こんな奇妙なキャンペーン、一体誰が得をするというのか……。
キャンペーンという言葉に滅法弱く、企業の思惑通りに容易く踊らされてしまうタイプの人間がいます。
まさしく僕です。
キャンペーンと聞くと、その情報を詳しくチェックせずにはいられません。
そして多くの場合、買う必要の無いものを買ってしまって後悔することに……。
しかし、これからご紹介するキャンペーンの数々は、そんな僕でも引いてしまいます。
〈originally posted on October 4,2017〉
1 時空戦士テュロック(キラキラネーム)
『時空戦士テュロック』というのは、1997年にアクレイムより発売されたNINTENDO64用のファーストパーソン・シューター。
プレイヤーは、筋骨隆々の時空戦士テュロック(という名のネイティブ・アメリカン)になって、迫り来る恐竜どもをショットガンで蹴散らしていきます。
今でこそこの手のゲームは山ほどありますが、『テュロック』はロクヨンの性能を最大限に引き出し、当時としては驚くべきグラフィックを実現していました。
2002年、このシリーズの最新作である『テュロック:エボリューション(日本未発売) 』をリリースするに当たって、米国アクレイム社はかなり奇妙なキャンペーンを立ち上げました。
生まれてきた子供に「テュロック」という名前を付けた親に1万ドルを進呈すると宣言したのです。
女の子であっても勿論テュロック。
相当にやばいキャンペーンと言わざるをえません。
しかし、テュロックと名付けるだけで1万ドルというのもデカい。
結局、このキャンペーンで実際に1万ドルをゲットした人がいたのかは定かではありません。
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2 歴史的墓地でトレジャーハント
「ドクターペッパー」は、コカ・コーラ社が販売している清涼飲料水で、アメリカで最も古い炭酸飲料です。
ちなみに僕は飲んだことがありません(現物を見た記憶も無い)。
2007年、ドクターペッパーのキャンペーンとして、「コインを探せ!」といったものが展開されました。
街のどこかに100万ドル相当のコインが隠されており、見つけた者はその償金をゲットできるのです。
ところが、マサチューセッツ州ボストンにあるグラナリー墓地にコインの一つが埋められていると発表されたことで、大きく物議を醸すことになりました。
グラナリー墓地というと、歴史上の重要人物が多く埋葬され、その中にはアメリカ合衆国建国の父であるサミュエル・アダムズもいます。
そんな場所で、大勢の人がトレジャーハンターよろしくコイン探しを始めたら、墓地が荒らされるのは必至。
ボストン市はこの不謹慎なキャンペーンを強く非難した上で、同墓地を一時的に閉鎖しました。
その後、コイン探しは中止となったのです。
3 たばこメーカーの巧妙な罠
2006年、世界最大のたばこメーカーであるフィリップモリスは、10代の子供を持つ親に対し、たばこについて子供と話し合うことを訴えかける一風変わったキャンペーンを始めました。
そのキャンペーン広告を見た多くの親は、未成年の喫煙がいかに有害であるかを子供に分からせる良い機会だと思ったことでしょう。
しかし、後にこのキャンペーンは、それとは真逆の効果をもたらしていたことが分かりました。
子供たちは、たばこに対してより強い興味を抱くようになったのです。
これは、いわゆる「リバース・サイコロジー(反心理学)」と呼ばれるものが原因。
10代の子供であれば、親から「やってはいけない」と言われると、逆にやってみたくなるもの。
しかもそれが、未成年だから出来ないという理由なら、成年に達したら堂々とやってやろうと考える子供も出てくるでしょう。
ひょっとして、こういう結果になるのを承知の上で、表面的には未成年の喫煙を防止するようなキャンペーンをフィリップモリスは始めたのか。
この点について、同社はコメントしていません。
しかし、実はフィリップモリスは2000年に驚くべきキャンペーンをチェコ共和国で行っています。
たばこ税による税収やがん患者の医療費などを総合的に捉えると、たばこによって早死にする人が増えた方が、国の経済にとってプラスになると主張していたのです。
