ゲームの無い世界へようこそ……。
ゲームにあまり興味が無いという人は珍しくないでしょうが、今の時代、必需品であるスマホでゲームが出来る以上、ほとんどの人がゲームを楽しめる環境にあると言っていいでしょう。
そう考えると、一切ゲームをしない人は少数派かもしれません。
では、全くゲームの無い生活を送るとどうなるのか……。
それを以下でご紹介します。
〈originally posted on January 31,2018〉
1 欲求に勝てなくなる
人間は、欲求の赴くままには行動できないという宿命を背負っています。
好きなものを食べる、酒を飲む、タバコを吸う、などといったことを節度を守らずにやっていたのでは、そのうち大きなツケが回ってくるでしょう。
とはいえ、なかなか欲求に勝てないのもまた人間の性。
しかし、ゲームをすることで、そういった欲求を抑えられるかもしれません。
イギリスのプリマス大学とオーストラリアのクイーンズランド工科大学が行った実験よれば、テトリスをプレイすることにそのような効果があるのです。
その実験では、18歳から27歳までの被験者31人を対象にして、テトリスをプレイする前後で欲求の感じ方がどう変化するかを調べました。
すると、アルコールやタバコが欲しいという気持ちや、ゲームで遊びたいという衝動、恋人とイチャコラしたいという性欲、などといった種々の欲求が弱まったのです。
人間が何かを欲するとき、対象となる物・経験を頭の中でイメージする過程を経るのですが、テトリスのように視覚に強く訴えるゲームをすると、そのイメージ過程が阻害され、それに伴い欲求自体も抑えられると考えられています。
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2 苦痛の多い生活になる
看護師が小さな子供に注射をする際、子供が喜びそうな話題で会話をして痛みを紛らわせることがありますが、それと似た効果がビデオゲームにもあります。
ゲームをしている間は、次から次へと様々な判断や決定を要求されますから、脳内ではその処理に追われ、じっくりと苦痛を感じている余裕がありません。
それに加え、ゲーム内で敵を倒した時などには、快感をもたらすドーパミンが分泌されます。
その結果、痛みを感じにくくなるのです。
2010年にアメリカで、この事実を応用した実験が行われました。
火傷を負った患者にVRヘッドセットを装着させ、手術中にバーチャル・リアリティのゲームをプレイしてもらったのです。
すると、ゲームをしている時の方が、そうでない場合よりも、手術中に感じる痛みが30%~50%下がりました。
また、ワシントン大学で行われた実験からも、興味深い結果が得られています。
極寒の地でペンギンを狙って雪玉を投げるという内容のVRゲームをプレイしている間は、健康な人であっても、熱による痛みを感じる割合が減るのだとか。
熱さとは真逆の環境で展開するゲームを遊ぶことで、熱さを感じることが、いわばキャンセルされると考えられています。
3 反射神経が鍛えられない
日常生活において反射神経が要求される場面は少なくありません。
例えば、スマホを取り出そうとして、それが手から滑り落ちたとき、スマホが落下していく先に超人的な反応速度で手を伸ばし、瞬時に掴むことが出来れば、画面を割ることも無いのです。
まあ、それが出来る人間はあまりいないと思いますが……。
それはさておき、ニューヨークのロチェスター大学で行われた研究によると、身体の反応速度を向上させるのに、ビデオゲームは一定の効果があります。
ただし、ここでいうビデオゲームとは、『信長の野望』のようなじっくり考えるゲームではなく、状況を的確に把握して敵を銃で正確に仕留めていく、ファーストパーソン・シューター(FPS)です。
FPSをプレイすることで、反応速度だけでなく、身の回りにある物を記憶したり、頭を切り替えながら種々の仕事を連続でこなしたりする能力も上がる可能性があるとか。
また、ロンドン大学の研究によると、FPSで遊ぶことは、先入観に囚われない適正な判断を下す能力を高めるそうです。
4 攻撃性が弱まる
恐らく、新しいゲームを始める際にこういう経験をしたことのある人は多いでしょう。
ゲームによっては自分のキャラ作りも重要な要素の一つですが、しかし、こだわりのキャラを作ることには一つの罠が隠れています。
イギリスのサセックス大学とオーストリアのインスブルック大学が行った研究によれば、自分好みにカスタマイズしたキャラクターで、暴力性の高いビデオゲームを遊ぶと、そのプレイヤー自身の攻撃性や嗜虐性が高まるのだそうです。
