何の変哲もないごく普通の光景に隠れた「意外な意味」の数々をご紹介します。
日常的に経験するようなありふれた物事をいちいち気に留める人はまずいないでしょう。
たとえ、そういったものに何らかの理由や科学的説明があるにしても。
ただ、それらを知ったとき、いつも見ている光景が、それまでとは少し違った感じで見られるようになるかもしれません。
〈originally posted on September 9,2017〉
1 機嫌の悪い上司
いつものように会社に出勤すると、何故か上司の機嫌が悪い。
全身からにじみ出る不機嫌なオーラのせいで、職場にはピリピリとした空気が流れている。
昨夜奥さんとケンカして「このハゲーッ!!!死ね!!」とでも言われたのか。
ま、どーでもいいけど、 おかげで全員どこか陰鬱な面持ちで仕事を始めるハメになってしまった……。
こんな経験のある人は少なくないでしょう。
これから仕事を頑張ろうというときに、 機嫌の悪い上司に遭遇すると、多少はネガティブな気分になります。
では、こういった上司の態度は他の社員にとってマイナスなのかというと、実はそうでもないのです。
一般的に、単調な作業はネガティブな精神状態の方が、創造的な仕事はポジティブな精神状態の方が適しているとされています。
前者の例としては、締め切りが近づいてきて焦っている状態で報告書をまとめる、というのが挙げられます。
焦りが集中力を高めるわけです。
そして、後者に関しては、近年の研究により興味深いことが分かってきました。
最初からずっとポジティブな気分でいる場合より、ネガティブな気分からポジティブな気分へと移行した場合の方が、より創造性の高い仕事ができるのだそうです。
よって、朝っぱらから不機嫌な上司というのは、マイナスどころかむしろプラスになっているといえるかもしれません。
その場合、午前中は単純な作業を中心に仕事を進め、上司の不機嫌オーラの影響が無くなってくる午後から、発想力が要求される仕事をこなすのがベストと言えるでしょう。
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2 うわさ話がやめられない
男性と女性では、うわさ話が好きなのはどちらなのか。
この質問を男性にぶつけると、「女性」という答えが多く返ってきそうですが、それは必ずしも真実ではありません。
アメリカで行われたあるリサーチによると、職場に限定すれば、うわさ話に費やす時間は男性の方が女性よりも約30%多かったそうです。
何れにせよ、性別を問わず我々はうわさ話が好きです。
うわさ話も度が過ぎればタチの悪い陰口になりかねませんが、それでもうわさ話は止められない。
これは一体どうしてなのか。
その理由は、周りの人との信頼関係を築きたいという欲求を我々が持っているからだとされています。
うわさ話というのは、単なる会話のネタ以上の意味を持っており、その場に居ない第三者に関する秘密を共有することで、相手との信頼が生まれるのです。
面白いことに、第三者が何かで成功を収めたような類のうわさ話には、こういった効果は無いのだとか。
逆に、うわさ話によって最も強い信頼が生まれるのは、嫌悪感を共有したときだそうです。
例えば、学校での生徒どうしの会話でいうと、
「F組の山田って、県大会で優勝したらしいよ」
みたいなうわさ話よりも、
「体育の平野ってさ、暴力が酷くてマジでムカつくよね!」
みたいな内容の方が、互いの絆を強めるというわけです。
また、人類学者のロビン・ダンバー博士によれば、うわさ話をすることは、人間の脳の進化に一役買っていたのだとか。
そもそも、人間の言語能力を伸ばす原動力になったのは、その場に居ない人の情報を共有する必要性なのだそうです。
3 何かを殴らないと怒りが収まらない
日々の生活で、怒りの感情と全く無縁でいられる人は、まずいないでしょう。
場合によっては、いつまで経っても怒りが収まらず、どうにかしてそれを発散せずにはいられないことも珍しくありません。
マフィアのボスが精神科医に相談に来るというコメディ映画『アナライズ・ミー』の中で、次のような会話があります。
精神科医:「何かで頭にきた時に私がどうするかというとね、枕を殴るんだよ。君も試してみるといい」
マフィアのボス:(いきなり銃を取り出して椅子に数発撃ち込む)
精神科医:「スッキリしたかい」
マフィアのボス:「まあね」
銃で撃つのは無理にしても、ムカつく相手の顔を想像しながら何かを殴って怒りを発散しようとしたことのある人は多いでしょう。
しかし、果たして本当にこの方法で怒りは収まるのか。
これに関して、心理学者のブラッド・ブッシュマン博士がある実験を行いました。
まず、A・B・Cの3つのグループに分けた被験者を意図的に怒らせます。
次に、グループAは、自分たちを怒らせた相手のことを考えながらサンドバッグを思いっきり殴り続けます。
グループBは、あくまでフィットネスジムに来ているつもりでサンドバッグを殴り続けます。
グループCは、何もせずにただボーッとして過ごします。
実験後、自分の怒りの度合いについて各被験者に自己評価してもらいました。
すると、怒りがほとんど収まらなかったのは、怒りの鉄拳を繰り出していたグループAで、逆に最も怒りが収まったのは、何もしなかったグループCだったのです。
つまり、怒りを発散しようとする行為は実は逆効果であり、怒りを収める最速の方法は、怒りの元について「考えないこと」に尽きます。
ムカつく相手の顔や、怒りが爆発しそうになった時のことなど思い出してはいけません。
とにかく忘れるのです。
ただ、問題はどうやって忘れるか、なのですが……。
4 知ったかぶり
「『Xbox One X』ってさ、フロップス数が『PS4 Pro』の約1.4倍の6テラフロップスもあるんだって。ヤバくない?」