4 PSPと人種差別
世界的に大ヒットした携帯ゲーム機「PSP」の後継機として登場した「PS Vita」。
事実上、これがソニーの最後の携帯ゲーム機となりました。
Vitaはゲーム機としては非常に優秀ですが、残念ながら販売台数の面では一世代前のPSPに遠く及ばず。
そのPSPは、他の携帯ゲーム機と同様、様々なカラー・バリエーションがありました。
オランダで白色のPSPが発売されたとき、街角に巨大な看板が現れたのですが、多くの通行人がそれを見て唖然とすることになったのです。
大柄な白人女性が、白い衣装を身に付け、髪も白く染め、黒人男性のアゴを掴んで威嚇的に睨みつけていました。
何をどう考えても人種差別を連想せざるをえないその広告に、人々が激怒したのは言うまでもありません。
程なくして、ソニーは看板を撤去しました。
5 イジメを招くイジメ対策
イジメはどの国においても対策の難しい問題です。
かつてイギリスでは、イジメに対処するための画期的(?)なキャンペーンが行われました。
学生たちのために、青いリストバンドを販売したのです。
と言っても、ただのリストバンドではありません。
バンドの表には、「イジメに打ち勝て(Beat Bullying)」と書かれていました。
これさえ付けていれば、イジメなんて恐るるに足らず。
……と、そう簡単にいけば誰も苦労しません。
実際は、このリストバンドを付けていた生徒が少数派だったことから、彼らは妙に目立ってしまい、かえってイジメのターゲットにされるという悲しい現実が待っていました。
生徒の間にあまり普及しなかった理由は、この商品がかなりの品薄状態だったために、レアアイテムと化してしまっていたからです。
デイヴィッド・ベッカムやU2のボノといった有名人がキャンペーンに参加したことによる宣伝効果で、このリストバンドは飛ぶように売れており、転売屋が一個30ドル以上で出品するほどでした。
このリストバンドを買ってしまったある生徒は次のように語っています。
「これを腕にはめてると、イジメを怖がってると思われて、イジメっ子たちに狙われるんだ。良いことは何も無いよ」
身も蓋もないことを言ってしまいますと、イジメに遭わないための最善の策は、とにかく目立たないこと。
これに尽きます。
6 死刑囚のポスター
において長い歴史を持つイタリアの企業グループ「ベネトン」は、2001年、ブランド品の宣伝として、常人では思いつかない手段に出ました。
街のあちこちに張られたポスターには、様々な男性がじっとこちらを見据えている写真が使われていたのですが、彼らは全て死刑囚だったのです。
ポスターに写っているある男性は、コンビニで客を手当たり次第に射殺した後、店の金を奪って逃走していました。
また、別の男性は、10代ばかりを狙って3人を犠牲に。
他にも、誘拐、婦女暴行などで死刑になった者たちが……。
彼らの犯行によって命を奪われた犠牲者の遺族は、この宣伝に強い不快感を示しました。
また、死刑囚たちの収監場所であったミズーリ州は、ベネトンに対して訴訟を起こし、同社が虚偽の事実を申告して死刑囚と面会したことを非難。
このキャンペーンは、2千万ドルもの費用をかけていながら、最悪の結果に終わったのです。
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7 ダブルチーズバーガーの悲劇
の興味を引くような宣伝は、マクドナルドのようなファストフード店ならば特に重要でしょう。
ただし、そのために「若者言葉」を安易に広告に盛り込むのは危険です。
2005年、米国マクドナルドは、ダブルチーズバーガーの広告で使用する宣伝文句に、若い人なら誰でも知っているある俗語を使いました。
マクドナルド側は、その俗語の意味を知らなかったのですが、せいぜい「食べる」のような意味合いだと考えていたのでしょう。
ところが、その言葉が意味していたのは、かなり卑猥な内容だったのです。
それにしても、企画会議の段階で、その俗語が一体どういう意味なのかを誰一人として確認しなかったのは謎としか言いようがありません。
ちなみにこれは、アメリカ史上、最も悲惨な宣伝ミスの一つに数えられています。