通販サイトに無くてはならないものの一つは、商品レビューでしょう。
レビューを全面的に信用はしていなくても、とりあえずレビューをザッと見てから購入するか否かを決めるという人は多いはず。
アマゾンなどで、大半の人が★一つしか付けていないような商品は、まず間違いなく「地雷商品」ですから、そういう物を避ける上でも、レビューは重要です。
ただ、全てのレビューが、その商品を購入した人による正直な感想とは限りません。
ひょっとすると、そのレビュアーは、仕事としてウソのレビュー(やらせレビュー)を書いている可能性もありますから。
今回は、実際にそういう仕事をしている人を待っている過酷な現実をご紹介します。
ちなみに、自分の見ているレビューがやらせかどうかを知りたい人は、「サクラチェッカー」という便利なサイトを利用しましょう。
筆者もよく利用しますが、本当に信頼できる評価か否かを簡単に判断できるので、商品を購入する上で非常に役立ちます。
〈originally posted on September 24,2018〉
1 デビューまでのハードルが意外と高い
「一件5ドルでどんなサイトにもレビューを書きます!」とネットで宣伝したところで、すぐに金を払ってくれる企業はまずありません。
レビュアーとしての実績が必要なのです。
論理的で説得力のあるレビューを最低でも50件くらいは投稿した経験があり、なおかつ、それなりの数のフォロワーがいなくてはなりません。
また、それらのレビューは、★5つ連発であっては駄目です。
絶賛しかしていないレビュアーは、レビュー投稿サイトや通販サイトの運営会社から怪しまれてしまいます。
一言で言えば、レビュアーとしての信頼をまず確立せねばならないのです。
人によって、数週間でそれを達成できる場合もあれば、数ヶ月、あるいはもっとかかる場合もあるでしょう。
普段からよくレビューを書く、という理由だけで簡単に飛び込める業界ではないのは確かです。
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2 報酬が金銭とは限らない
いくつかのハードルを乗り越えて仕事をゲットできたら、一体どれくらいの報酬がもらえるのか。
これは、もちろんレビューを依頼する側である企業や店舗によって異なりますが、アメリカの場合、相場はだいたい一件の投稿あたり10ドル~25ドルと言われています。
複数の会社の依頼をこなし、仕事が途切れなければ、稼ぐ人で週に200ドル程度の収入です。
これだと、月収は日本円で約9万ですから、それだけで生活するのは無理。
ただ、スマホさえあればレビューはどこにいても書けますから、仕事としての手軽さを考えると、けっこう割の良い副業かもしれません。
しかしこの仕事は、報酬が常に金銭であるとは限らないという厄介な面があります。
実際にあった金銭以外の報酬例を挙げると、ある大学内の書店は、全ての本が50%オフ。
あるガソリンスタンドは、オイル交換が半額。
ある中華料理店は、閉店後に余った食材が持ち帰り放題。
最後のやつは笑えない冗談にしか思えないですが、飲食店ではこういうケースはよくあるのだとか。
某レビュアーの男性は、あるレストランのために高評価のレビューを書いたところ、その報酬は、「サラダが一品無料」というものでした。
そのサラダを食べるため、彼が店に行ってみると、他に客は一人だけ。
とりあえず報酬のサラダを完食して、店を出ようとしたとき、そのもう一人の客が、
と言っているのが聞こえたそうです……。
3 いつバレるか分からない恐怖
やらせレビューによって金を稼ぐ上で重要なのは、当然ですが、とにかくウソだとバレないようにすること。
バレてしまったら、月9万円の副収入もそこで終わりです。
では、簡単にバレてしまうレビュアーに共通する特徴とは何か。
いくつか考えられますが、まず最も基本的な点として、レビュアーのプロフィール欄に何の画像も掲載されていないのは、信頼性に欠け、それだけで怪しまれる可能性があります。
また、一週間で数十件のレストランを巡り、その全てについて詳細なレビューを書いているような者がいるとしたら、その人物は底無しの胃袋を持つ人間か、やらせレビュアーかのどちらかです。
さらに、いくら金をもらっているからといって、誰がどう考えても失敗作としか思えない商品を絶賛するのも危険。
味を想像しただけで吐き気を催しそうなほど、ありえない食材の組み合わせからなる新メニューに★5つの評価を付ければ、それだけで怪しさMAXとなるのは避けられません。
4 否定的なレビューを書くことのリスク
高評価のレビューを捏造するために金を払う企業は珍しくないですが、その一方で、低評価のレビューを書かせるために金を払う企業もあります。
これはもちろん、ライバル商品の評判を落とすのが目的。
