ヒーロー的な行動
は、誰にでもできるものではありません。
他人の命を救うため、時には自分の命をも危険にさらすというのは、相当の勇気と覚悟が必要です。
だからこそ、そういった行為は多くの人から讃えられます。
まさにヒーローです。
しかし、そのヒーローが犯罪者へと転落したら……。
今回は、自らが得た栄光を台無しにしてしまった人の話です。
〈originally posted on December 2,2019〉
1 ヒーロー警察官からドラッグ密売人に
2001年、イギリスのウェスト・ミッドランズで警察官として勤務していたアンドリュー・スミスは、燃え盛る炎の中から人命を救助したことで表彰されました。
彼は高所恐怖症であるにも関わらず梯子を上り、アパートの3階で助けを求めている男性を見事に救い出したのです。
それから約10年後の2012年、コヴェントリー市内のパブで、薬物の取引が行われているという情報を警察が入手。
警察官が問題のパブに到着したときには、店の用心棒たちに一人の男が囲まれている状況でした。
その男こそ、当時37歳のスミス本人。
彼は、店の奥のトイレでコカインなどを密売していたのです。
スミスは逮捕され、それによって、彼が得た名声が全て消え去ったのは言うまでもありません。
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2 ヒーローになり損ねたホームレス
2017年5月22日、イギリスのマンチェスター・アリーナで自爆テロがあり、23名が死亡、120名以上が負傷しました。
このとき、たまたま現場にいたクリス・パーカーというホームレスの男は、メディアの取材に答えて、重傷を負った女性を介抱したり、血まみれの子供にTシャツを掛けてあげたりしたと語ったのです。
このことが報じられると、彼は世間から「ホームレス・ヒーロー」と称賛され始めました。
さらに、彼をホームレス状態から救うべく、有志の呼びかけによって義援金が集められ、その額はなんと52000ポンド(約730万円)に。
これだけの資金があれば、職を得て人生をやり直すチャンスは十分にあります。
しかしその後、事件現場の監視カメラの映像を確認すると、そこに映っているパーカーの様子に不自然な点が。
彼は、犠牲となった人々の間をウロウロしているだけでした。
そして、意識を失っている女性のバッグから財布を窃取。
その中にあったクレジットカードを使って、近くのマクドナルドで金を引き出していました。
また、別の10代の女性からスマホを盗んでもいたのです。
パーカーは長らく逃走中でしたが、民家の屋根裏に隠れているところを警察が発見し、そのまま逮捕。
要するにこの男、ヒーローでも何でもないわけで、裁判官も法定で、
「君はヒーローのフリをしていたが、どこにでもいる窃盗犯でしかない」
と言って切り捨てました。
パーカーは裁判で懲役刑を宣告され、彼のために集められた52000ポンドは、寄付した人々に全て返却されています。
3 ノートルダム大聖堂を守ったヒーローが婦女暴行
2019年4月15日、パリのノートルダム大聖堂で火災が発生したとき、大勢の消防士たちによる決死の消火活動のおかげで建物は辛うじて全焼を免れ、彼らはフランス国民からヒーローだと讃えられました。
マクロン大統領も彼らをエリゼ宮殿に招き、その功績を激賞。
しかしその翌月、消防署内で女性が性的暴行を受ける事件が発生しました。
一人の女性観光客が、ある消防士と親密になったところ、消防署に連れて行かれ、そこで6人の隊員によって襲われたのです。
その6人は全て、大聖堂の猛火を食い止めた男たちでした。
このニュースは、フランス国民にとっては悪い冗談であってほしいと思われたことでしょう。
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4 火事から家族を救った女性が放火魔に
イギリスのコーンウォールに住むカレン・ペドリーという女性は、2001年に自宅が火事になった際、自分の命を顧みずに家族を助け出しました。
当時、彼女の勇敢な行動は地元で大きな話題に。
しかし、その体験が彼女にとって負の方向へ作用します。
ペドリーは、炎そのものに対する執着心が芽生え、やがて放火を行うようになったのです。
彼女が放火を行っていた期間は8~9年。
火災の現場に消防隊が到着すると、彼女は第一発見者として虚偽の情報を提供し、自分の犯行を隠すこともあったとか。
また、周りに自分を疑う者がいると分かると、その者に対し、警察にウソの供述をしないと自宅に放火すると脅してもいました。
2008年11月、彼女は自分が働く介護施設に火を放ち、そこで暮らす96歳の女性を死に至らしめます。
この事件により、ペドリーは遂に逮捕され、刑事裁判にかけられることに。
火の海から自分の家族を救助したヒーローが、罪の無い人の命を炎で奪って人生が終わるというのは、何とも皮肉な話です。