「んー、まぁ、なんつーか、フロップス数が全てではないけどね…ハハッ…ハ」
僕自身、「6テラフロップス」が何を意味するのか知りませんし、調べたところで多分理解できないので調べる気もありません。
しかし、もし会話の相手がこの用語を使ってきたら、おそらくこんな風に知ったかぶりをするでしょう。
そして、この行動にはどうやら科学的な根拠があるらしいのです。
人がなぜ知ったかぶりをするのかを明らかにするため、コーネル大学のデイヴィッド・ダニング博士が実験を行いました。
博士が事前にでっち上げた架空の政治家や都市について、被験者に質問してみたのです。
〈こんな政治家はいない〉
すると、実在しない事柄であるにも関わらず、提示されたそれらの話題について彼らは意見を述べました。
完全なる知ったかぶりです。
博士によれば、これには二つの理由が考えられます。
一つは、会話の流れを途切れさせないため。
自分が疑問に感じた点をいちいち相手に質問していては、会話が成立しません。
もう一つは、ある事柄について自分に知識があるか否かの判断は、客観的になされるのではなく、その人が自分をどう捉えているかで決まるから。
例えば、歴史が好きな人であれば、自分はそれなりに歴史の知識があると自己評価しているので、たとえ自分の知らない歴史上の話題に触れても、「知っている」という前提で会話を進めてしまうのです。
すなわち、「知っている」か「知らない」かの違いには、本人のアイデンティティが強く影響します。
ですから、自分にとって何の関心も無い分野の話題であれば、知らない言葉が会話中に出てきたとき、知ったかぶりをせずに「それって何のこと?」と素直に聞くことも多くなるでしょう。
5 自分専用に装飾しまくったデスク
社内で自分のデスクやパーティションに私物を飾ったり、写真を張ったりしている人は少なくないでしょう。
大量のマニアックなフィギュアが机上を占領しているという人もいるかもしれません。
あまりに色々な物を飾っていると、仕事に集中できないのではないかという声も聞こえてきそうですが、実はそうでもないのです。
イギリスのエクセター大学が行った研究によれば、デスク周りを自分の好きなようにデザインしている人は、仕事の効率が32%も上がるのだとか。
仕事に必要な物以外は何も無い殺風景なデスクよりも、家族やペットの写真を張りまくったデスクの方が、仕事には適していると言えそうです。
6 街路樹と犯罪発生率
犯罪捜査に監視カメラが重要な役割を果たしているのは間違いないでしょう。
さらに、車載カメラやスマホのカメラで撮影された映像も、犯人逮捕のきっかけになるケースが増えてきています。
しかし、それらは犯罪の発生を抑止しているというよりは、犯罪が起きてから役に立っている側面の方が強いと言えるでしょう。
では、犯罪が起きないようにするための効果的な方法はあるのか。
米国オレゴン州ポートランドで行われた調査で、その答えの一つが発見されました。
それは街路樹です。
2年間、2800戸を含む地域で犯罪の種類やその発生率を調べたところ、高い街路樹が植えられているエリアは、窃盗や強盗などの犯罪発生率が平均を下回っていました。
一方、低い街路樹のあるエリアでは、逆にそれらの犯罪発生率が平均よりも上だったのです。
何故このような違いが出るのかについて、専門家の見解によると、理由は主に二つあります。
一つ目は、低い木は犯罪者が身を隠しやすいのに対し、高い木の場合はそれが困難であること。
二つ目は、高い木が多いということは、木の手入れが行き届いているということであり、住民どうしの連携の強さを連想させ、犯行を思いとどまらせやすいこと。
その他の理由としては、高い木が多い場所では、無意識の内に誰かに見られている気持ちになるから、というのもあります。
自宅の付近に高い街路樹がある人は、比較的安全な場所に住んでいると言えるかもしれません。
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7 不謹慎な笑い
住民を恐怖させる連続殺人事件が発生し、犯人の男が逮捕された後、その男を知る同僚や隣人にレポーターが話を聞きに行く。
マイクを向けられた人は、男の普段の様子について語るが、何故かその表情は少し笑っている…。
何人もの尊い命が奪われた事件に関する取材なのに、なにゆえの笑顔なのか。
不謹慎ではないか。
そう思ってしまいそうですが、実はそうでもないようです。
上に挙げた例のような場面だけでなく、たとえば葬式のような、笑うことがおよそ許されないような場面でさえ思わず笑いそうになる人がいるのは、その人が不謹慎であるからとは限りません。
むしろ、深い悲しみによるストレスがその人の中で増大し、そのストレスから開放されるために笑いがこみ上げていると考えられるのです。
さらに言えば、この「不謹慎な笑い」は人間が進化の過程で獲得したもので、自分たちが安全であることを確認する意味合いがあったとされています。
例えば、森の中で仲間の一人が木から落ちたとしましょう。
心配になった他の仲間たちが駆けつけると、幸い当人の傷が軽いことが分かります。
すると、深刻に考える必要はないということを皆で確認し、その場の緊張を和らげるために彼らは笑うのです。
また、ロンドンで認知神経科学を研究しているソフィー・スコット教授によると、「不謹慎な笑い」ほど周りに伝染する可能性が高いのだとか。
人が本気で笑っている場合とそうでない場合とでは、前者の方が笑いの伝染力が強いのですが、笑ってはいけない状況で起きる笑いは、それだけに本気の笑いであると認識されます。
その結果、皮肉なことに場違いな笑いほど伝染しやすくなるのです。
重苦しい雰囲気の中にいるときほど、笑いには十分注意した方が良さそうです。