先ほど、やらせレビューはバレたら終わりだと書きましたが、高評価のレビューに比べ、辛辣な言葉を並べて酷評している否定的レビューは、バレる可能性がグンと上がります。
場合によっては、酷評された企業が、そのレビュアーのことを徹底的に調べ上げ、その人物が本当に店を訪れて、レビュー対象となっている商品を注文したのか、といったことまで明らかにするからです。
ちなみに、やらせレビューを書く場合、それが高評価のものであろうと低評価のものであろうと、報酬に大差はありません。
よって、バレるリスクを犯してまで否定的レビューを書くのは、全く割に合わないと言えます。
5 最悪の場合、訴訟を起こされる
これは、やらせレビューを仕事にしている人に限ったことではないですが、ある商品やサービスをこき下ろすレビューを書いたりすると、貶された企業から訴えられる可能性があります。
この点、アメリカの法律に従えば、レビューを書いた本人に悪夢をもたらす展開が待っていることも。
例えば、あるレストランで食事をした客が、そこのウェイターの酷い接客ぶりに憤慨し、大手レビュー投稿サイトに次のようなレビューを書いたとしましょう。
★☆☆☆☆
接客はサイアクで料理も激マズ。
おまけに、テーブルの上を「黒い生物」がカサカサと走り回ってた。
最低の店。
この客は、怒りのあまり、ゴキブリの話を脚色したわけです。
この場合、問題のレストランは、レビュー投稿サイト自体を訴えることは出来ません。
その代わり、レビューを投稿した本人を訴えるのです。
つまり、店側の反撃の矛先は、直接レビュアーに向けられます。
今の例だと、客は明らかに虚偽の内容で店の評判を傷つけていますから、訴えられても仕方がないでしょう。
しかし最近は、何らウソが含まれていなくても、批判的なレビューを書いただけで訴えられる場合もあるのです。
ウェブサイト等で商品を購入する際、ユーザー向けの規約条項が用意されていて、それを読んだ上で内容に同意するよう求められることがよくあります。
規約条項は、たいてい恐ろしく長い文章で構成されているので、あれを熟読する人などまずいないでしょう。
しかし、企業の中には、あの長ったらしい文章の中に、「この商品を貶すようなレビューを投稿しないこと」といった条項を入れている場合があるのです。
そうなると、単純に否定的なレビューを投稿しただけで訴訟を起こされても文句は言えません。
否定的なレビューを書かないという規約に「同意」した上で商品を購入したわけですから。
2012年、ガジェットなどをネット販売する「クリアギア」というサイトが、ユタ州のカップルに、3500ドルの違約金を請求する訴訟を提起しました。
理由は、そのカップルが、規約条項に反してクリアギアに対する否定的レビューを書いたから。
驚くことに、彼らがそのレビューを書いたのは、その時から4年も前の話。
こういう裁判が起きるのは、アメリカだけではありません。
イギリスでは、アマゾンで自分の本を酷評された作家が、レビューを投稿した本人に対し提訴しました。
そのレビュアーは、弁護士を雇う資金が無かったので、単身で法廷に現れ、素人同然の法律知識で自分自身を弁護するはめになったそうです。
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6 最後はワインボトルで頭を殴られる
たとえ訴訟を起こされなくても、否定的なレビューを書くことが危険であることを示す事例をご紹介しましょう。
2013年、イギリス人のアーティスト・作家であるキャスリーン・ヘイルが、自分の本の最新刊についてのレビューを偶然目にしました。
ある女性によって書かれたそのレビューには、ヘイルの本を清々しいほどに貶しまくる罵言が満載。
それを読んで完全にブチ切れてしまったヘイルは、その女性のSNSの利用状況をモニターし、それによって本名と住所を割り出し、彼女の住む家に行ったのです。
しかし、自分の本を貶されたくらいでレビュアー本人に直接文句を言うのは大人げないと悟ったのか、玄関の前まで来ていながら、ヘイルは何もせずに引き返しました。
レビュアーとの直接対決が始まっていた場合のことを想像すると、彼女の選択は正解だったと言えるでしょう。
一方、最後まで怒りを抑えることが出来なかった人もいます。
リチャード・ブリテインという作家は、自分の小説を酷評したペイジ・ローランド(18)という女性を許すことが出来ず、彼女のフェイスブックからその職場を突き止め、ロンドンからはるばるスコットランドまで遠征し、ローランドが働いているスーパーマーケットに押しかけたのです。
ワインボトルを片手に。
そして、ローランドを発見するやいなや、彼女の頭部を目掛けてワインボトルを叩き割りました。
ローランドは意識不明に陥りましたが、後に治療を受け、命に別状は無し。
その後、ブリテインは裁判で懲役30ヶ月を言い渡されています。