今から10年以上前ですが、関西から東京に引っ越してきた当日、近くのスーパーで夕食のお弁当を買ったときの話。
家に帰って食べ始めて、「えっ!」と驚きました。
卵焼きが甘い……。
僕はその時、製造工場のおばちゃんが砂糖と塩を間違えたのだと真剣に思いました。
ただ、別に変な物が入っているわけでもないので、それ以上は気にしなかったのです。
しかし後日、別のスーパーでお弁当を買ったところ、またもや卵焼きが甘い。
僕はその時、自分は呪われているのだと真剣に思いました。
おばちゃんが砂糖と塩を間違えるというレアイベントに連続で二度も関わるのは、これはもう呪われているとしか考えられなかったのです。
さらに後日、三度目の甘い卵焼きに出くわしたとき、ここでようやく気づきました。
「ひょっとして、東京の卵焼きは全て甘いのでは……?」
おいおい、流石にニブ過ぎだろ!と思われた方もいるでしょうが、僕のニブさは筋金入りなので、これで平常運転なのです。
周りの人に聞いてみると、卵焼きが甘いのなんて常識だよ、という声ばかり。
関西出身の僕としては、お弁当の卵焼きは塩辛いのが当たり前だったので、これは意外でした。
この点について、民放の番組などでは、よく「関東vs関西」という形式で特集を組んだりしています。
レポーターが、街なかで関西人に対し、
「東京では卵焼きに砂糖を入れるの知ってました?」
などと質問すると、
「卵焼きに砂糖なんてありえへんわ~。どないかしとるで東京人は!」
てな感じの反応が返ってきます。
同様に、東京の人に、
「関西では卵焼きに砂糖は入れないらしいですよ」
などと言うと、
「え~信じらんない。ゼッタイ人生損してる」
てな感じの反応があります。

テレビ局というところは、何かにつけて対立構造を作りたがります。
典型的なのは「大阪vs東京」や「昭和世代vs令和世代」などです。
対立構造にした方が視聴者のウケがいいのでしょうが、僕はどうにもこの手の番組作りが苦手です。
例えば、関西と関東の卵焼き問題にしても、どちらが正しいということはないと思いますし、どちらが正しいかを無理に決めたところで意味は無いという気がします。
にも関わらず、スタジオでは出演者どうしが「大阪はおかしい!」「東京は狂っとる!」といった感じで罵り合い。
両方を肯定するという選択肢は無いのかなと疑問に思います。
僕に関して言えば、甘い卵焼きは最初こそ違和感がありましたが、しばらくすると「甘いのもアリだな」と感じるようになり、結局はどちらの卵焼きも美味しく食べています。
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日本は国土が狭い割には各地域によって食文化がかなり違います。
それが日本の良さでもあるわけですから、どの地域の食文化が優れているかなどと優劣を付けるのは無意味でしょう。
卵焼き以外の例を挙げると、「お好み焼きとご飯」なんかもありますね。
関西人はお好み焼きをおかずにしてご飯を食べる、というアレです。
テレビでこの話題が上がると、100%確実に、出演者の誰かがこう言います。
「お好み焼きにご飯なんてありえない!関西人は何考えてんの?」
これはもう絶対確実に言われるセリフです。
でも、別にいいじゃない、と思うのですよ。
お好み焼きとご飯を一緒に食べる食文化があっても。
しかし、テレビは違います。
基本的にテレビは排他的なものを好みますから、一方を肯定したら、他方を否定しなければならないのです。
よって、自分たちが慣れ親しんだ食文化と異なるものは、全て「異端」であるとして排撃しないと気がすまない。
もちろん、それが一種の演出であることは承知しているのですが、観ていてイライラさせられることもしばしば。
ちなみに、僕は関西出身ですが、お好み焼きとご飯を一緒に食べたことはありません。
その理由は、両者が合わないからではなく、単に胃袋が小さいので両方をいっぺんに食べられないというだけです。