映画やコミックに登場する架空のキャラクターは、架空の存在だからといって、現実社会のドロドロした人間関係や、陰湿な争いなどと無関係ではありません。
映画においては、それらのキャラクターを演じる俳優がいるわけですから、キャスティングの時点で既に、関係者どうしの軋轢があれば、それが影響します。
特に、ハリウッド俳優の場合、ギャラの件で揉めて、一方的にキャストから外される、という憂き目に遭った役者もいます。
時には、それが原因で裁判沙汰に発展することも。
キャラクター自体は多くの人に愛されているのに、それにまつわる現実社会のエピソードはちょっとダーク。
今回は、そんな話をご紹介します。
〈originally posted on June 27,2020〉
1 『ハリー・ポッター』シリーズのアルバス・ダンブルドア
アルバス・ダンブルドアは、『ハリー・ポッター』シリーズに登場する魔法使い。
主人公が通う魔法魔術学校において、校長を務めています。
映画の第1作と第2作では、リチャード・ハリスというアイルランド出身の俳優がこのキャラクターを演じていたのですが、残念ながら、2002年に第2作が完成した後、72歳でこの世を去りました。
映画の3作目の制作が決定したとき、原作者のJ.K.ローリング氏とワーナー・ブラザーズは、ダンブルドア役の後任を誰にするかでかなり頭を悩ませたとか。
その結果、最終候補に残ったのが、マイケル・ガンボンとイアン・マッケランです。
イアン・マッケランと言えば、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズにおいて、大魔法使いであるガンダルフを演じた名優。
しかし、マッケランは、ダンブルドア役のオファーをアッサリ断りました。
既に世界中で不動の人気を確立していた『ハリー・ポッター』への出演を断った理由とは何なのか。
ガンダルフ役に続いて再び魔法使いの役を演じるのに嫌気が差したのかというと、そうではありません。
彼が断った原因は、リチャード・ハリスその人です。
ハリスは生前、あるインタビューで、マッケラン(を含む役者数名)について次のように語っていました。
「彼らは確かな技術を持ってはいるが、情熱が感じられない」
「言わば、銀行の支店長みたいなものだ」
「中身の乏しい人生を送っているが故に、その人間性も薄っぺらなのさ」
役者に対して、「情熱が感じられない」などと評するのは、ケンカを売っているのも同然でしょう。
マッケランは、ダンブルドア役の話が来たとき、自分のことを愚弄したハリスの後を引き継ぐことになるのが我慢ならず、オファーを断ったのです。
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2 『スヌーピー』で最も嫌われたキャラクター
スヌーピーは、チャールズ・M・シュルツによって描かれたコミック『ピーナッツ』に登場する犬の名ですが、この作品は、日本では『ピーナッツ』というタイトルよりも、『スヌーピー』という名で親しまれています。
個性的なキャラクターが多く登場し、関連グッズは今もなお世界中で大人気。
そんな『スヌーピー』のキャラクターの中に、シャーロット・ブラウンという女の子がいるのをご存知でしょうか。
1954年の連載で、ごく短期間だけ登場した、「知る人ぞ知る」的なキャラクターです。
やたらと声が大きく、自由奔放な性格で、主人公のチャーリー・ブラウンとは真逆の雰囲気。
一言で言えば、かなりウザい存在です。
それだけに、このキャラクターは読者の評判が悪く、二度とシャーロットを出さないでくれ、という手紙が何通も出版社に届いたとか。
そんな手紙を書いた読者の一人に、エリザベス・スウェイムという女性がいます。
そしてこの女性、なんと、作者のシュルツ本人から返事を受け取りました。
その返信の中で、シュルツは、今後、シャーロットを作品から外す意向を明らかにしていたのです。
しかしながら、最後には次のような一文が。
「でも、これだけは覚えておいてください」
「あなたの良心のせいで、罪の無い子供が死ぬのだということを」
「あなたはその責任が持てますか」
トドメは、手紙の最後に描かれたイラスト。
シャーロットの頭に、斧がザックリ刺さっている絵が添えてありました。
スヌーピーのような愛らしいキャラクターを生み出した人にしては、なかなかダークなやり方。
これは筆者の想像ですが、気に入らないキャラクターだから排除せよ、という読者のわがままに、シュルツは辟易していたのかもしれません。
他人をイライラさせるような灰汁の強い子供がいたとしても、その個性を周りが受け入れる社会こそが理想だと考えていたのではないでしょうか。
少なくとも、『スヌーピー』に登場するキャラクター達を見ていると、そう感じます。
3 R2D2 vs C3PO
映画『スター・ウォーズ』には、人間以外のキャラクターが多数登場しますが、その中でも特に有名なのが、R2D2とC3POでしょう。
小柄でマスコット的なR2D2と、全身が金色メタリックの長身ロボットC3POは、映画の中では友人どうしという設定で、常に行動を共にしています。
そんな仲良しキャラである二人ですが、いわゆる「中の人」については、むしろ逆の関係だったとか。
R2D2役を演じていたケニー・ベイカーと、C3PO役のアンソニー・ダニエルズは、相当に仲が悪かったとされています。
撮影中、彼らはほとんど口をきくことが無く、その上、互いに相手のことを口汚く罵っていました。
特に、ベイカーは、スター・ウォーズ関連のイベントがあっても、ダニエルズが出演する場合は、絶対に参加しなかったとか。
ベイカーの話によると、撮影のある日は、二人ともずっとロボットのメタル・スーツに身を包まれているので、体力的・精神的にかなりキツく、そのことが、二人の仲が悪かった一因であるとのことです。
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4 バットマン vs 日本人
バットマンは、何故ゴッサム・シティの悪と戦う道を選んだのか。
そのきっかけになったのは、幼少期、目の前で両親が殺されて……。
このように認識している人も多いことでしょう。
1989年に公開された、ティム・バートン監督の『バットマン』以降、バットマンを正義に目覚めさせたのは、このときのトラウマだということになっています。
しかし、時代を遡ると、今のイメージとはかなり異なるバットマンも存在するのです。
そのバットマンが登場するのが、1943年にアメリカで公開された、全15章からなるシリーズ物の『バットマン』。
低予算で作られた白黒映画で、コスチュームやセットなどは、非常にショボかったとか。
ただ、予算が低くても、バットマンはバットマンなのだから、やはり、子供の頃の悲惨な体験が元でヒーローになるという点は変わらないはず。
そう考えてしまいそうですが、実は違います。
この映画に出てくるバットマンは、政府から、ある重要な任務を負わされ、ヒーローをやっているのです。
その「任務」とは、世界に害悪をもたらす日本人を叩きのめすこと。
バットマンがヒーローとして目覚めるのに、トラウマ体験など必要ありません。
そこに日本人がいるからぶっ倒す。
それだけです。
作中には、日本人の外見・肌の色などを侮蔑する、差別的表現がてんこ盛り。
ちなみに、第13章のタイトルは、その名も「日本人の罠」。
当時のアメリカでは、その時代背景から、日本人を攻撃・嘲笑の対象にする作品は珍しくなかったのですが、あのバットマンでさえ、かつては日本人をボコボコにしていたのはちょっとショックです。