彼は、複数の新聞社に対し、警察を挑発する手紙を何度か送りつけていました。
(アイキャッチ画像:ウィキペディアより)
〈originally posted on December 13,2020〉
1 手紙の全容
手紙の中で、ゾディアックは、自分の正体につながるような情報を、暗号として記載。
1969年9月に送られた手紙には、408個の記号からなる暗号文が添えられていました。
この暗号は、カリフォルニア州サリナスに住む学校教員とその妻によって解読されています。
その内容は、ゾディアックにとって、殺人は至上の喜びを与えてくれるものであり、その犠牲者たちは皆、彼の死後、奴隷としてゾディアックに仕えることになる、というものでした。
同年11月8日には、新たな手紙が新聞社に送られ、その中には、340個の記号からなる暗号文が。
この暗号文は、「Z340」と呼ばれており、50年以上もの間、誰も解読することが出来なかったのですが、今月、アメリカ、オーストラリア、ベルギーに住む有志3人が協力し、遂に解読に成功したのです。
その暗号文の内容は、以下の通り。
君たちが犯人探しを大いに楽しんでくれているといいのだが、それはさておき、私のことを取り上げた例のテレビ番組に出演した人物は、私ではない。
私は、ガス室など怖くないのである。
むしろ、ガス室に送られた方が、早く天国に行けるというものだ。
天国では、我が奴隷たちが、私に尽くしてくれるであろう。
他の人間には、そのような奴隷も何も無い。
だから死ぬのが怖いのだ。
私には、天国での快適な人生が待っているのである。
ちなみに、「例のテレビ番組」というのは、この暗号文が送られる2週間前、あるテレビ番組の放送中に、ゾディアック・キラーを騙る者から電話があり、その男が、死刑になってガス室行きになるのが怖い、と語っていたことを指しています。
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2 さらに残り続ける「謎」
ゾディアック自身が、自分の本名をこの暗号文に含めたと主張していたため、50年間も謎に包まれていたこの暗号文が解読されれば、ゾディアック・キラーの正体が判明するのではないか、と期待されていました。
しかし残念ながら、上記の通り、この暗号文には、犯人特定につながる情報は何も無かったのです。
ゾディアックが送った手紙は、1969年12月20日、当時名を馳せていた弁護士であるメルヴィン・ベリの元にも届きました。
その手紙の中で、彼は、
「この先、もう長くは自分を抑えきれない。助けてほしい」
と記し、それまで見せなかった内面を吐露。
その翌年の3月、キャスリーン・ジョンズという22歳の女性が、車を運転していたところ、後ろを走る男性ドライバーから、車を止めるように声をかけられます。
彼女がその言葉に従って車を止めると、男は、「後輪が緩くなっているから直してあげよう」と嘘を言い、タイヤのナットを緩めました。
キャスリーンが再びエンジンをかけて発進させると、後ろのタイヤが脱輪。
男は、近くのガソリンスタンドまで送ってあげる、と言い、彼女は男の車に乗ります。
しかし、男の話ぶりから危険を感じたキャスリーンは、ドアを開けて車を降りたのです。
それから彼女は警察に行き、そこで、ゾディアックの似顔絵から、問題のドライバーはゾディアック本人であると確信。
その1ヶ月後、ゾディアックから新聞社に届いた手紙には、自分の車に乗せたキャスリーンのことが書かれてありました。
彼女の体験は、ゾディアックの正体解明への有力な手がかりになるかと思われましたが、結局、逮捕には結びつかず。
実は、警察がゾディアックを逮捕できたかもしれないチャンスは、他にもあります。
1969年11月9日、二人の警察官が、ある男を呼び止め、3分間ほど職務質問をしたのですが、その男こそが、ゾディアックでした。
ゾディアックは、その後も新聞社に手紙を送りつづけ、1974年1月29日の消印が押された手紙を最後に、完全に鳴りを潜めることに。
最後の手紙には、1973年に公開されたホラー映画『エクソシスト』について、「これまでで最高の風刺コメディだ」と書かれてあったとか。
50年もの間、誰も解読できなかった暗号文の内容が明らかになったことは、偉業だと言って間違いないでしょう。
しかし、そのことが、ゾディアックの正体解明に繋がらなかったのは、何とも歯がゆい思いがします。
果たして、ゾディアック・キラーは、現在どこで何をしているのか。
この謎は、この先、ずっと闇に包まれたまま終わるのかも知れません。