今の日本は詐欺だらけです。
従来からあるタイプの特殊詐欺はもちろんのこと、有名人の名を騙った投資詐欺も横行しています。
ネット上に溢れる詐欺広告で自分の名前や写真を無断使用された前澤友作氏が業を煮やして遂に米国Meta社を提訴したことは、ご記憶の方も多いことでしょう。
最近では、AIの技術を駆使して、まるで本人が喋っているかのようなフェイク映像をSNS上に流している輩もいます。
こうなると、詐欺か本物かの区別はほとんど不可能。
そういった詐欺に対抗するヒントになるかどうかは分かりませんが、今回は非常に奇異な詐欺のケースをご紹介します。
〈originally posted on August 20, 2024〉
1 犯人自身が会いに来る「オレオレ詐欺」
「あ、もしもし母さん、俺だけど」
「早速で悪いんだけど、なんやかんやで色々あって、そんなわけだから、すぐに500万円送って」
こんなおバカなオレオレ詐欺が今でも通用するのかは分かりませんが、かつてはこの程度の単純な詐欺でも騙される人がいたわけです。
電話の声だけであれば、自分の息子と間違えてしまうのもまだ理解できます。
では、自分の息子を騙る人物が、目の前に現れたらどうか……。
イギリス人の大富豪であったレディ・ティッチボーン氏には、行方不明になったままの息子がいました。
名前をロジャーといい、南アメリカへの旅行中に忽然と消息を絶ったのです。
しかし、彼女は決して望みを捨てることなく、ロジャーに関する情報を常に探し求めていました。
そして1866年、ロジャーにつながる情報提供者に巨額の報酬を約束するという新聞広告を出したのです。
それから程なくして、一人の男がティッチボーン氏の元を訪ねてきました。
男の名前はアーサー・オートン。
中肉中背だったロジャーに比べ、その倍の体重はあろうかという巨漢です。
顔も体型もロジャーと似ても似つかぬこの男、ティッチボーン氏に対し、自分こそがあなたの息子、ロジャーであると断言しました。
これだけでも驚きですが、この詐欺師の言葉を彼女があっさり信じてしまったというから更に驚き。
それから数年後、ティッチボーン氏が他界すると、真の相続人たちに加え、なんちゃって相続人であるオートンとの間で遺産相続争いが勃発し、法廷闘争に発展。
その裁判の過程で、オートンの嘘がばれました。
ロジャーの体に彫られていたタトゥーがオートンの体に無かったことが決定的となったのです。
その後、オートンは偽証罪で起訴されることとなり、犯罪史上もっとも大胆な「オレオレ詐欺」は幕を閉じました。
それにしても、ティッチボーン氏は、なぜ赤の他人を我が子と間違えてしまったのか。
今となっては、それは誰にも分かりません。
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2 偽のiPhoneで荒稼ぎする方法とは
フリマで中古のスマホを購入したら、全く使い物にならないゴミだった……。
購入した人にとってはまさに悪夢です。
スマホに限らず、パソコンなどをフリマで10万円ほど払って買ったのに、あっという間に故障した、などという話はよく聞きます。
しかし、欠陥のあるスマホで稼ぐような詐欺は、フリマ以外でも起こりうるのです。
2019年、アメリカ在住の二人の学生が、偽のiPhoneを使って詐欺行為を繰り返していました。
騙した相手は、なんとあのアップル社。
彼らは、偽造されたiPhoneを中国から大量に取り寄せ、アップル社のカスタマーサポートに対し、買ったばかりのiPhoneが保証期間内に故障したと偽り、正規の新品と交換させたのです。
そして、交換したiPhoneを販売目的で中国に送り、売上の一部を受け取っていたというわけ。
この手法で、彼らは約1500台の新品iPhoneを手に入れていました。
アップル社に与えた損害は、約90万ドル。
また、彼らがカスタマーサポートに苦情を言う際は偽名を使っていたのですが、それらの偽名の中には「アパッチヘリコプター」というふざけたものもあったとか。
ちなみに、アップル社側は、提出された偽iPhoneの全てについて、偽造されたものであるとは全く気づいていなかったとされています。
世界最先端の技術力を誇るアップルが、極めてアナログな手法の詐欺に騙されまくっていたというのは、なんとも不思議な話です。
3 パリ名物(?)「黄金の指輪」
世界的に有名な観光地であるパリ。
普通の観光客なら、美しい街並みを堪能している最中に、自分が詐欺のターゲットにされるかも、などという考えは湧いてこないかもしれません。
しかし、パリにおいても、観光客を狙った詐欺というのは存在します。
そのパターンの一つが、「黄金の指輪」と呼ばれるもの。
一体どういう詐欺なのか。
まず犯人は、どこからどう見ても観光客丸出しの女性に近づきます。
そして、女性の足元から何かを拾い上げるフリをして、こう話しかけるのです。
「指輪を落としましたよ。これ、あなたのでは?」
ここでその女性が、「確かにそれ、私のだわ」と答えればそれまでなのですが、大抵の人は自分のではないと否定するでしょう。
そこで犯人は、この指輪は女性用だから、あなたに安くで売ってあげますよ、などと言ってくるわけです。
もちろん、その指輪は予め犯人が用意しておいた、ゴミ同然の代物。
このやり取りに巻き込まれた女性の何割かは、何か怪しいと感じつつも、面倒なのでお金を払ってしまうのだとか。
