「最も危険なタクシードライバー選手権」があれば、ぶっちぎりで優勝するのは、おそらくトラヴィス・ビックルでしょう。
と言っても、これは、映画に出てくる架空の人物。
では、現実のタクシードライバーならどうかと言えば、トラヴィスほどではなくても、十分危険なドライバーはいます。
今回は、日本ではまず見られない、危険なタクシードライバーの話です。
〈originally posted on October 3,2020〉
1 空き巣を企むタクシードライバー
2019年、海外の投稿サイト「Reddit」にて、ある男性の投稿が、物議を醸しました。
彼は、仕事で空港へ向かう際、必ずタクシーを予約します。
ただ、その予約を行うとき、自宅の住所ではなく、4軒離れた所に住むご近所さんの住所をタクシー会社に伝えるのです。
そして、ご近所さんの家の前で待機し、やって来たタクシーに乗り込むと、空港へ。
なぜ彼は、わざわざこんな面倒なことをするのか。
その理由は、「空き巣」対策。
彼は、自分を乗せたタクシーの運転手が、後で自宅に侵入し、盗みを働くのではないかと疑っているのです。
空港でタクシーを降りる客は、旅行や出張である場合が多いですから、しばらくは家を空けると言っているようなもの。
よって、タクシー運転手に自宅の住所を知られることに不安感を抱いているのです。
さすがに考えすぎではないか、と思いたくなりますが、実はそうでもありません。
彼の体験談によれば、実際に、空港までタクシーを利用したその日に、タクシー会社に伝えた住所のご近所さんが、空き巣の被害に遭ったことがあるのだとか。
しかも、警察の話では、犯人はタクシードライバーである可能性が高いとのこと。
こういうことがあってから、彼はタクシードライバーに対する不信感を一層募らせるようになりました(そのご近所さんは災難ですが……)。
それにしても、彼の行いは、果たして道徳的に許されるのか否か。
それを確かめるべく、彼はこの話をRedditに書き込んだというわけです。
で、ネット上の反応はと言いますと、やはり批判的な意見が目立ちました。
ある人は、近所の住所を伝えるくらいなら、自宅から離れた交差点とかにタクシーを呼べばいいのではないか、とコメント。
確かにそのとおり、という気がします。
しかし、元タクシードライバーだという人からは、意外なコメントが。
その人物の話によると、目的地が空港である客が、自宅から2~3軒離れた住所にタクシーを呼ぶのは、決して珍しいことではないのだそうです。
日本のタクシードライバーは、酔っ払った客から暴行を受けるなど、どちらかと言うと被害者になることが多いという印象がありますが、海外の、特に治安のあまり良くない国では、こういう対策も必要なのでしょう。
【スポンサーリンク】
2 客に不吉な言葉を吐くタクシードライバー
客の家に空き巣に入るドライバーも困りものですが、客に不吉な台詞を吐くドライバーも不気味です。
かつて、イギリス南部のサウサンプトンで、24歳のタクシードライバーの男が、乗客に暴言を吐いてクビになったことがあります。
その男は、高齢者の客を乗せると、
「アンタ、今夜死ぬよ……」
などと不吉なことを言い放っていたとか。
また、喋ってばかりの客に対しては、「黙れ!」と怒鳴ったり、時には「降りろ!」と言って強制的に降ろしたりもしていました。
彼の異常な行為は、全てドライブレコーダーに録画されており、それが動かぬ証拠となって、彼はクビになったのです。
それにしても、「今夜死ぬよ……」というのは、タクシードライバーから言われる台詞としては余りにも怖すぎます。
クビになったのは当然でしょう。
3 恐怖の暴走タクシードライバー
客に対して「死ぬよ……」と言うだけなら気味が悪いだけですが、場合によっては客を殺しにかかってくるタクシードライバーもいます。
2018年5月26日の夜、イギリスのファルマスで、ブリストル大学に通うソフィー・ナーガッパという23歳の学生が、知人二人と一緒に、タクシー乗り場に向かったときのこと。
車列の中から、彼女たちは一台のタクシーに乗ったのですが、その黒い車体のどこにも、タクシー会社の名前は表示されていませんでした。
ちょっと怪しいな、と思いつつ、ソフィーたちは目的地をドライバーに告げます。
しかしこの時、後に地獄を味わう羽目になるとは、彼女は想像もしていなかったことでしょう。
車を発進させたそのドライバーは、「クレイジータクシー」よろしく、イカれたハンドルさばきで暴走。
これだけでも怖いですが、本当の恐怖はこれから。
ソフィーの自宅前に着くと、ドライバーの男は、家に上がらせてくれ、と強引に要求。
当然、彼女はそれを拒絶して、すぐに家の中へ。
その直後、部屋の窓から外の様子を伺うと、まだ男が家の周りをうろついているのが視界に入ります。
そしてしばらくすると、何かが燃えているような臭いが……。
何とその男、ドアマットに火を放っていたのです。
ソフィーは1階にいたので、すぐ炎に気づいて鎮火しましたが、2階にいたらもっと危険な状態になっていた可能性大。
その狂ったドライバーは、恐らくは、正規のタクシーの車列に紛れつつ、標的にすべき女性客を狙って、タクシードライバーを装っていたと考えられます。
その後、ソフィーは、SNSを通じて自分の恐怖体験を公開し、正規のタクシー会社のタクシー以外には絶対に乗らないように訴えかけました。
彼女にも不注意だった面はありますが、こんな危険人物が、タクシーの列に紛れているとは、普通は思わないでしょう。