どんな業種であれ、企業が女性を敵に回すのは得策ではありません。
これは至って自明のことであり、わざわざそんなことをする会社はまず無いでしょう。
しかし、会社としては何の問題も無いと考えていたことが、強い非難を受けることもあります。
今回は、女性から激しい怒りを買ってしまった企業の数々をご紹介します。
〈originally posted on June 9,2019〉
1 サッカー選手との子供を作ったら一生分のハンバーガー贈呈
昨年5月、自民党の加藤寛治氏が「必ず新郎新婦に3人以上の子供を……」と発言し、今年の5月にはやはり自民党の桜田義孝氏が「子供を3人くらい産むようお願いしてもらいたい」と発言。
日本の少子化がかなり深刻なのは確かですが、だからといって、子供を産む産まないという決断に国が介入しようとするのは言語道断です。
批判を受けた桜田氏は、「子供を安心して産み、育てやすい環境をつくることが重要だ」というメッセージを伝えたかっただけだと弁明しました。
この手の問題発言を日本の国会議員がしても、余裕で議員の座に居座り続けることができますが、企業の場合は致命的なダメージになりかねません。
昨年、ロシアのバーガーキングが、
「サッカーのワールドカップ出場選手との間に子供ができた全ての女性に、300万ルーブル(約480万円)を贈呈し、さらにハンバーガーを生涯無料で提供する」
というキャンペーンを行いました。
バーガーキング側としては、優秀なサッカー選手の遺伝子を受け継いだ子供が多く誕生することで、将来的にロシアチームをワールドカップで優位に立たせたいという意図があったとか。
当然ながらこのキャンペーンは女性からの猛烈な抗議を受け、程なく中止となりました。
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2 スカートを穿いて給料アップ
2017年に厚生労働省が発表したところによると、現在日本の企業においてセクハラ防止策が取られている割合は、従業員5千人以上の会社では100%ですが、会社の規模が小さくなるほどその割合は低下。
全ての規模の会社で見ると、平均して65%程度にとどまっています。
セクハラ対策も重要ですが、意外と見落とされがちなのが、女性社員に対する様々なプレッシャー。
2016年にイギリスで行われた調査によれば、大多数の女性が、自分のキャリアのために、職場において「より女性的な服装」でいなければならないと感じているそうです。
今年、アルミ製品などの製造を手がけるロシアの会社「タットプロフ」が、「短いスカートを穿いて出勤した女性社員は、一日あたり100ルーブル(約170円)の手当を支給する」という規則を作りました。
スカートの丈は、膝上5センチのラインより長くないことが条件。
証拠として、社員は自撮り写真を上司に送信せねばなりません。
このトンデモルールを発案したのは同会社の社長。
タットプロフ社は、男性社員が550人なのに対し、女性社員が149人であり、男性の割合が約70%を占めます。
そこで社長は、職場を少しでも明るくすることで、チームの結束力を高めようと考えたのだとか。
これに対し、ツイッター上では女性からの批判の声が強まりました。
あるツイートでは、
「ロシアはいまだに1950年代の真っ只中にいるみたいね」
という発言も。
かなりの非難が集中したものの、このルールが定められてから、60人の女性社員が短いスカートで出勤し始めたそうです。
3 細すぎるマネキン問題
ショッピングモールを歩いていて、ショーウィンドウに並ぶマネキンが目に入ったとき、そのマネキンの「体型」に注目する人は少ないように思います。
ほとんどの人はファッションの方に意識が向くことでしょう。
しかし、あまりに非現実的なマネキンを使用すると、客からのバッシングが待っていることもあります。
2015年、ロンドンのウェストフィールドにある「オアシス」という小売店で陳列されていたマネキンが、多くの女性を激怒させました。
その理由は、マネキンの脚が細すぎたから。
ポキっと折れそうなほど細い脚のマネキンを目撃した女性たちが、すぐさま怒りのツイートを連投し始めたのです。
それらのツイートの一部をご紹介すると……。
「こんなマッチ棒みたいな脚をした人間がいるわけないでしょう!」
「不愉快だし、ファッションの店として無責任」
「そもそも脚が細過ぎて服が似合ってない」
などなど。
集中攻撃に遭ったオアシスは、「当社で使用するマネキンはどれも身長が180センチ以上あり、もともと現実の人間を正確に表現したものではない」と弁明。
しかし、ファッションを扱う企業として女性の声は無視できなかったようで、その後オアシスは、マネキンを取り替える方向で検討すると発表しました。
4 胸が大きいほど割引率アップ
2017年8月、中国の杭州市にある「トレンディ・シュリンプ」というレストランが、胸の小さい女性にケンカを売るようなキャンペーンを展開しました。
その内容は、女性客の胸のサイズによってメニューの割引率が変動するというもの。
Aカップの女性は5%の割引ですが、サイズが大きくなるほど割引率も上がり、Gカップの女性は65%の割引が受けられます。
女性客が割引を適用してほしいときは、男性ではなく女性のスタッフに申告することになっているので、男性店員のいやらしい目線が胸のあたりを泳ぐといったことはありません。
しかし、このキャンペーンが始まってから女性たちから苦情が殺到。
しかし店側は、文句を言ってるのは年配の人たちだけで、若い女性はむしろ楽しんでいる、と開き直りました。
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5 科学雑誌はどのコーナーに陳列するのが正解か
2015年、イギリスの有名なスーパーマーケットである「モリソンズ」が、厳しい非難にさらされました。
原因は、科学雑誌を「男性雑誌」のコーナーに移動させたことにあります。
大学時代に生物学を専攻していたある女性がこれに気づき、その事実をネット上で公表したところ、SNSで一気に拡散しました。
彼女はモリソンズに電話し、不満を述べた上で、なぜ科学雑誌が男性雑誌のコーナーにあるのか説明を要求。
この点につき、モリソンズ側の回答は、「一般的に、男性の方が科学に興味を持つ割合が大きいから」というものでした。
性差別的な風潮を助長させる意図は無く、客の利便性を考慮して、男性が興味を持ちやすいものを男性雑誌コーナーに、女性が興味を持ちやすいものを女性雑誌コーナーに置いただけとのこと。
この問題につき、ネットでは女性からの批判が相次ぎました。
中には、2015年にもなってまだこんな固定観念が残っているのは驚き、という人も。
一方で、こういった批判に対して少し冷ややかな意見もあります。
ある人は、「料理本はたいてい女性雑誌コーナーにあるが、男性が買うこともあるだろうに」とコメント。
別の人は、「女性誌、男性雑誌という区別をしている時点で、こういう事態が起きるのは仕方がない」という見方をしています。
科学雑誌は一体どのコーナーに置くのが正解なのか。
身も蓋もないことを言いますと、「専門誌」コーナーに置けばいいだけのような気がしますが……。