最近、物価上昇が深刻なことになっています。
特に、従来は手頃な価格で買えた、いわば「庶民の味方」というべき物について値上げされる例が増えてきました。
こんな状況ですから、なるべく無駄遣いはしたくない考える人も多いことでしょう。
そこで今回は、少しでも余計な出費を避けるために、企業が消費者に金を使わせるトリックの数々をご紹介します。
〈originally posted on March 20, 2023〉
1 「お一人様一点限り!」

まずは、客に金を使わせる典型的な手段からご紹介しましょう。
企業にとって最も簡単に実践できるのが、商品の「希少感を煽る」というものです。
例えば、陳列された商品の前に「お一人様一点限り!」などといった張り紙がされているのを見たことのある人は多いはず。
確かに、本当に品薄という場合もありますが、十分な在庫があってもこの張り紙をしておくことで、希少感を煽ることが出来ます。
その結果、客は「今買わないと(この価格では)もう買えないかも」という印象を抱き、購入を決断してしまうのです。
同様の効果をもたらすものに「在庫限り!」というものもあります。
これらの表示を見たら、今買うべきかどうかをよく考えて購入するようにしましょう。
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2 「放送終了後、30分間のみ!」

テレビの通販番組でよくある、というか、もはやデフォルトと言っても過言ではないのが、「放送終了後、30分間のみお電話を受け付けます!」というもの。
考えてみれば妙な話です。
何でわざわざタイムリミットを設ける必要があるのか。
これは、申込みに時間制限を設けることで、本当に必要な物かどうかをじっくり考える時間を与えず、購入に踏み切らせるのが狙い。
この仕組みを利用者ごとに自動化させているのがAmazonです。
シリーズになっている本を一冊購入すると、時々、「あなたへの特別なオファー」という形で、同じシリーズの本をセール価格で勧めてきます。
ただし、このセールはすぐに終わってしまうので、じっくり考えている暇などありません。
いわば、個人を狙い撃ちにしたタイムセールです。
「私だけの特別セールだと?早く買わなきゃ!」と思ってしまったら、まさにAmazonの思う壺、ということになります。
3 メニューの配置

レストランに入店した際、まず最初に手を取ることになるメニュー。
ある研究によると、ほとんどの人がメニューを開いて最初に見るのは、意外なことに最上段ではありません。
メニューの中央辺りなのだそうです。
次に右上隅、左上隅へと視点が移動するのだとか。
これは、「黄金のトライアングル」とも呼ばれています。
このことを利用すれば、メニューの中央、右上、左上といった場所に、利益率の最も高い商品を掲載しておけば、売上も上がるというわけです。
4 「おとり価格」のワナ

あるドーナツ屋のメニューに、お得なドーナツセットがあるとしましょう。
Aセットはドーナツが3つ入って400円
Bセットはドーナツが6つ入って700円。
Cセットはドーナツが6つとコーヒー付きで800円。
人間は、選択肢が多くなると、分かりやすい基準を設ける傾向があります。
例えば、より「お得感」があるのはどれか、など。
AセットとBセットを比較すると、価格的にはBセットの方がお得です。
さらに、BセットとCセットを比較すると、たった100円の違いでコーヒーが付くのなら、Cセットが断然お得だと考えます。
結局、この3つの中では、Cセットを買う人が最も多くなると予想できます。
この場合、Bセットは、客の意識をCセットに向かわせるための「おとり」。
価格的にCセットとあまり差の無い選択肢を作ることで、Cをセットのお得感をより際立たせているのです。
これは、今から10年以上前に、マサチューセッツ工科大学のダン・アリエリー教授の実験によって明らかにされたもの。
このテクニックを上手く利用すれば、企業側の望むとおりに、客に商品を買わせることができます。
5 SNSの「いいね!」

人口あたりのツイッター使用率が世界で最も高いのは、日本なのだそうです。
ツイッターを始めとするSNSは広告で収入を得ていますから、より多くの人が、より多くの時間、SNSで時間を費やしてくれる方がいいわけです。
そのための仕掛けの一つが、「いいね」ボタン。
SNSに「いいね」があるのと無いのとでは、人々のSNSに対する注目度が全然違ってきます。
「いいね」が無ければ、「バズる」という現象も無いでしょう。
そうなると当然、バズりたい一心で投稿する人もいなくなります。
SNS自体が盛り上がりに欠けるメディアとなり、広告収入も激減。
逆に、「いいね」やリツイート、ブックマーク機能など、ユーザー側が出来ることが増えれば、SNSを使う時間も長くなり、広告効果も上がるというわけです。
6 椅子の硬さ

