我々は皆、陰謀論が好きです。
その陰謀論に欠かせない要素が、真実を隠蔽すること。
社会で生じる大きな事件や出来事について、マスメディアの報道により、その経緯に誰もが一応は納得しているものの、実は限られた少数の者しか知り得ない真実がある。
そしてその真実は、何者かによって意図的に、巧妙に隠蔽されている。
このような状況が認められると、そこから陰謀論が膨張していきます。
亡くなった有名人が、実は今もどこかで生きていて、人目を忍んで生活している、などといったものは、陰謀論の典型でしょう。
〈originally posted on February 2,2022〉
1 増殖するマットレス販売店の謎
ファミリーマートの目と鼻の先にセブンイレブンがあったとしても、何ら不自然ではありません。
ごく普通の光景です。
また、セブンイレブンの近くに別のセブンイレブンがあったとしても、驚く人はまずいないでしょう。
確かに、同じコンビニのチェーン店どうしが密集していることはあまり無いですが、場所的な条件によっては、それもあり得るかもしれません。
では、マットレスの販売店が密集していたらどうか。
これは、2015年ごろからアメリカの複数の州で実際にあった現象です。
アメリカ各地で、その名も「マットレス・ファーム」というマットレス販売店が、やたらと増殖し始めました。
テキサス州ヒューストンでは、マットレス・ファームの隣がマットレス・ファーム、という場所があり、また別の州では、交差点の4つの角すべてに、マットレス・ファームの店舗が陣取っているケースもあるとか。
街の至る所で次々と現れるマットレス・ファーム。
しかも、店内をチラリと覗くと、客はほとんどゼロ。
コンビニは、日常的に利用する人が多いですが、マットレスは、しょっちゅう買い替えるような物ではありません。
では、コンビニほどの需要が無いのに、何故こんなにもマットレス販売店が増え続けるのか。
しかも、既存の店舗から至近距離に新店舗がオープンするのはどういうことなのか。
この謎を解明するため、ある陰謀論が生まれました。
それは、マットレス・ファームの各店舗が、違法なマネーロンダリングの窓口になっているのではないか、というもの。
この陰謀論はネット掲示板を通じて一気に拡散していきました。
マットレス・ファーム側は、この状況を受けて正式にコメントを発表。
それによれば、2000年以降、同社は店舗数拡大のため、ライバル会社を積極的に買収していったのだとか。
その際、相手の会社が所有していた店舗や土地賃借権なども承継したのですが、その場所が、たまたまマットレス・ファームの既存店舗に近かっただけとのこと。
これが、マットレス・ファームの店が雨後の筍のように増え、しかも互いの店舗が不自然なほど近かった理由です。
真相が分かってしまえば呆気ないですが、家の近所に同じマットレス販売店が何軒もあったら、こういった陰謀論が生まれるのも無理は無いでしょう。
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2 悪名高い「ニュー・コーク」の真実
ハンバーガーやフライドチキン、ピザなどと相性抜群の飲み物と言えば、コーラで間違いないでしょう。
コーラには、ご存知のようにコカ・コーラとペプシ・コーラがありますが、コカ・コーラに関しては、とある黒歴史が有名です。
それは、1985年にアメリカで発売された「ニュー・コーク(New Coke)」。
その名の通り、コカ・コーラの新たなスタンダードとなるべき新商品でした。
それまでとは異なるレシピで製造されていたので、風味がかなり異なっていたのが最大の特徴。
そして残念なことに、その味が消費者には大不評だったのです。
売上は急降下。
わずか数ヶ月で、ニュー・コークは店頭から消えていき、以前のコカ・コーラが復活することとなりました。
普通に考えれば、これはコカ・コーラ社の大失敗ということになるでしょう。
しかし、ある陰謀論によると、これは失敗でも何でもありません。
意図的に仕組まれた「失敗」なのです。
1980年代、コカ・コーラ社を含む複数の清涼飲料水メーカーは、(サトウキビ由来の)砂糖を原材料に使うことを止め、コーンシロップに切り替えることを検討し始めました。
これは、コーンシロップの方がコストが低かったため。
しかし、コーンシロップは砂糖に比べると味が微妙に異なります。
