恐るべき金ドブの世界へようこそ。
これまでの人生で、一銭たりとも無駄な金は使っていないと断言できる人はまずいないでしょう。
後から振り返ってみて、あれは無駄だったと反省することは誰にでもあります。
その意味で我々は、無駄遣いを完全に避けることなど出来ないと言えそうです。
そして非常に残念なことに、これは政府が国民の税金を使う場合にも当てはまります。
〈originally posted on January 1,2018〉
1 恐竜の頭蓋骨(27万6千ドル)
『ナショナル・トレジャー』などの映画でお馴染みのハリウッドスターであるニコラス・ケイジは、2007年にオークションで恐竜の頭蓋骨を落札しました。
落札額は、27万6千ドル(約3100万円)。
ちなみに、そのオークションで彼と同じ物を狙っていたのは、あのレオナルド・ディカプリオ。
これだけの大金を出すからには、よほどその頭蓋骨が欲しかったのでしょうが、その数年後、ケイジにとって残念なニュースが届きます。
その恐竜の頭蓋骨は、モンゴルからアメリカに、違法に密輸されたものだったのです。
この事実を知ったケイジは、2015年に、頭蓋骨をモンゴルへ返還することに同意しました。
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2 フェイスブックの「いいね!」(63万ドル)
ツイッターやフェイスブックにおける高評価から、YouTubeのチャンネル登録者まで、今の時代は金さえあればいくらでも、そして誰でもそれらを買うことができます。
「誰でも」というのは、必ずしも一般人とは限りません。
2011年から2013年にかけて、米国国務省は、ソーシャルメディアでの自らの認知度を上げるため、国務省のフェイスブックの「いいね!」を買いました。
63万ドル(約7千万円)の税金を投入して。
これにより、「いいね!」が作為的にクリックされた回数は何と180万回以上。
しかしながら、実際にこのフェイスブックのページを訪れて高評価をしたり、コメントを残したりしたユーザーの数は、その2%ほどだったとか……。
3 結論が分かりきっている研究(3百万ドル)
2014年、全米科学財団は、ある研究のために3百万ドルを費やしました。
その研究とは、怖い雰囲気の音楽を聴きながらサメの映像をみると、サメの見方が否定的になるのかどうか、というもの。
『ジョーズ』という映画を観たことのある人なら、サメが人間を襲うときに流れるあの有名な音楽は忘れられないでしょう。
要するにこの研究のキモは、映画『ジョーズ』のようにいかにも恐怖感を煽る曲をBGMにした場合と、逆に底抜けに明るい曲をBGMにした場合とで、サメの映像を観るときの印象が変わるのか、ということ。
気になるその研究結果によると、人間は、怖いBGMを聴きながらサメを観ると、サメを否定的に(即ち、怖い存在として)捉える傾向があるそうです。
・・・・・・。
3百万ドルもかけなくても、誰もが経験的に知っていることのような気が……。
4 スターゲイト計画(2千万ドル)
1970年代、旧ソ連が超能力を真面目に研究しているという情報を入手したアメリカは、ソ連に遅れを取るまいと、強力な超能力者を見つけ出して彼らを利用するための「スターゲイト計画」を1978年に立ち上げました。
この計画に費やされた税金は、2千万ドル。
超能力者を見つけ出すためのテストの中には、辞書からランダムに選択されたいくつかの単語を、何のヒントも無しに当てる、といったものも。
この計画で最も期待された能力は、情報戦を制するのに有益な「千里眼」の力です。
しかし、SF小説に出てくるような都合のいいサイキック・パワーを本当に持つ人物は遂に見つからず。
スターゲイト計画は、1995年に中止となりました。
5 銃の買取り(???ドル)
日本ではありえない話ですが、アメリカでは複数の都市で、公的機関による銃の買取り制度があります。
買取り金額は、50ドル~250ドル。
銃の所持率が下がれば、銃犯罪の減少も期待できるわけで、この制度が目指すところは決して間違ってはいないでしょう。
しかし皮肉なことに、この制度は逆に銃の所持率増加につながっているのではないか、という報告があります。