飲食店は、客の回転率という点で、大きく2つのタイプに分けられます。
一つは、長い時間、客に店内にいてもらって、お酒や料理などを継続して注文してもらう店。
雰囲気のある大人向けのレストランなどが該当します。
もう一つは、客には食べるものを食べたらさっさと店から出ていってもらいたい店。
これは、ファストフード店などが好例。
そして、前者のタイプの店では、なるべく座り心地の良い椅子を用意し、後者では、座り心地のイマイチな硬い椅子を用意するのです。
椅子が硬ければ、長時間居座る気になれず、食事が終わった客は早めに店から出ることでしょう。
まあ、必ずしもそうなるとは言い切れませんが、店側としては、客の回転率を操作するために、このような方法を取ることがあるのです。
7 「30日間は返品可能」

ショップでは、返品に関するポリシーを定めているのが普通です。
そして、ショップによってこの返品ポリシーはかなり異なります。
原則的に返品は不可、という厳しいところもあれば、購入から30日間は返品OK、といった寛大なところも。
では、店の売上に貢献するのはどちらのパターンなのか。
意外なことに、返品ポリシーが緩い店ほど儲かるのだそうです。
返品しやすい店の方が、返品する客が多く、その結果売上が落ちると予想してしまいそうですが、実際はむしろ逆。
返品しやすいショップで購入した客の方が、そうでないショップよりも、返品する客は少ないのだとか。
返品ポリシーが緩いということは、急いで返品を考えなくてもいいので、とりあえず買った商品を使い続けて、結局は返品しないままに終わる、という流れが多いのがその理由です。
あるリサーチでは、購入者の9割以上の人が、返品ポリシーを考慮して購入を決めていたそうですから、返品の条件をあまりに厳しくするのは、賢明とは言えないかもしれません。
8 イエローとレッドの効果

ファストフード店のロゴには、ある共通点があることにお気づきでしょうか。
マクドナルド、ロッテリア、KFC、バーガーキングなどなど。
これらのお店のロゴには、赤色もしくは黄色が使われています。
これはもちろん、偶然ではありません。
赤色は見た人の食欲をそそり、黄色は心地よさや幸福感を与える色なのだそうです。
ちょうど、ケチャップとマスタードの色に相当するところから、飲食店の業界では「ケチャップ&マスタード理論」と呼ばれることもあるとか。
考えてみれば、青色や紫色とかだと、全然食欲が沸きませんね。
9 ノスタルジー効果

ファストフード店大手のバーガーキングは、2021年、20年間続いたロゴを変更しました。
と言っても、全く新しいロゴにしたのではなく、1969年から1990年ごろまで使用されていた昔のロゴに戻したのです。
なぜ昔のものに変えてしまったのか。
その理由の一つは、ノスタルジー効果を狙ったからだとされています。
我々は、ノスタルジーに浸るとポジティブな気分になることが、多くの研究によって示されています。
現代社会について考えるとき、人は、過酷な要素ばかりを連想しがちです。
一方、昔を思い起こすときは、良い面が優先的に出てきます。
こういった効果は、企業の販売戦略として度々取り入れられているのです。
飲食店に限らず、商品の復刻版を発売する企業が多いのも、同じ理由だと考えられます。
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10 「$」の記号

最後にご紹介するのは、アメリカの飲食店や小売店などでよく見られる、極めて単純な手法。
それは、商品の価格表示に「$」の記号を使わないこと。
たったこれだけのことで、売上げアップにつながる効果があるのだとか。
人間は「$」の記号を見ると、どうしてもお金のことを意識してしまい、使いすぎに注意しようとします。
しかし、「$」の無い数字だけだと、お金のことにあまり意識が向かなくなり、結果的に商品購入に対する抵抗が弱まるのです。
日本の場合は「¥」の記号を使わない方がいいということになります。
ただし、上記の理論がそのまま日本にも当てはまるとは限りませんが……。