日常生活において、ニオイが原因で嫌な思いをする機会は少なくありません。
他人の嫌な臭いを嗅がされることもあるでしょうし、逆に、自分が臭さの発生源になってしまう場合もあります。
前者はその臭さに耐えられず、後者は恥ずかしさに耐えられません。
そう考えると、ニオイというのはなかなか厄介です。
記事を書く側としても困るのは、「匂い」「臭い」「ニオイ」「におい」などと書き方を変える必要があるところ。
今回は、その厄介なニオイの謎についての話です。
〈originally posted on September 2,2019〉
1 高級な香水は金のムダ?
高い香水に金をつかいまくっている人には少々残念なお知らせです。
イギリスにあるインペリアル・カレッジ・ロンドンで行われた研究で、1万種類を超える香料の中から最も人気の高いものを調べたところ、意外な結果が出ました。
市販の高級な香水の匂いよりも、安価でシンプルな匂いを好む人の方が多かったのです。
人気ランキングでトップ5に入ったのは、ジャスミン、ジャコウ、ベルガモット、サンダルウッド(白檀)、アンバー。
研究者らの話では、高い原材料をいくつも組み合わせたような香水は、匂いがイマイチ。
逆に、昔からある単純な製法で作られた香水ほど、人気がありました。
結局のところ、人がどのような匂いを好むかについて、香水の価格はほとんど影響していなかったのです。
よって、安い香水でも何ら問題ありません。
もっとも、高い香水をつけているからこそ意味がある、という価値観の持ち主もいるでしょうから、一概に安い物を選ぶべきだとは言えませんが……。
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2 存在しない臭いを感じる人
嗅覚に障害があり、何もにおいを感じない「無臭症」という病気があります。
この症状があると、凄まじい激臭にも平気でいられる反面、良い匂いを堪能することも出来ません。
プラスマイナス・ゼロという感じでしょうか。
一方、においの発生源が何も無いのに臭いを感じてしまう「異嗅症」という病気もあります。
大抵は嫌な臭いがして、食事中であれば食べ物の風味も台無しになります。
時間とともに、その臭いの感覚は消えていくことが多いのですが、いつまで経っても臭さが無くならないようだと、深刻な病気の兆候である可能性があります。
その病気とは、例えばアルツハイマーやてんかん、パーキンソン病、脳腫瘍など。
周りの人が何のにおいも感じていないのに、自分だけ臭いと感じることが続くようなら、医師に診てもらうべきでしょう。
3 ガン細胞を嗅ぎ取る犬
犬の嗅覚が優れているのは麻薬探知犬を見れば明らかですが、犬の凄さは麻薬を嗅ぎつけるだけにとどまりません。
米国フロリダ州にあるバイオセントDXという研究所では、犬が持つ抜群の嗅覚を、ガン予防に活用すべく日々研究を続けています。
犬がどうやってガン予防に役立つのかというと、血液中のガン細胞を嗅覚で感知するのです。
その正確さは驚きの97%。
同研究所のヘザー・ジュンケイラ氏の話では、ガンの発見に犬の嗅覚を利用することで、ガンの早期発見が促進され、より多くの人の命を救える可能性があるとのこと。
今後の研究の焦点は、犬の嗅覚が反応する生体化合物を特定し、それによりガンを発見する方法を確立していくことだそうです。
4 人は舌でにおいを感じることが出来る
我々が食事をするとき、味は舌で感じ、においは鼻で感じます。
では、「フレーバー」はどこで感じるのか。
その前に、そもそもフレーバーとは何なのか。
日本語では「風味」と訳されることが多いですが、フレーバーとは、味とにおいを合わせた概念で、食べ物から受ける総合的な印象のことです。
すなわち、フレーバーは、味覚と嗅覚からの情報を脳が組み合わせて初めて感じられるもの。
また、フレーバーを感じる上で、味覚よりも嗅覚の方が重要な役割を担っているとされています。
これが従来の捉え方だったわけですが、これが覆りそうな発見が今年なされました。
米国ペンシルベニア州にあるモネル化学感覚研究所が、鼻の中にある「嗅覚受容体」を、舌の味覚細胞の中に発見したのです。
端的に言えば、人間は、ある意味舌でにおいを感じることが出来るということ。
同研究所の説明によると、舌の上での味の感じ方には、匂い分子が影響している可能性があるのだとか。
この研究が進めば、例えば特定の匂い分子を使うことで、甘さや塩辛さを強く感じる、これまでに無い調味料が製造できるかも知れません。
それが実現すれば、肥満や糖尿病のリスクを抑えた食事も実現可能であろうと考えられています。
5 死が迫っている人をにおいで感じ取る女性
目の前にいる人がいつ死ぬのかが分かる能力があれば……。
それはまさに『デスノート』の世界。
そんなトンデモ能力を持っているのが、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズに住むアリ・カラ(25)という女性です。
この特殊能力に彼女が気づいたのは12歳のとき。
叔父の家を訪れた際、気分が悪くなりそうなくらい甘ったるい、何かが腐ったような臭いを家の中に感じたのです。
その翌日、叔父は亡くなりました。
ちなみに、彼女以外でその奇妙な臭いに気づいた人はいなかったとか。
それ以来、高齢者や末期の患者に接するとこの臭いを感じることがあり、その回数は数え切れないほど。
カラの話によると、彼女は人の死の「周波数」のようなものが臭いで分かるそうです。
ただ、彼女にとってこの能力はかなり重荷だったようで、以前はどちらかといえばそれを封印しようとしていました。
しかし、最近はこのようなサイキック能力のことをより多くの人に知ってもらうため、自分なりの活動を開始。
サイキック能力は本来誰でも使えるものだと言い切るカラは、それまでの仕事を辞め、現在ではそういった能力についてのアドバイザーとして活躍しています。
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6 死が近づいてくると嗅覚が鈍る
他人の死期が近いかどうかが臭いで分かるというのは、カラのような特殊能力を持っている人でなければ不可能です。
しかし、そんな能力が無くても、自分の死期が近づいているのを知りうる意外なきっかけが、今年になって発見されました。
米国ミシガン州立大学のホンレイ・チェン教授によると、嗅覚が鈍ってきた高齢者は、お迎えの日が近いかも知れないのです。
具体的には、嗅覚が良い高齢者に比べ、嗅覚の鈍った高齢者は、10年以内に死亡する確率が50%近く高くなります。
この数値は、71歳から82歳までの2300人を対象にした、13年以上にわたるデータをもとにして得られたものなので、ここでいう「高齢者」とは、70歳以上の人のことです。
チェン教授によると、この研究では性別や人種、ライフスタイルなどの要素は極力排除されているとのこと。
嗅覚が鈍ることが、パーキンソン病や認知症の兆候になりうることは、以前から知られていました。
ところが、今回の研究で得られた結果は、それだけでは説明がつかないのです。
つまり、嗅覚が鈍ることと、死亡率が上がることとの間には、まだ解明されていない謎があるということ。
それが明らかになるのはまだ先の話ですが、現時点でもこの知識を役立てることは出来ます。
高齢者で、嗅覚の衰えを感じているなら、一度医師に相談する必要があるとチェン教授は語っています。