オープンワールド・ゲームなどでは、顔の輪郭や髪型、肌の色など、細かい部分で豊富な選択肢が用意されているので、上手くやれば自分に似たキャラクターを作ることも可能です。
しかし、「攻撃性を高める」という点に関して重要なのは、プレイヤー本人に似たキャラクターを作るかどうかではなく、キャラクター作りにどれだけの時間を費やしたか、なのです。
たっぷり時間をかけて作ったキャラクターで暴力的なゲームを遊ぶことで、より攻撃的になるわけです。
一般的に、『モンハン』のような狩ゲーでは、自分が操作するキャラを自由にカスタマイズ出来るのに対し、格闘ゲームではそれが出来ません。
どちらかと言えば格闘ゲームの方が暴力性は強いのに、実際は狩ゲーをやっている人の方が、ゲーム中にブチ切れる可能性が高いのは、上記のようなことが関係しているのかもしれません。
5 自尊心を維持できる
ゲームに登場するキャラクターに愛着を感じるのはごく自然なことです。
ただ、中にはその愛着を、通常とはやや異なる次元にまで高めてしまう人がいます。
気に入ったキャラクターを「俺の嫁」に認定して、そのキャラクター関連のグッズを買い漁ったり、独自のショートストーリーを創作したり。
あるいは、そのキャラクターのコスプレをしてみたり。
アメリカのミシガン州立大学とカリフォルニア大学が行った研究によると、ゲーム内のキャラクターに強い愛着や親近感を抱いている人ほど、自尊心が低い傾向にあるそうです。
自分にとっては完璧なキャラクターであるとはいえ、客観的に見れば、架空の存在に対して愛情を注いでいるわけですから、そのことがある種の失望感や虚しさを生み、ひいては自尊心低下につながるのだと考えられています。
また、カンザス州立大学のリチャード・ハリス教授によると、『ストリートファイター』シリーズに登場する男性キャラや、『デッド・オア・アライブ』シリーズに登場する女性キャラのように、完璧な肉体を持ったキャラクターが登場するゲームを15分プレイするだけで、自分の体型を否定的に捉えるようになるのだとか。
ちなみに、この傾向は、男性よりも女性の方が強いそうです。
6 カロリー消費の機会を逃す
ビデオゲームで不動の人気を誇るジャンルの一つといえば、『バイオハザード』や『サイコブレイク』などに代表されるホラーゲームでしょう。
そして、ホラーゲームは、ただ怖いだけのゲームではありません。
イギリスのウェストミンスター大学の研究によって、恐怖を感じることはカロリー消費につながるということが分かりました。
具体的には、90分のホラー映画を観ると、184kcalを消費するのだとか。
これは、一般的なスポンジケーキの一食分とほぼ同じです。
怖い体験をすると、体内の血流量とアドレナリン分泌量が増加して新陳代謝が促進される一方、食欲が下がります。
その結果、カロリー消費につながるわけです。
受動的に鑑賞するだけの映画に比べ、インタラクティブ性のあるホラーゲームの方が恐怖を感じる頻度は高いでしょうし、VRを使ったホラーゲームなら尚更ダイエットには適していると言えそうです。
7 眼の機能低下
ゲームばっかりやっていると目が悪くなる、というのは昔からよく言われていますが、意外なことに、それとは逆の報告もあります。
2009年、ネイチャー・ニューロサイエンス誌が行った調査によって、普段からアクション・ゲームをよくプレイする人は、「コントラスト感度」が高いことが分かりました。
コントラスト感度は、微妙な色の違いを見分ける能力で、例えば、視界が悪くなりがちな、夜中の車の運転などで重要になってきます。
この能力は、主に年齢とともに低下してくるのですが、アクション・ゲームをすることでそれを防げる可能性があるのです。
ただし、長時間ぶっ通しでゲームをプレイすることは、眼精疲労や視力低下の原因になると言われていますから、適度に休憩を挟むなどするべきでしょう。
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8 老化が早まる
特定のジャンルのゲームをプレイすることで脳が活性化することは、複数の研究データによって示されています。
2013年、アメリカのアイオワ大学で、実験のために開発された特殊なレーシング・ゲームを50歳以上の被験者たちにプレイしてもらったところ、マルチタスク能力や認知機能に向上が見られ、その効果は6ヶ月も続きました。
また、ノースカロライナ州立大学が行った調査では、63歳以上の約35%は週に1回以上はゲームを楽しんでおり、なおかつ、そういう人たちは、概して日々の生活に幸福感や満足感を見出しています。
一方、全くゲームをやらない人たちは、否定的な感情を抱くことが多く、また、うつ状態になる確率が高いそうです。