スマホでメッセージをやり取りするのが当たり前の時代に、全く面識の無い特定の相手に、メッセージを送るのは困難です。
しかし、相手のメールアドレスや電話番号を知らずとも、こっそりとメッセージを伝える手段はあります。
メモを利用するのです。
この原始的な方法なら、確実に相手にこちらの意思を伝えることが可能。
そして一番重要なポイントは、この方法なら、こちらが何者か知られることなく、相手を不快にさせられるということです。
〈originally posted on May 1,2020〉
1 看護師に宛てられた、おバカすぎるメッセージ
イギリスの国民保健サービス(NHS)の看護師であるサム・ハームズという女性は、新型コロナウイルスの脅威が続く中、毎日、患者の健康のために働いています。
そんな彼女が、先月、車で出勤しようとしたところ、誰かが書いたメモが置かれているのに気づきました。
その内容は次の通り。
自分のことしか考えていない方へ。
私はあなたが毎日車で出かけるのを見ています。
ユニフォームを着ていないから、仕事のためでないのは明白。
これは大いに問題があります。
「ステイホーム」を遵守して、この国とNHSを守りなさい!
あなたのことは”報告”しましたからね。
毎日見ている、ということは、これを書いたのは、おそらく近所の住人でしょう。
外出が規制されている状況では、他人が車で出かけることにさえ、人々が神経質になってしまうことをよく表しています。
感染拡大の防止のために多くの人が努力しても、ごく一部の人が非協力的ならその努力も無駄になる、ということを考えると、このメモを残した人の気持ちも分からなくはありません。
とは言え、結果的にはかなりおバカなメッセージです。
今まさにウイルス感染と戦っている人を批判しているのですから。
では、この不愉快なメモを見たハームズはどうしたのか。
彼女は、この住人が見ることを期待しつつ、フェイスブックで次のような投稿でもって反論したのです。
1: 私はNHSで働いてるのよ!
2: 言われなくても、何年もこの国のために尽力している。
3: 私が何をしに出かけているのか、なぜ私に直接聞かなかった?
4: NHSの職員すべてが常にユニフォームを着用するわけではない。
5: もしこれを読んでいたら、自分の頭の悪さに気づいてほしい。
メモを残した人物がこの投稿を見たら、自分がいかに間抜けなことをしてしまったかを悟るでしょう。
【スポンサーリンク】
2 キザな男のキモいメモ
2018年10月、”ジェーン”という名のイギリス人女性が、いつものように電車で通勤している最中、奇妙な体験をしました。
向かいに座っている男性が降りようとしたとき、彼はジェーンを一瞥すると、二つ折りにしたメモを置いていったのです。
メモの表には、「10数えてから開けて」との指示が。
そしてメモを開けてみると……。
「たとえこの世界に失望したとしても、君は笑顔でいるべきだよ」
「難しい表情は、その可愛い顔には似合わない」
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
キモッ!!
これまでの人生で、数え切れないほどキモいと言われてきた「キモ男マイスター」である筆者から見ても、これはキモい。
当のジェーン自身も相当に不快に感じたようで、彼女はこの出来事を、メモの写真とともにSNSで公開し、次のような内容のコメントを添えました。
「多くの女性にとって、外見の良し悪しはかなりデリケートな問題だから、日常的にそれを評価される事自体がストレス」
この理屈で言えば、褒め言葉だからといって、相手を不快にさせないとは限らないことになります。
これに対し、ネット上の反応は、真っ二つに分かれました。
その男性は、彼女の容姿を褒めただけなのだから、別に悪気は無かったはず、という意見もあれば、笑顔でいろだなんて大きなお世話だという意見も。
いずれにしても、外見のことについて何か言われるだけで気分を害する女性がいるという事実を、世の男性は肝に銘じておくべきかも知れません。
3 迷惑ドライバーに宛てた皮肉たっぷりのメモ
歩道を歩いていると、その道幅の半分近くを占める形で駐車している車に出くわす、というのは珍しくありません。
ドライバーにはドライバーの事情があるのでしょうが、歩行者からすれば非常に迷惑。
体に障害のある人ならば尚更でしょう。
イングランドのチェスター地区にあるハンドブリッジのストリートでも、そういった車が問題となっていました。
そこで、ある住人が、違法駐車しているドライバーをイラッとさせるメモを、車のワイパーに挟んでおいたのです。
そのメモに書かれてあったのは、
「私は歩道に駐車する。何故なら、私は他の連中よりはるかに重要な存在だから」
という、かなり皮肉に満ちた文。
こんなメモが置かれていたら、誰でもムカつくでしょう。
しかし、このメモを見て反省するようなドライバーであれば、そもそも違法駐車はしないのではないか、という気もします。
ちなみに日本では、歩道に乗り上げての停車、駐車は法律違反。
たとえ片輪だけが歩道に乗っている状態でもアウト。
一方、意外なことに、イギリスではロンドンなどの一部の地域を除けば、歩道の駐車は違法ではないそうです。
4 介護福祉士に宛てられた卑劣なメモ
ウイルスの感染拡大から弱者を守る人たちが、地域住民からの心無い中傷に遭う例は他にもあります。
イングランドのポーツマスにある「クレセント・コミュニティ・ケア」という介護福祉施設で働くある女性は、仕事で利用している車に、あるとき次のようなメモがあるのを見つけました。
〈人殺し〉
多数の高齢者と日々接する仕事柄、介護福祉士たちは、ウイルスの感染率が高いと思われることがあります。
その結果、このような誹謗中傷が行われるのです。
同施設によると、同様の被害は、これまでに何度も起きているとか。
ある人は、老人と一緒にスーパーで買い物をしていただけで、介護福祉士のユニフォームを見た客から、
「近づくなよ!」
と怒鳴られたことも。
イギリスでは、介護福祉士は賃金の面でかなり厳しい状況にあり、それでいて、その仕事の重要性は医療従事者と変わりません。
にもかかわらず、彼らに対する強い嫌悪感を顕にする人がいるのです。
【スポンサーリンク】
番外編 赤の他人のメモを集めまくる女性
こうして見てくると、メモというのは、スマホ万能の時代にあって極めてアナログなものですが、だからこそ、メッセージアプリには無いインパクトを持っています。
そんなメモの魅力に惹かれ、コレクションまでしているのが、オーストラリア出身のローラ・サリバンという女性。
2005年、スーパーマーケットで買い物をしているとき、彼女は床に落ちている一枚のメモを偶然発見しました。
手にとってみると、表に書かれてあったのは、ごく普通の買い物リスト。
しかしその裏面には、薬物・アルコール中毒者のためのカウンセリングに出席するという、予定の走り書きが。
全く内容の異なるものが、同じ紙に記載されていた点を面白いと感じ、それ以来、日常生活の中でメモが落ちているのを見つける度に、それを逐一回収するようになったのです。
拾ったメモは、いつ、どこで手に入れたかといった情報とともに、ジップロック袋に入れています。
これまでに集めた数は、400枚を超えており、彼女にとってこれは、生涯続ける価値のあるプロジェクトなのだとか。
そんな彼女には、意外な願いがあります。
それは、メモの落とし主に、そのメモを届けること。
残念ながら、今のところは実現していないようです。