銃を売って得たお金で、新たな銃を購入する人が後を絶たないからです。
そうなると、これは相当な税金の無駄遣いであると言わざるをえません。
6 誰も使わない作戦本部(3400万ドル)
アフガニスタン南部ヘルマンド州の基地内にある米軍作戦本部の建物は、2010年に着工し、3年後に完成しました。
最先端の設備を詰め込んだ2階建てのビルで、総工費は3400万ドル。
しかし、完成時にはすでに米軍がアフガニスタンから撤退していたため、兵士の誰一人としてこの施設を使っていません。
おまけに、アフガニスタン政府がこの施設を利用しようにも、維持費がかかり過ぎるので非現実的。
早い話、3400万ドルはドブに消えたのです。
ちなみに、この作戦本部の建設には、かなり早い段階で、内部から反対の声が強かったそうです。
7 クラッシュしまくるF1ドライバー(2億2500万ドル)
ベネズエラは豊富な原油埋蔵量を誇ることで知られていますが、原油価格の下落や過度のインフレにより、現在、同国は重度の経済的危機に陥っています。
市民が苦しい生活を強いられている状況にも関わらず、政府はたった一人のF1ドライバーのために、莫大な税金を5年間もつぎ込んでいました。
その金額は、年間4500万ドルです。
そのラッキーな(?)F1ドライバーは、パスタ・マルドナドという男。
彼がレースで優勝すれば、国のイメージ向上につながると考えられていたようです。
しかし、残念ながら、マルドナドがこれまでに優勝したのはたったの1回のみ。
逆に、クラッシュした回数は29回。
ベネズエラは、明らかに税金の使い方を間違えています。
8 アフリカでの性教育プロジェクト(13億ドル)
日本では少子化に歯止めがかかりませんが、一方、アフリカでは人口増加に歯止めがかかりません。
数十年後には、地球の人口の半分がアフリカ人になるという予測もあります。
さらに、人口爆発の問題に加え、アフリカではエイズの蔓延が深刻化しています。
そして、この問題を解決しようと、かつてアメリカは13億ドルもの巨費を投じて、あるプロジェクトを立ち上げました。
そのプロジェクトの中身は、一言で言ってしまえば、性教育。
成人に達するまで性交渉を持たないようにするための教育をアフリカで行ったのです。
その後、このプロジェクトがどれくらいの成果をもたらしたのかを、10年にわたって調べたところ……。
ほぼ効果ゼロ。
プロジェクトの前後で、状況は何も変わっていませんでした。
9 大量の古すぎるパソコン(800億ドル)
総合的に見て、テクノロジーの分野で世界をリードしているのは、やはりアメリカであるという印象を持っている人は多いでしょう。
しかし意外なことに、アメリカ政府が使っているコンピューターの多くは、ありえないほどに古いのです。
古いだけならまだしも、それらはセキュリティの面でも大いに不安があります。
そして、今となっては中古ショップでも手に入らないようなパソコンのメンテナンスのために、800億ドルもの金が使われているのです。
もちろん、これらの古すぎるシステムを新しいものに替える計画はありますが、それが完了するまでには、下手をすると数十年かかると言われています。
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10 (悪)夢の戦闘機F-35(1兆5千億ドル)
単体の軍事兵器に投資された金額としては歴史上最高額を誇るのが、米軍のF-35戦闘機です。
クリントン政権時代の1996年から研究・開発が始まったこのステルス戦闘機は、場所を問わず離着陸が可能で、多彩な武器を搭載できるという特徴を持っています。
ところが、開発を進めるうちに技術的な問題が噴出。
ウリの一つである離着陸性能に不安要素が見つかり、戦闘能力の信頼性にも疑問が生じました。
さらに情けないことに、機体が意外とカミナリに弱いという欠点まで抱えていたのです。
2017年の米国国防総省の文書によれば、F-35は今もなお276個もの問題点が未解決のままだとか。
専門家の間では、この戦闘機が完成の日の目をみることは無いのではないかという声もあります。
超問題児とも言えるこのF-35に費やされた金額は、1兆5千億ドル。
果たして完成する日は来るのでしょうか……。