よって、いきなり原材料をコーンシロップに変えてしまうと、消費者が味の違いに気づき、売上が落ちる可能性がありました。
そこでコカ・コーラ社は、従来のものと味の大きく異なる「ニュー・コーク」を市場に投入し、消費者に本来のコカ・コーラの味を忘れさせた上で、コーンシロップ版のコカ・コーラに切り替えたというわけ。
旧コカ・コーラの「復活」に喜んだ消費者は、
「やっぱコーラと言えばこの味だな」
「元の味に戻って良かった」
などと安堵しながら飲んでいたのかもしれませんが、そのコーラは、既にコーンシロップ版コーラになっていたのです。
もちろん、これはあくまで陰謀論なので、真実かどうかは分かりませんが、仮に真実だとすれば、かなり大胆な戦略と言えそうです。
ちなみに、コーンシロップには健康面での不安要素があったので、コカ・コーラとペプシ・コーラについては、アメリカ国外での製造に使用されることはあまり無かったとされています。
3 J.K.ローリングなんて存在しない
どこにでもいそうな、ごく普通のシングルマザーが、一冊の本を書き上げたのをきっかけに成功者の道を邁進していき、ついには世界一稼ぐ小説家に……。
誰もが羨むようなサクセスストーリーを体現したのが、言わずと知れたイギリス人作家のJ.K.ローリングさん。
様々なメディアに登場しているので、彼女の顔を知らないという人は少ないでしょう。
しかし、そんなローリングさんについて、実は存在しないのではないかという陰謀論を唱える人がいます。
ノルウェー出身のニーネ・グランフェルドという女性映像作家がその人。
ローリングさんは、10年に渡って7冊の『ハリー・ポッター』シリーズを書き上げ、その全てが世界中で翻訳され、大ヒットしています。
映画化された作品も、これまた大ヒット。
グランフェルド氏の陰謀論によると、無名だった作家が、これだけの偉業を一人で成し遂げたというのは、話が出来すぎているとのこと。
つまり、『ハリー・ポッター』シリーズを書いたのは、一人の作家ではなく、複数の作家というわけ。
では、実際にメディアの取材等を受けているローリングさんは一体誰なのかというと、ハリポタの原作とは無関係な女性が、作家たちの代理人として、「J.K.ローリング」という架空の人物を演じているだけなのだとか。
ちょっと無理のある話ですが、考えようによっては、この陰謀論は、それだけローリングさんが凄い人物であるということを強調しているわけで、グランフェルド氏のツンデレ陰謀論と言えなくもありません。
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4 タイタニック号は沈んでいない
豪華客船タイタニック号の沈没事故を知らない人はいないでしょう。
約110年前に起きたこの悲惨な事故は、映画化されたこともあって、今でも人々の記憶に残っています。
しかし、これだけ大きな歴史的事実でありながら、「タイタニック号は沈没しなかった」とする陰謀論があるのです。
それによれば、実際に沈没したのはタイタニック号ではなく、その姉妹船である「オリンピック号」だったとのこと。
オリンピック号は、1911年の処女航海の後、二回の事故に見舞われ、修復不能なほどのダメージを受けました。
これにより、船を所有するホワイト・スター社は資金繰りに困り、経営者は、保険金を詐取する目的で、船を故意に沈没させることを計画。
その際、安全面において問題のあるオリンピック号を「タイタニック号」として出航させ、一方で、本物のタイタニック号は「オリンピック号」として出航させたのだとか。
にわかには信じがたい説ですが、一応、証拠と呼べるものもあります。
ロビン・ガーディナーという作家がこの陰謀論についての本を書いているのですが、その中で、タイタニック号とオリンピック号の外観を撮影した写真が掲載されているのです。
その写真では、船窓の数が、タイタニック号が14個、オリンピック号が16個であることが見てとれます。
しかし、タイタニック号が処女航海に出たときの写真では、船窓の数は16個。
オリンピック号と同じ数です。
さらに、タイタニック号が出航する数日前に、数人の著名人が乗船をキャンセルしていたのですが、その中には、ホワイト・スター社の経営者本人も含まれていたとか。
これらが真実だとすれば恐ろしい話ですが、しかし、陰謀論は、しょせん陰謀論。
誰かの妄想から生まれた説に、様々な憶測が付け加わって肥大化したものに過ぎません。