騙されたから払うというよりは、詐欺だと知りつつ、厄介事から逃れたい一心で払うという感じでしょう。
4 オイルショック期に現れた「夢の車」
1974年といえば、オイルショックの真っ只中。
昭和のなつかし映像で、お店のトイレットペーパー目掛けて殺到する客たちの様子を見たことがある人もいることでしょう。
もちろん、オイルショックの煽りを受けていたのは日本だけでなく、アメリカも同じ。
当時のアメリカでは、ガソリンの供給不足が深刻な問題となっていました。
そこへ救世主として現れたのが、ジェラルディン・カーマイケルという一人の女性。
NASAのエンジニアだった夫に先立たれた(らしい)彼女は、夢のような車を開発したと発表したのです。
それは、「デイル」という名の三輪自動車。
その画期的な車の最大の特徴は、ガソリンがほとんど不要だという点。
しかも、速度は十分で、耐久性も抜群。
EV車の影も形も存在しない時代にどうやればそんなことが可能だったのかは聞くだけ野暮というもの。
夫がNASAのエンジニアであれば、それくらいは朝飯前なのでしょう。
ちなみに、価格は現在の貨幣価値で9500ドル(約150万円)。
嘘のようなこの車の予約販売が始まると、これまた嘘のように大勢の人たちがデイルを購入しました。
驚くべきは、この段階で、まだ誰もデイルが走行しているところを一瞬たりとも見ていないということ。
実在するかどうかもわからない車が、バカ売れしていたというわけです。
その売上金は、なんと300万ドル。
カーマイケルは、その大金を持ってトンズラしました。
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5 Amazonに土を送り続けて大儲け
Amazonの返品ポリシーは、他の通販サイトに比べると、やや緩いといえるかも知れません。
未開封であれば、大抵の場合、返品に応じてくれます。
それを悪用したのが、ジェイムズ・クワーテン(当時22歳)という男。
彼は、高額の電子機器などをAmazonで購入し、商品が自宅に届くと、箱の中身を「土」と入れ替えます。
そして、Amazonに返品を申込み、届いた時と同じように梱包して、「土」の入った段ボール箱を返却。
にわかには信じがたい話ですが、これに対してAmazonはきっちり返金したのです。
彼はこの方法を何度も繰り返しましたが、電子機器は手元に置いたまま、なおかつ支払った代金は確実に戻ってきたとか。
これにより、クワーテンはAmazonに合計37万ドルを返金させることに成功したのです。
しかも彼は、入手した電子機器をその都度売りさばいていましたから、実際に得た金額はもっと多かったはず。
ところで、何故Amazonは、ただの土を送りつけられたにも関わらず返金したのか。
実はAmazonでは、発送した商品と、返却された商品の「重さ」が同じであれば、箱の中身をいちいち確認することなく、同じ商品が正しく返却されたものと判断していたのです。
多忙を極めるAmazonの倉庫スタッフに、返却された段ボール箱の中身を全て調べるなどといった余裕はありません。
この事実を知っていたクワーテンは、自分が購入した商品と全く同じ重さの土を箱に入れて送り返していました。
クワーテンの頭が良いのか、それともAmazonがアレなのか。
いずれにせよ、後に返品ポリシーを変更した際、ようやくAmazonは詐欺に気づくことに。
箱の中身を確認されたら即バレであったことを考えると、この男の度胸には恐れ入ります。
6 余談
恥ずかしい話ですが、自分は絶対に詐欺には引っかからないと思っていた僕も、先日、あと少しで詐欺に遭いそうになりました。
X(旧ツイッター)上で、「フォロー&リポストで高性能PCをプレゼント!」という投稿があったので、何気なくフォロー&リポストしたところ、後日、次のようなダイレクトメッセージが。
「1次予選通過しました!あなたが最後の20名に選ばれています!」
そしてここから先の抽選に参加するにはLINEの友達登録が必要とのこと。
一瞬、「おお!あとちょっとで当選じゃないか!」とテンションが上がったのですが、しかしよく考えるとどうもおかしい。
単なる懸賞なのに「1次予選」て何なんだ……。
応募者の中から一発で当選者を決めるのが普通でしょ。
怪しいと思って当該アカウント名をグーグルで検索してみると、詐欺の警告が発せられている悪質アカウントでした。
もう少しで個人情報を抜き取られるところでしたが、ただ、僕が詐欺に気づけたのは、恐らくは僕がLINEをやっていない「変人」だから。
「LINEで友達登録」というのを見た瞬間、「LINEやってないんだよな~」と思って放置していたのです。
もしLINEをやっていたら、さっさと友達登録して、個人情報を送ってしまっていたことでしょう。
身も蓋もないことを言いますと、ネット上の詐欺の大半は、LINEと縁を切ることで巻き込まれずに済みます。
詐欺の犯人は、100%LINEを通じてカモを餌食にしようとしますから。
もちろん、LINEを止める代償として周りから「変人」扱いされますが……。
しかし、詐欺には絶対引っかからないという自信が無い人は、僕のように「変人」デビューするのもいいかもしれません。
この手の投稿はXに頻繁に登場します。
皆さんもお気をつけください。